中古車販売店でアメリカの自家用飛行機を販売? 鶴見区の住宅街に突如現れる謎の飛行機の正体は?
ココがキニナル!
鶴見区上末吉5丁目8の付近に、飛行機が乗った建物があります。中古車屋さんらしいのですがなぜ軽飛行機なのかキニナル。(川崎好きのUTさん、馬車道さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
謎の飛行機は、中古車店「山一自動車販売」の先代社長がお店の看板代わりにと引き取ったもの。いまでは子供に人気のランドマークになっている
ライター:はまれぽ編集部
なぜか屋根の上に飛行機が乗っているらしい中古車屋さん。
売っているのは車なのに、飛行機がでかでかと目立っているようだ。
経営者が乗っていたもの? それとも単に飛行機が好きだから?
その理由を探るべく、現地に向かってみた。
事務所の屋根に固定された飛行機
キニナル投稿にあった住所を頼りに飛行機を目指す。
東急東横線綱島駅前からバスに乗り、上末吉(かみすえよし)に向かう。
バスを降りて、上末吉交差点から三ツ池公園方面へ進んで行くと・・・
あっさり発見
斜めになってる
真正面
ヒキで
確かに、屋根の上にしっかりと乗っている。
しかし、本日は営業していないようだ。
看板に掲げられている番号に電話し、取材のお願いをしてみたところ、あっさりOKが。
日を改めてお話を伺えることになった。
そして取材当日。
株式会社山一自動車販売の代表取締役、板山康幸さんにお会いすることができた。
板山さん、宜しくお願いいたします
山一自動車販売は、板山さんのお父さんが1972(昭和47)年に創業。
飛行機はその翌年くらいから置いているそうだ。
先代社長は特に飛行機が好きだったわけではなかったという。使わなくなる飛行機があることを人づてにたまたま聞いて、看板代わりになるんじゃないかと思ったので引き取ることになったそうだ。
それ以前、この飛行機は4人で共同所有されていたそうで、そのうちの一人はなんとあの横浜生まれのマジシャン、初代・引田天功さんだったという。
飛行機は、調布の飛行場で引き渡されたそう。当時小学生だった板山さんは、お父さんと一緒に引き取りに行ったことを覚えているという。
「父親と二人で休日に出かけることなんて滅多に無かったので、よく覚えているんですよ」
引き取られる前の飛行機。主翼の上の男の子は以前の所有者の息子さん(写真提供:インターネット航空雑誌「ヒコーキ雲」)
「Flying Witch」というイラストが施されている(写真提供:インターネット航空雑誌「ヒコーキ雲」)
引き取った後は、先代社長がオリジナルのペイントを施し、高い脚を付けて売り場に展示。その下に車を配置するなどしていたそう。
その当時の写真が、当時のお店の雑誌広告に掲載されていた。
『カーセンサー』1984(昭和59)年12月5日発行号
自動車の上に飛行機。ちょっとシュール
当時は、この飛行機の下にも車を展示していたそうで、飛行機を支えている柱の間に車を入れるのは少し大変だったという。
来店したお客さんや、その子どもには、希望があれば機体に乗ってもらうこともあった。古くなっていたものの、まだエンジンをかけることもできた。その音量はものすごかったらしく、後々スカイライン用のサイレンサーを付けて音を抑えたそうだ。
「今はある程度、店舗や建物がありますが、昔この一帯は本当に何もなかったんですよ。なので、余計に『飛行機がある自動車屋さん』とランドマーク的に覚えてもらいやすかったのかもしれませんね」と板山さん。
1990(平成2)年、敷地内にある事務所を建て替えた際に、飛行機を屋根の上に乗せた。これまでより高いところに設置するので、下からも見えやすくするために少し角度をつけて固定したそうだ。
そういう理由で斜めになっているのか
しかしこれ、けっこう重そうですけど簡単に持ち上げられるものなんですか?
「この機種は『ビーチクラフト マスキティア』という機種で、軽いんです。はっきりとしった重量は分かりませんが、700kgほどある軽自動車よりも軽い。飛ぶ為に設計されているので、全体のバランスも良い。なので、小型のクレーンを使って屋根の上に引き上げるときは、それほど苦労しなかったみたいですよ」
軽くできているので、逆に強風に飛ばされてしまうことの方が心配なんだそう。
ちなみに、このマスキティアという飛行機。
全盛期の初代・引田天功さんが4人で共同所有するほどということは、かなり珍しい機種なのだろうか。
『日本航空機全集』をはじめ、数々の航空図書の出版を手掛ける鳳文書林出版販売株式会社に問い合わせてみた。
マスキティアは、ビーチクラフトというアメリカの飛行機メーカーの機種で、セスナ、パイパー・エアクラフトと並ぶ世界3大軽飛行機メーカーのひとつだ。
板山さんのお父さんが機体を購入した1970年代には、アメリカでは自家用飛行機として数多く流通していたそうで、それほど珍しいものではないという。ただ、その時期に日本で所有していた人は少ないんじゃないか、という回答をいただいた。
「Beachcraft Musketeer」で画像検索すると、いろんなタイプのマスキティアが
なるほど。機種としては当時の日本では珍しく、かつて何も無かった地域には十分すぎるランドマークになった、ということだろう。
ここで、屋根の上にある飛行機を間近で見てみたくなった筆者。恐る恐る、屋根に登れるか聞いてみると、ご了承いただくことができた。ただし、時間の都合で日を改めることに。