川崎市の第三京浜の柱に出てくるという「消しても消しても浮かび上がる女性の影のようなシミ」の正体は?
ココがキニナル!
30年前くらいに新聞記事り実際に見たこともあるのですが川崎市高津区千年の第三京浜の柱に消しても消しても浮かび上がる「女性の影のようなシミ」がありました。今はどう?(takedaiwaさん)
はまれぽ調査結果!
シミは柱の耐震工事のため外側からは見えなくなった。周囲で事件や事故が多かったため幽霊の噂が流行りやすく女性の姿のシミの霊の話が出たようだ
ライター:小方 サダオ
新聞で報道された「橋脚の女のシミ」の幽霊話
「橋脚の女性のシミの幽霊譚」に関しては、読売新聞1985(昭和60)年5月31日に詳しい。
1985(昭和60)年5月31日読売新聞の神奈川版
新聞に書いてあることを要約すると「橘中前の交差点近くの第三京浜のコンクリートの橋脚に、高さ3メートルほどの灰色のシミがあり、女性の姿に見える。シミが現れたのは、1979(昭和54)年からで、約一年前に同交差点で近くの少女が死亡した交通事故があり、それがもとで怪談となった。近所の話によると深夜に問題の橋脚の方から、助けを求める女の声が聞こえてきたり、シミを消そうとするとたたりがあったりする」とのことだ。
そこで投稿にあった「女のシミの幽霊」を確認しようと現地へ直行した。
綱島街道を14号鶴見溝ノ口線で曲がり、川崎市高津区方面へと向かう。車で15分ほど走ると、橘という交差点にさしかかる。枝分かれする道路を右へと進むと、第三京浜の高架下に着く。この高架下の橘中学校前交差点を南下した市道二子千年線の中央分離帯に立つ橋脚が、問題の橋脚である。
綱島街道から14号鶴見溝ノ口線を進むと、問題の橋脚がある
橘交差点で二股に分かれる
橘交差点を右折する
橘中学校前交差点
中央分離帯の中に問題の橋脚が立っている
投稿にあったのは中央に並んだ柱、向かって右側の柱の手前から4本目の柱のようで、現在は補強工事中のための足場が組まれていて、表面が見られない。
足場の組まれた問題の橋脚
補強工事前のコンクリートがむき出しのものもある
幽霊騒ぎについて周辺住民に伺う
幽霊騒ぎがあった当時の状況について、あるお店の女性店員Bさんにお話を伺うと「あれは私が小学生の時だから、30年ぐらい前です。ラジオ番組でシブがき隊のフックンもこの噂を話題にしていました。私たちも遠足などであの柱の前を通ると、噂にしたものです。3~4メートルほどの高さの髪の長い女性の姿の大きなシミで、友達は『あの女の影は地縛霊だ』と言っていました」
「阪神大震災後に行われた、10年前の柱の耐震工事と白いペンキで塗られたせいで見えなくなりました。そのときも『見えるから隠したんだ』と噂している人がいました」と答えてくれた。
補強のための鉄板が張られ、上から白いペンキを塗られている
もう「問題のシミ」は見られないようである。
また「新聞に“事故のあった女性の霊”と書かれていた」ことを話すと「たしかにこのあたりは交通事故は多いです」と答えてくれた。
そしてBさんが、ご自身より先輩であった近くのお店の店主Hさんを紹介してくれた。
Hさんに騒ぎに関して伺うと「1981(昭和56)年ごろのことでしたかね。地元ではそんなに大騒ぎはしていませんでしたよ。しかし大人になって同級生と会った時に昔話として『わざわざ見に行った』と言っていた人はいました。あの影の正体に関してはいくつも説があり『乳母車を押した女性の影だ』、とか『第三京浜で首を失くした女が盛んに首を探している姿だ』とか言われていました」
「阪神大震災後の補強工事で、鉄板の上から白いペンキを塗ったため、全く見えなくなりました」とBさん同様のことを答えてくれた。
全ての橋脚が補強工事をされているわけではない
