9年間の義務教育を行う「小中一貫校」、そのメリットやデメリットとは?
ココがキニナル!
釜利谷西小学校と、西金沢中学校が9年生の学校のモデルとして一体化しているそうです。どんなメリットやデメリットがあるのか取材をお願いします!(tatsuyaさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
メリットのひとつは、「中一ギャップ」と呼ばれる急激な環境変化にワンクッションを挟むことができること。デメリットは、人間関係の固定化か。
ライター:河野 哲弥
横浜の教育現場が変わろうとしている
つい先日、小学校としては全国で初となる、社会の変化に伴うさまざまな問題を専任で対応する「児童支援専任教諭」の現場をレポートした。今回は、小学校6年間と中学校3年間の「6・3制」という現行の義務教育区分に連続性を持たせた「小中一貫教育」について、取材を進めてみようと思う。
これらは共に、横浜市が2006(平成18)年度に定めた「横浜教育ビジョン」に基づいた施策で、「教育のまち・横浜」の実現を目指す新たな試みとなっている。
金沢区にある、「釜利谷(かまりや)西小学校」の校舎
今回の投稿にあった「釜利谷西小学校」に連絡してみると、「小中一貫校」であるため、現在では「横浜市立小中一貫校 西金沢小中学校 釜利谷西小学校」が正式名称とのこと。その小学校の方で、取材を受けていただくことになった。
小中一貫教育のねらいとは
お話を伺ったのは、准(じゅん)校長の三浦先生と、副校長の海老名先生。なお、中学校を含めた全体の校長は中学校の校長である阿部先生であり、校長を補佐し、小学校の校長の行う仕事を任されているのが「准校長」だそうだ。
お手製の英語教材を手に、三浦先生(右)と海老名先生(左)
同校が開校したのは1975(昭和50)年で、「小中一貫校」が開校したのは2010(平成22)年から。なお、生徒数は本年度4月の段階で、中学生157人と小学生402人の合計559人となっている。
以前の学校名も併記してある、校門の表札
まずは、横浜市が取り組む「小中一貫教育」の仕組みについて、伺ってみることにしよう。
横浜市における小中一貫教育とは、小中学校間の連携を深め、「小中一貫カリキュラム」に基づく義務教育9年間の学習指導と生活指導の円滑な接続を図るための、連続性を図った教育活動のこと。
次に「小中一貫教育」のねらいだが、これは大きく2つあるようだ。
一つ目は、小中学校の教職員の人的交流を促進し、子どもの「学力観」「指導観」「評価観」の共有を図り、授業改善の促進と学力向上を目指すこと。実際に、中学校の先生が小学校で教えたり、小中学生が一緒になった授業も試みられたりしているそうだ。
小中学生が合同授業などを行うことができる、「国際ルーム」
二つ目は、いわゆる「中一ギャップ」をはじめとした、生活面における課題の解消を図ること。中学校へ入学するタイミングでは、今まで親しかった友人と別れたり授業内容が専門化したりするなど、子どもたちにさまざまな変化が訪れる。中には、新しい環境に慣れるまで力を発揮できにくい子どもや、周囲になじめず疎外・いじめの要因を生じさせてしまうケースもあるだろう。
一貫教育により、小中学校間の情報交換などが頻繁に行われれば、児童生徒に対するきめ細やかで適切な対応を効果的に行えるようになる。
同校より頂いた資料の一部
なお、日本の義務教育は、小学校が6年間と中学校が3年間の、いわゆる6・3制となっている。
しかし西金沢小中学校では、ジュニアステージ(小1から小4)、ミドルステージ(小5から中1)、ハイステージ(中2・中3)の4・3・2制としている。
こうした学年のまとまりについては、「9年間が一体となった」横浜型小中一貫教育の理念をふまえつつ、各学校の判断により決めるものであるらしい。同校の場合、児童生徒の発達段階や学習内容、学習方法に即して、4・3・2制がふさわしいと判断されたようだ。