女性専用車両は何のため？

先日アラブの国を旅したときのこと。ローカルバスの車内中央にバーがあり、前後に区切られていることに気が付いた。

最初は、何だろう？　と不思議に感じていたが、車内掲示を見て合点がいった。バスの前部を女性用、後部を男性用に仕切るためだったのだ。

イスラム教圏では、宗教上の理由から、乗り物や食事スペースが男女別に分けられている場合がある。
　

アブダビを走るバス車内。バーで前後が仕切られている
　

バス車内にあった女性専用スペースの表記

日本でも近年、女性専用車両を見かけることが多くなった。

しかし、こちらはイスラム教圏とは異なり、主に痴漢などの迷惑行為を抑止する目的で始まったものだ。
横浜市営地下鉄ブルーラインでも然り。

平日の始発から午前9時まで、女性・小学生以下・身体障害者とその介護者などが利用しやすいようにと設けられている。
導入の経緯や実施状況、利用者の反応などを調査した。



賛成多数により導入が決定

最初は横浜市交通局の高速鉄道本部運転課へ。
運転係の鬼頭さんと石津さんから話を伺った。
　

9階と10階に交通局が入る「関内中央ビル」

―女性専用車両を導入したのはいつですか？
2003（平成15）年の3月に試行導入を始めて、同年7月1日から本格的に導入しました。

―なぜ導入することにしたのですか？
痴漢対策として、お客様からの要望があったことが発端です。当時はちょうど、他の鉄道会社でも導入に向けての動きが活発になっていた頃で、その流れに乗るかたちになりました。

―導入の際に反対意見はなかったのですか？
ありました。本格導入前に利用者アンケートを実施したところ「賛成70%、反対11%、どちらでもないという意見が19%」という結果でした。多くの方の賛同が得られたため、実施に踏み切ることにしました。

―実施の方法はどのようにして決めたのですか？
導入はほかの鉄道会社が先行していましたので、時間設定や告知の仕方などを参考にさせていただきました。また当局で調査したところ、通勤時間帯は1・2号車と5・6号車が混雑することが分かったため、支障が少ない4号車を女性専用車両としました。
　

駅ホームに掲示された女性専用車両に関する案内

―利用率はどうなっていますか？
導入直後は認知が十分に行き渡っておらず、乗車率は低かったのですが、現在では区間により多少乗車率に開きはあるものの平均で130%になっています。一般車両のラッシュ時の平均乗車率が125%なので、一般車両よりは女性専用車両のほうが混んでいるという状況です。

―導入後の利用者の反応は？
相変らず賛否両論はあります。それでも多くのご利用者から協力していただいているおかげで、これまで大きなトラブルもなく実施できています。過去に迷惑行為の被害にあわれた女性からの切実な思いも届いており、公共交通機関としてできる限りの対応をしていきたいと考えています。

―今後も続けていくということですよね？
はい。現在のところ廃止する予定はありません。当局独自のサービスというわけではなく、他社でも導入されていて社会的な認知も高まっていますので、今後も続けていきたいと思っています。
　

女性専用車両について教えてくださった、鬼頭さん（左）と石津さん（右）