「事故の犠牲者の霊」という話に関して伺うと「たしかにこのあたりは事件や事故が多いですね。特に第三京浜沿いの道の坂を上った先のあたりに多いです。最近では坂を自転車で下りてきた母と乗せていた子どもが、ブレーキが故障していたせいで、猛スピードでガードレールに突っ込んで亡くなりました。またキノコ採りの人が竹藪で白骨死体を発見したり、女性が上にかけられた橋から下の第三京浜に飛び降りる自殺があったりしました。また公園では日本刀による復讐劇などがあったのです」とのこと。
続いて地元で長く営業を続けているある会社の従業員Nさんにお話を伺った。
「その女性の影の話は憶えていますよ。だけど交通事故が多発するのは、その橋脚の橘中学校前交差点よりひとつ北側の交差点です。新聞にあるような女の子の事故があったのもその交差点といわれていて、問題の柱より距離が離れているので、おかしいね、と当時私たちは話をしていました」と答えてくれた。
橘中学校前交差点より北東にある隣の交差点の方が事故が多いという
昔から事故が多い交差点だという
そこでその交差点に向かうと、ある通行人の方より次のような話を伺った。
「1985(昭和60)年ごろには12歳の少女が亡くなる事件がありましたよ。この交差点は橋脚の下を通る道路と橋脚の側道の道路が矢印の時差式の信号で通るようになっているため、信号が青の直進の矢印になっても右・左折したい車が道路上で待っているため、後ろにいる直進したい車があおったりする場合が多いのです。そのため結構矢印を無視する車がいます。また信号待ちをする人が高速道路の柱の影になるため、車からよく見えないようです」とのこと。
橋脚の下と橋脚の側道の、上下で合計4車線の道路
また近くの住人に伺うと「この交差点は、昔から『危ないから気をつけろ』と言われてきました」とのこと。
続いて女のシミに関しては「私も見たことがありますが、誰かがイタズラで柱に液状のコンクリート剤をぶっかけた後のようでしたよ。少し立体的でしたから。だから上からペンキを塗ってもまた現れるんですよ」と答えてくれた。
つづいて問題の橋脚付近に戻り、噂に関するさらに詳しいお話を知っている人を探した。
すると地元で長くお店を営んできたYさんが次のような話をしてくれた。
「私も当時見に行きましたが『傘をさした女性』のようなシミが出ていました。そして騒ぎが大きくなったので、ペンキを塗り直したか掃除をしたところ、また浮き出てきた、という話も聞きました。交通事故が多かったのは一つとなりの交差点です。信号の表示が右折禁止にもかかわらず曲がってしまった車に、前方から来た車がぶつかり、その車が信号待ちをしていた女の子に突っ込み、亡くなる事故がありました。しかしそれはシミの騒ぎのずいぶん後のことですけれど」
右折禁止を守らなかった車が信号待ちの女の子にぶつかる事故があった、という
「橘中学校前交差点近くのガソリンスタンドの所長に聞いたのですが、第三京浜に関する事故で有名なものがあります。それは昭和40年代、第三京浜ができて間もないころかもしれません。第三京浜を走っていた車に、運転席に男が、助手席に女が乗っていました。するとその女が窓から首を出した際に、何かに首がぶつかり、首が削れて下の道に落ちたそうです」
「その後高速道路の上から下の道に向かって、警察官か誰かが『おーい、そっちに首落ちてねーかー?』と聞いて来た、ということがあったそうです。その場所は例の柱よりは少し野川寄りだったそうですが。昔からこのあたりではそんな事故が多かったせいで怪談騒ぎになったのかもしれませんね」と答えてくれた。
前出のHさんからも「女の影の正体は『第三京浜で首を失くした女が首を探している姿だ』」というお話もあった。この首を探す女の霊の話が、このあたりで有名な怪談話の一つだったのかもしれない。
第三京浜の事故で首を失くした女の霊が噂の柱のシミになったのだろうか
噂に関する話は聞けたものの、実際に幽霊を見た人は見つけられなかった。しかし第三京浜の問題の柱の周辺では、怪談の原因になりそうな事件や事故が多いという。
そこで前出のHさんの話にもあった、第三京浜沿いの側道を上った先に向かった。