金沢区の大道小学校で掘られた井戸とは?
ココがキニナル!
金沢区の大道小学校で生徒や近隣の方々で学校の敷地内に井戸を掘っていたと思います。作業内容や状況等をレポートをして頂けませんか?(文太さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
「ヨコハマ市民まち普請事業」の支援をうけ、児童や地域が共働で「ふるさと大道村」を整備し授業に活用、近隣住民の憩いの場にもなっています。
ライター:ほしば あずみ
小学校の一角に村が出現
児童や近隣住人が小学校の敷地に井戸を掘っているという。いったいそこにはどのような経緯があり、どんな井戸を掘っているのか、さっそく横浜市立大道(だいどう)小学校(金沢区大道2丁目)に問い合わせてみた。
「ふるさと大道村」というプロジェクトの一つとして確かに児童と地域が共働で井戸を掘ったとの事で、井戸そのものは平成23(2011)年に完成しているとのこと。
プロジェクトの主体となっているボランティア団体「ふるさと大道の風景をつくる会」事務局の方々に、実際に現地で井戸を見せてもらいつつ話を伺うことになった。
金沢区にある横浜市立大道小学校
井戸があるのは校舎の裏側。だがそこにあったのは井戸だけではなかった。
小さな田畑や蓮池もあり
傍らに水車小屋が建つ池もある
ここは「ふるさと大道村」という、大道地域の原風景を再現した空間なのだという。
大道小学校の敷地内には創立50周年記念事業で建てられたコミュニティハウスがあり、地域住民が教養活動等で利用できる。日ごろから校門も開放されており、児童たちだけでなく地域の憩いの場として利用されている。
この池も50周年記念事業で作られたもの。「トンボ池」と呼ばれており、その名のとおり幾種類ものトンボが飛び交い、メダカも泳いでいた。
そしてこの池が井戸を掘るきっかけとなったのだそうだ。
はじまりはトンボ池のピンチ
「トンボ池は長らく豊かな湧水に恵まれていたのですが数年前、裏山の擁壁工事等で環境が変わり池が枯れはじめたのです。
そこで平成21年度の6年生たちが総合学習の一環でトンボ池を救おうと、井戸を掘ってその水を池へ送る事を提案。地域に昔から伝わる工法で井戸を掘り、周辺も昔の大道の風景を再現して学習に役立てられないかと考えたのです」
きっかけは学校の総合学習だったが、その活動は学校だけにとどまらず、日ごろから校内のコミュニティハウスを利用している地域住民たちも協力。
双方がアイデアを出し合い、横浜市都市整備局の「ヨコハマ市民まち普請事業」へプロジェクトとして応募した。
まちづくりの活動(ソフト面)ではなく整備(ハード面)の助成を行うこの事業は、まちづくりのアイデアを公開コンテスト形式で提案し助成の可否が決定される。
まち普請の整備事例集に掲載されている「ふるさと大道村」
「公開コンテストでは子どもたち自らがストーリーを構成した劇でトンボ池の危機を訴えました。審査員も“最後まで見るまでもなく伝わった、充分わかった”とその熱意を受け取ってくれたんですよ」
児童たちが制作した「ふるさと大道村」の看板
これが完成した井戸! と思ったら…
「井戸は2つあるんです。この井戸はホリテッカンが食われて取り出せなくなってしまって。奥に新たに掘りなおしたんですよ」
と「ふるさと大道の風景をつくる会」事務局長の岡さん。
ホリテッカンが食われた?
「上総堀り(かずさぼり)」という江戸時代末期に上総国(今の千葉県)から伝えられた井戸の掘削工法は、竹のしなる力を利用し人力のみで掘る事ができたため、近代的なボーリング技術が普及するまでは日本各地で用いられていた。
この伝統工法で平成22(2010)年春から堀りすすめていたところ、8月にはいって掘削する先端部分の「掘鉄管」が硬い岩盤にひっかかり回収できなくなってしまったのだという。その深さ約14メートル。この井戸は、失敗から多くのことを学んだ「学びの井戸」と呼び、新たに井戸を掘りなおしたそうだ。
その年の秋に、新たな井戸は、使用するのに十分な深さ48mに到達。「希望の井戸」と名付けられた。
井戸の他、池や水車小屋、東屋などの整備も並行して進められ平成23年2月、「ふるさと大道村」は完成式を迎えたという。
完成した「希望の井戸」を前に「ふるさと大道の風景をつくる会」のみなさん
左から会長の相川さん、事務局長の岡さん、小林さん、蒲谷さん。ご自身が大道小学校の出身だったり、子どもや孫が通った、通っているといった近隣の方々。本業で多忙な傍ら学校に足を運び活動をしている。
枯渇の危機に瀕したトンボ池が子どもたちの熱意と大人たちの協力で救われた