立ち入り禁止区域に潜入! 横浜赤レンガ倉庫前の水が流れる巨大な四角い4つのオブジェの正体は?
ココがキニナル!
赤レンガ広場の横にあるガラス張りで水が流れている4つの四角いオブジェ。網が張ってあり、下から風が出ているようなのですが、単なるオブジェでなく、重要な機能がある?(イルカさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
オブジェの中には赤レンガ倉庫内に設置できなかった電気やガス、空調の設備、機械室などがあり、倉庫内を快適に保っている。オブジェの名前はない
ライター:藤井 涼子
横浜赤レンガ倉庫イベント広場の横にある四角いオブジェを調べる、というのが今回のキニナル依頼。
何度も赤レンガ倉庫には行っているが、そんなオブジェあったかな? と思い出せない。キニナル投稿には写真が添付されていた。
かなり大きなオブジェのようだ(投稿写真より)
今まであまり気にしたことはなかったが、大きなもののようなので、すぐに見つかりそうだ。早速現地へ取材に向かった。
現地でオブジェを確認
JR桜木町駅から歩いて約15分。横浜赤レンガ倉庫に到着。
取材日はあいにくの雨模様。写真右が1号館、左が2号館
横断歩道を渡り、赤レンガ倉庫へ近づくと1号館の前に、キニナルオブジェを発見! ちなみに、オブジェがある「赤レンガパーク」は撮影禁止エリアなので望遠レンズを使って撮影することに。
右の方に見えてきた
写真右がオブジェ、左が赤レンガ倉庫1号館
大きい! 横幅が7~8メートルはありそうだ
近くで見てみると、キニナル投稿にあるように確かに水が流れている。
絶え間なく、ジャブジャブ
横並びに4つ並んでいた。
周りは芝生。一見したところ「公園の中の噴水」のような印象
キョロキョロと見まわしていると、オブジェの上の方から網が浮き上がってきた!
下から空気が出ている様子
オブジェとオブジェの間を通り抜けられる。足元には水が流れていて気持ちがいい
オブジェの周りには、特に説明書きなどはないので、実際は何なのか見ているだけでは分からなかった。
赤レンガ倉庫内に空調設備がない!?
今回のキニナル質問に答えてくれたのは、株式会社横浜赤レンガ広報担当の本多康介(ほんだ・こうすけ)さん。
赤レンガ倉庫でのイベント取材など、毎度お世話になっています
本多さんは「いや、そんな『ビックリ!』みたいな事実はないですけど・・・」と苦笑いで取材を受けてくださった。
結論からいうと、この4つのオブジェの中には赤レンガ倉庫1号館、2号館の空調設備がある、とのこと。「赤レンガ倉庫内には空調設備を置く場所がないんです」と言う本多さん。現在、倉庫内にはさまざまなお店やレストランがあるのに空調設備を置く場所がないとは、どういうことなのか?
その理由は、赤レンガ倉庫の歴史が関係している。
赤レンガ倉庫の完成は、実は2号館の方が早く1911(明治44)年。1号館はその2年後の1913(大正2)年。横浜港での外国貿易が急速に発展している時代、貨物の保管庫として建設された。
建設当時の1号館(提供:横浜市港湾局)
完成した赤レンガ倉庫は、日本最初の荷物用エレベーターや消火水栓(スプリンクラー)、防火扉などを備えた日本が世界に誇る最新鋭の倉庫だったそうだ。
貿易のための倉庫として利用され続けていた赤レンガ倉庫。関東大震災、第二次世界大戦などを乗り越え、戦後は、また湾岸倉庫として再稼働していた。
しかし、昭和40年代に入ると海上輸送のコンテナ化が急速に進み、赤レンガ倉庫の取扱貨物量が激減。倉庫としての役割が低下し、用途廃止や建物の解体も想定されはじめる。
赤レンガ倉庫前の線路跡
そして、横浜市の都市再生計画において赤レンガ倉庫の保存が検討されることとなった。その結果、1999(平成11)年に「港の賑わいと文化を創造する空間」として事業を行うことになり、1号倉庫は主に文化的利用、2号倉庫は主に商業的利用するということが決まった。
決定の翌年には、商業利用のための改修工事が行われ、2002(平成14)年に文化商業施設として生まれ変わった。その際、歴史的建造物としての記憶を留めるため、外観は原型をほぼ忠実に守る必要があった。
オブジェは2000年の改修工事から2002年の横浜赤レンガ倉庫の始業開始の間に整備された。
現在の2号館。建設当時の様子とほぼ変わらない
本多さんによると、倉庫外壁の構造補強や屋根の改修などの工事を行った後、空調や電気、ガスなどを供給する設備は別の場所に建設する必要があったという。
通常の百貨店やショッピングセンターなどは、エアコンの室外機は屋上に設置されていることが多い。しかし、赤レンガ倉庫の屋根は三角形になっていて、屋上などに設置することはできない。
屋根の形も特徴的な赤レンガ倉庫
また、限られた室内スペースを有効的に利用するためにも、倉庫の外部へ設置する必要があったとのこと。
そこで、離れた場所に1・2号館共通の供給設備棟を地下に設置し、地中に埋め込んだ管を通して、エネルギーを倉庫内へ供給することとなったそうだ。
下には、空調・電気・ガス供給施設がある
このことにより、横浜赤レンガ倉庫は、レンガ造り特有の雰囲気や歴史性を残した文化施設・商業施設と生まれ変わることができたのだ。
エネルギー供給設備とはいえ、その場所が赤レンガ倉庫の雰囲気を損なわないような「快適な空間であるように」と芝生の上に清涼感のある壁泉が設置されることとなったそう。
壁面を流れている水は、エネルギー供給設備とは関係なく、癒しの空間を作り出すための演出として行っているとのこと。
天気の良い日には、多くの人が芝生の上でくつろいだり、夏場には水に触れて遊ぶ子どもたちが集まったりする場所となっているようだが、水の中で遊ぶのは禁止されている。
水の中は立ち入り禁止ですよ