野毛山動物園で亡くなった動物の遺体ってどうなるの?
ココがキニナル!
横浜では動物園で大型動物の遺体の処理はどこで行われ、埋葬されるの?間もなく、は虫類館などの耐震工事が始まり、動物たちの移動の様子を知りたい。また非公開の動物たちはどこで過ごすの?(doraxさん)
はまれぽ調査結果!
横浜の動物園は、遺体を「神奈川県立生命の星・地球博物館」などに寄贈することが多い。耐震工事のための動物の移動は終了し、来年8月に戻ってくる
ライター:松崎 辰彦
人気者マリンの死
2013(平成25)年3月8日、野毛山動物園で飼育されていたメスのアミメキリン、マリンが突然、この世を去った。
元気だったころのマリン(画像提供:野毛山動物園)
マリンは1997(平成9)年に長崎バイオパークで誕生し、翌年5月に野毛山動物園に移った。これまで7度の出産を経験したが、最近では昨年、テビチとの間にオスの「そら」を授かっていた。
テビチ(画像提供:野毛山動物園)
そら(画像提供:野毛山動物園)
3月8日昼過ぎに突然倒れ、職員が駆けつけたが、すでに息をしていない状態だった。獣医が聴診器を当てて診察し、死亡していることが確認された。
通常、動物園では動物が死亡すると解剖が行われて死因が特定される。しかし野毛山動物園にはキリンを解剖するだけの大きな部屋がなく、遺体はズーラシアへ運ばれ、解剖された。細胞の検査などもされたが、明確な死因の特定はできなかった。
結局、心嚢水(しんのうすい)という水が心臓にたまっていた状態が確認されたことから、マリンの死因は心不全であろうと考えられた。元気だったキリンが突然死するのは、ときどきあることだという。享年15歳だった。
野毛山動物園飼育展示係長の松本令以(れい)さんは言う。
飼育展示係長・松本令以さん
「国内で飼育されているキリンには29歳まで生きた記録があります。もしこれがキリンの最高齢で、人間のおよそ100歳にあたると想定すると、マリンはそのおよそ半分、50歳にやや届かないくらいかと考えられます。ただ人間と動物の年齢は単純に比較することはできません」
しかし、何の前兆もなかったというのも不可解である。
「一般に野生動物は人間に弱みを見せません。人間ならば言葉で自分の体調の悪さを表現できますが、動物はそういうことができないので、突然死ということはあり得ます」
動物の体調管理の難しさが想像できる。
動物の遺体の送り先は?
「現在、マリンの遺体は小田原市の『神奈川県立生命の星・地球博物館』にあります」
動物園では、動物が死亡すると遺体を博物館に寄贈することが多いという。横浜の野毛山動物園、ズーラシア、金沢動物園の3動物園の場合、多くは「神奈川県立生命の星・地球博物館」に送るとのことである。
野毛山動物園にいたシベリアオオヤマネコの剥製(「神奈川県立生命の星・地球博物館」)にて
「また、東京の国立博物館や、東京大学の総合研究博物館に送ったこともあります」
できれば飼育していた動物園で、死去した動物の剥製(はくせい)を展示できればいいのですが、そのスペースがありませんから、と松本さん。しかし動物園によっては展示しているところもあるといい、対応はさまざまだ。
なかには、まだ幼く骨も未完成の状態で死亡するケースもある。そうした場合、骨格標本にすることができないので、そのようなときは横浜市が所有しているペット用の火葬場に、遺体の処理をお願いしているそうである。
「横浜の動物園は市の所有する公園という位置付けですから、死んだ動物を土葬にすることはできません」と松本さん。
火葬にして残った灰に関しても、特に引き取ったりせず、業者に処理を一任しているということだった。
耐震工事に伴う動物の移動はすべて終了した
もう一つの質問に行こう。は虫類館、トラ・ライオン舎の耐震工事に伴う動物の移動に関しては、すでにこれらの動物は移動を終え、8月から工事がスタートする予定だ。
動物の移動を知らせるパネル
「動物はすべて、4月から6月にかけて移動させました。ライオンはフクとシンクの2頭ですが、ズーラシアにいます。一般公開はしていません。トラは園内の、ツキノワグマの獣舎に移動させて、公開しています」
ライオンはいまズーラシアにいる
トラは移動して別の獣舎に
「は虫類は、は虫類館の横の『ひだまり広場』に代わりのプレハブの仮設は虫類館を建て、
そこで公開しています。外の窓から覗き込む形になり、少々見づらいですが、ご了承いただければと思います」
プレハブの、は虫類館
中にいるカメ
環境の変化は動物にも影響をおよぼす。
「トラは当初、落ち着かないところもあったのですが、少しずつ慣れて、落ち着いてきましたね」
すべての工事が終了し、元通りライオンが見られるようになるのは、来年8月とのことだった。