横浜市営地下鉄ブルーラインの運転席近くだけがボックス席のようなクロスシートなのはなぜ?
ココがキニナル!
横浜市営地下鉄の3000形の初期型車両の先頭と最後尾の車両の運転席側の席だけクロスシートとなっていますが、何故この席だけクロスシートなのでしょうか?(ヨコさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
かつて走っていた1000形車両に車いす用スペースを設ける際、座席減を軽くするために作られ、同時期に設計されていた3000A形にも引き継がれた
ライター:田中 大輔
電車の車体に対して横向きに設置されているクロスシート。
一見、広い面積を占領してしまっていて効率が悪そうに見えるが、実は着席定員を増やすことのできる優れものだった、というのは先日の「相鉄線にはどうしてボックス席が採用されているの?」でもご紹介した通り。
今回のキニナルは、市営地下鉄ブルーラインにもクロスシートが採用されている、という内容。
それも、3000形の初期型の運転席の後ろだけという限られた場所にちょこんと設置されているというのだ。
4種類の3000形
まずは、ブルーラインの車両について勉強しておこう。
今現在、走っている車両は実はすべて3000形と呼ばれる車両。お察しの通り、かつては1000形、2000形が存在していたがすべて引退済みだ。
ただ、3000形には4つの種類がある。
1992(平成4)年にデビューした元祖3000形である3000A形、1999(平成11)年の湘南台延伸に向けて投入された3000N形、2004(平成16)年に登場し現在最も多く使われている3000R形、そして翌2005(平成17)年に生まれた末っ子の3000S形の4つだ。
3000形4兄弟はみな現役で、全部で37編成222車両が日夜横浜市内を走り回っている。
今回の主役となるのは3000形の初期型、つまり8編成が使用されている3000A形だ。
こちらが今回の主役。3000形の一次車、3000A形
後発の車両と違い、前面がFRP(繊維強化プラスチック)を使った丸みのある顔になっているのがその特徴。
また、先頭車両の行き先表示画面が大きく作られているのも、弟たちとは違うところだ。
そして、今回のテーマであるクロスシートが備え付けられているという点ももちろん忘れてはならない。
先頭車両の片隅に4席だけ置かれたクロスシート
ではなぜ、3000A形の、それも先頭車両の端っこにのみクロスシートが採用されたのだろうか。
冷房がないからクロスシートに?
今回は市営地下鉄を運営する交通局に取材をお願いし、高島町のオフィスで車両課長の熊谷勝博さんに話を聞いた。
さっそく質問をぶつけてみると、「それについては、1000形にまで遡らないといけません」と熊谷さんは話す。
1000形車両は、1972(昭和47)年の開業以来使われていた市営地下鉄の初代の車両だ。
3000A形だけでなく、この車両にも同じ場所にクロスシートが設置されていたのだそうだ。
2形式の間に使われていた2000形には設置されていないというのも不思議だが、なぜなのだろうか。
デビュー当時、1000形車両のあの場所にはクロスシートはなく、3人掛けの普通の座席が設けられていたそうだ。
これがある理由からクロスシートに変わり、後に登場する3000A形にも影響を与えたというから興味深い。
昨年のイベント時に参加者に公開された1000形車両
その理由を知るカギになるのは、「冷房」だ。
1970年代の前半だから特におかしなことではないのだが、1000形車両には冷房が取り付けられていなかったそうだ。
ところが、1984(昭和59)年に冷房完備の2000形がデビューすると様子が変わる。
2000形登場以降は冷房のある電車とない電車が走っていたことになり、不思議なものでこうなると利用者からも不満が出てくる。
今ではあって当たり前になっているエアコン。時代を感じるエピソード
そのため、平成元年度から4年度にかけて1000形車両に冷房を取り付ける改修が行われた。
このときに冷房設置以外の補修もしたとのことで、その中に車いす用のスペース確保という工事も含まれていたんだそうだ。
そして、このことがクロスシート採用に大きく関わってきたというのだ。