横浜「1000ぶら」商店街探訪Vol.7 「買い物しりとり」でパサージュ上大岡とさかえ通り商店街を迷走
ココがキニナル!
パサージュ上大岡とさかえ通り商店街で「買い物しりとり」を敢行。「パサージュ上大岡」で始まり「揚げ出し豆腐」で終わる夏の午後
ライター:永田 ミナミ
横浜「1000ぶら」商店街探訪。この企画のルールは、横浜市内の商店街を「活動資金1000円」のみで「ぶらっと」歩くというもの。
今回は上大岡中央商店街、またの名は「パサージュ上大岡」。上大岡へは「横浜で一番急な坂はどこ?【港南区・栄区編】」以来、約2年ぶりの訪問。前回は坂の角度計測に集中していたため、商店街へ足を踏み入れなかった。
いったいどんな商店街なんだろう、と思い巡らせながら改札を出ると、そこは商業ビルの3階で、いきなり現在地を見失ってしまった。副都心としての再開発が進みまくったコンクリートジャングルに、果たして人情は残っているのだろうか・・・。
一抹の不安がよぎる頭を振りながら交差点を渡り、1000円札を受け取った。
パサージュ上大岡を歩く
なるほどパサージュだ、と納得しながら遥かな高みへと1000円札を掲げはしゃぐ
ちなみに「パサージュ」とはパリに点在するガラス屋根に覆われたアーケードのこと。それにしても 今回、原稿を書いている間に「おおお」と3つ並んだ「お」を見て、何回「あ、間違えた。あ、間違えてない」と思うだろう。
今回は1000円で「買い物しりとり」をしよう、と歩きはじめて1分ほどでパサージュの屋根がなくなり、四つ角に出てしまった。
あれ? と思いながらもう少し歩いたが、その先は商店街というよりは飲食店街になっている模様。
パサージュのすぐ先を流れる大岡川では子どもたちが全力で遊んでいた、8月最後の金曜日
おや、こんなに晴れているのに雲行きが怪しいぞ、と引き返し、パサージュが終わったところにある「成田屋酒店」の方に「パサージュ上大岡はどこまでですか?」と聞く。すると「その屋根があるところまでですよ」という答えが。
しかも、商店街の片側は、ミスタードーナツ、ドトール、らあめん花月やすき家がならぶ商業ビルの「カミオ」である上、カミオと向かい合うようにツタヤまである。
猛暑日にもかかわらず首筋を冷たい汗が流れた。
おお、神よ。この企画にとって再開発は悪魔の爪だ
しかし、悲嘆に暮れかけているところに、成田屋酒店の方が「あそこの焼き鳥屋さんは古くからやってますよ」と教えてくださった。そうだ、すべてがチェーン店なわけじゃない。
記者は「おおお」と力を取り戻し、教えてくださったパサージュのちょうど中ほどにある店へと、30メートルあるかないかの道を急いだ。
指さされた先には2軒の「TORIGE」が。左側のThe Cookery TORIGEに話を伺った
とても親切に対応してくださった店長の鳥毛(とりげ)直樹さん
鳥毛さんによると、右側の「TORIGE」が60年ほど前から続く焼鳥店だという。直樹さんが店長をされている左側の「The Cookery TORIGE」は惣菜店で、3年程前から営業しているそうだ。
以前向かい側にあった店は、、閉店したか「カミオ」のなかに吸収されてしまい、商店街らしい趣は「今ではほとんど残っていないですね」とのこと。
「上大岡中央商店街」についてより詳しくご存知なのは、現商店会会長である「TORIGE」のご主人ということだが、残念ながら外出中、とのこと。そこで代わりに「昔のことは隣の呉服屋さんがよくご存知ですよ」と紹介してくださった。
しりとりを始めるどころか「商店街」を探すところから始めることになるとは
鳥毛さんに「あとで何か食べに来ますね」と言い残して商店街らしい趣を残す「まるとよ」に入り、ご主人に取材内容を話すと快く応じてくださった。
店主の原木さんは上大岡中央商店会の副会長もつとめている
原木さんによると、「まるとよ」が開業したのは1968(昭和43)年。中央商店街という名前になったのは昭和40年代だが、それ以前も商店街として栄えていたという。
戦後の一時期は「箱根通り」とも呼ばれていたが、商店街を過ぎた大岡川の先、大久保地区に花柳界(かりゅうかい)があり、その風景が箱根に似ていたからなのだそうだ。当時と比較すると、現在の店舗数は3分の1ほどに減っているという。時代の移り変わりとはいえ少し切ない。
昔ながらの呉服屋らしい店内に、ざわついていた気分もほっと落ち着いた
貴重なお話を聞かせていただいたし、「まるとよ」で何か手ごろなものがあれば、と店内を眺めていると、手ぬぐいに「150円」というシールが貼ってあるではないか。これ以上ない手頃さだ。
しかし、「買い物しりとり」はパサージュ上大岡の「か」か、上大岡中央商店街の「い」から始めようと思っていた。
「て」だからだめだな、とは思いながらも、手ぬぐいを手に取り原木さんに企画内容を話すと、原木さんが「ああ、ガーゼ手ぬぐいね」と呟いたのを、記者は聞き逃さなかった。
ガーゼ? ・・・ガーゼ手ぬぐい。「が」ならセーフだ! そう思った次の瞬間、1000円札を握りしめ「これください」とガーゼ手ぬぐいを差し出していた。
商店街らしさ溢れる店からスタートできてよかった。原木さんありがとうございました(残金850円)
店頭に並んだ8色の甚兵衛&作務衣。赤い作務衣が相当クールだ
はまれぽステッカーを進呈し、次の目的地と「い」から始まるものを探すべく「まるとよ」を後にした
鼻歌まじりに店を出たが、外はやはりチェーン店ばかり。さて、どうするか。
ひとつキニナったことは、「パサージュの終わりを左折したところに“TORIGE”がレストランを出しているんですってね」と原木さんに話した時の、「さあ、あっちは別の商店街だからよくわからなくてね」という言葉だ。
「別の商店街」。今回は上大岡中央商店街だけを歩くつもりだったが、「TORIGE」繋がりでちょっとだけ覗いてみよう。太陽の下に出て、さっき直進した四つ角を左折した。