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「天そばの『ぬき』ちょうだい!」粋でイナセな横浜の老舗蕎麦屋で食べられるツウな一品とは!?

ココがキニナル!

関内駅のそばにある蕎麦屋では、酒のつまみに焼き海苔をオーダーすると炭火が入った木箱に海苔が入れられて出てくるんだとか。蕎麦屋には「ぬき」等の独特のつまみがあるらしくキニナル!(bjさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

横浜の老舗蕎麦屋「利久庵」と「角平」では、つけ天の「ぬき」や、焼海苔、そば味噌、板わさなど、そば屋ならではのつまみが充実していた。

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ライター:大和田 敏子

どっぷり日が暮れる前に、そば屋の暖簾をくぐり、ちょっと一杯・・・。何て粋な感じなんだろう。
「木箱に入れられて焼き海苔が出されるおそば屋さん」も、もちろん、キニナルのだが、今回のテーマは「そば屋で粋に酒を飲む!」といった感じでいきたい。
まずは、そば屋のつまみについて、少し調べてみることにした。



そば屋特有の「ぬき」とは?



「そば屋」は江戸時代中期ころから始まった商売のようだが、昔は、注文が入ってからそばを打ったので時間がかかり、客は海苔などをつまみに、お酒を飲んで待っていたのだそう。ここから「そば屋で酒を飲む」という慣習が始まったようだ。

投稿に書かれていた、そば屋さん独特の「ぬき」って一体、どういうことものだろう?
 


インターネットや書籍で調べたところ・・・


「ぬき」というのは、そば屋さんで酒を飲む時に「天せいろ」「天ぷらそば」や「鴨せいろ」などの天ぷらや鴨を酒のつまみとして先に出してもらい、後でそばを出していただくことなのだという。そうすれば、お酒もそばも美味しくいただける。

・・・なるほど。つまり、「ぬき」はそばを抜いて出すという意味なのだと分かった。
 


さらに、そば屋特有のつまみについて調べていくと・・・

そばの具としてもともと用意されている食材を使ったものが、つまみの定番だったようだ。

キニナルで寄せられた「海苔」はもちろん、しいたけやかまぼこなどの具材を並べて日本女性の顔を描いた「おかめそばのかまぼこ」を使った「板わさ」、かけそばに貝柱をのせた「霰(あられ)そば」の小柱にわさびを添えた「柱わさび」といったもの。

また「玉子焼き」や「茶碗蒸し」、「焼き鳥」といった、そばに本来必要な「出汁」や醤油と砂糖を合せて寝かせた「かえし」を生かしたつまみ。これも、そば屋さんで特に美味しいつまみ、と言われているようだ。

  


玉子焼きはそば屋さんで美味しいおつまみのひとつ


そば屋のつまみのことが少し分かってきたところで、投稿にあった、関内駅近くの焼き海苔が炭火の入った木箱で提供される店を探してみることに。
リサーチして電話取材をしたところ、以前はまれぽでも紹介させていただいた「利久庵(りきゅうあん)」と判明した。



焼き海苔が木箱で出される!? 「利久庵」へ



ぜひ、その「焼き海苔」をいただきたいとお願いして「利久庵」にお邪魔することに。
JR関内駅から徒歩2~3分で・・・
 


創業1947(昭和22)年、趣のある店構えの「利久庵」に到着!


「利久庵」主人の出川修治(でがわ・しゅうじ)さんにお話を伺うことができた。

はじめに、キニナル焼き海苔について伺うと、「焼き海苔は皿に乗せて出すと、すぐに湿気ってしまうから、江戸時代からの慣習に従って、炭火を入れた木箱に入れてお出ししているんです」と話してくれた。

「利久庵」はタレントの出川哲朗さんの伯父さんの営む店。こちらで出される海苔は、もちろん、実家である老舗海苔問屋「つた金海苔店」から仕入れている今では希少価値の高い東京湾の浅草海苔だそうだ。実際に懐かしい香りの漂う「焼海苔」(450円)を出していただいた。
 


美味しくお酒が飲めそうな、いい感じです!


木箱の中には小さな炭火がはいっているのでノリはほんのり温かく、パリッとしている。何より香り高くおいしい!
一つキニナルを解決したところで、さらに「利久庵」で出されている酒のつまみについて伺った。
 


落ち着いた雰囲気の店内


江戸時代末期の文化文政期(1804~1830年ごろ)には、約100万人の江戸の人口に対して、そば屋さんは4000軒ほどあったそう。そば屋さんの割合は、現在よりもかなり多い。

「当時の江戸は地方出身者がほとんど。そば屋は、そば粉だけではなく、お酒や料理も郷土のものを置いて、庶民が酒を楽しめる、今の居酒屋のはしりのような存在だったのでは」と出川さん。

「利久庵」は、そんな江戸時代の“そば屋で一杯”という雰囲気をイメージしている面もあり、夜は特にお酒を飲むお客さんが多いとか。お酒も日本酒なら八海山や菊正宗、他にも梅酒やそば焼酎など取り揃えられている。旬の食材を取り入れて、メニューに変化をもたせながら、常時40種類もの一品料理を提供している。「いなごの佃煮(山形県真室川産)」(500円)と「新島名産 くさや」(600円)といった郷土料理も目を惹いた。

お話を伺いながら、ちょっとそば屋で一人酒の感じで・・・
 


八海山純米吟醸(400円)とおつまみを出していただいた
 

そば屋の定番、「板わさ(小田原・丸う)」(600円)


わさび漬けと玉子焼きとともに盛合せられているのは、ほかではあまり見かけない。いただいてみると、わさび漬けとかまぼこがよく合う。わさび漬けは天城浄蓮(あまぎじょうれん)の滝のものだそうだ。彩りよく添えられている緑は、かいわれ大根ではなく、そばの葉なのだそう。さりげなくおそば屋さんらしさが・・・。

そば屋らしいというところでは、そば粉を塊状にした「そばがき」(900円)もメニューにあった。今度、伺う時には、ぜひいただいてみたい。
 


「にしんと焼きなすの旨煮(自家煮)」(750円)


ニシンは、水を一切使わず、お酒と沖縄の黒砂糖、醤油を使って1週間かけて仕込むのだという。味がしっかりしていて、食感も良く、お酒が進んでしまう・・・。優しい味わいの焼きなすと盛合せで、味のバランスも良い。

さらにもう1品・・・
 


「新潟名産 茄子の水漬け」(380円)


ほどよい塩加減で、なすのおいしさを味わえるお漬物だった。

美味しくお酒をいただきながら「ぬきでと注文をするお客さんはいますか?」と伺ってみると、「つけ天や鴨せいろを、ぬきで、お銚子1本ね・・・、という注文をするお客さんも少なくないよ」とのこと。
そういう粋な注文をしている方々が結構いるのだと知り、ちょっと驚いた。

お酒を飲み終わるころ、おそばを出していただいた。
 


「冷しかけ とろろ」(1030円)、こちらは小盛なので100円引き


「とろろは混ぜない方がおいしいよ。早く食べないとそばが伸びちゃうから、写真なんて撮ってないで、すぐに食べて!」と出川さんに急かされ、急いでいただく。

ねばりの強いとろろと、しっかりした食感のおそばがよく合い、すごくおいしい!
 


利久庵のそばは、十勝産のそば粉を使った二八そば
 

最後に、そば湯を出していただいた


今まで、そば湯を湯呑みと一緒に出された経験がなかったので、どうしたらよいのか迷ってしまう。

スタッフの方に伺うと「年配のお客さまも多いので、そばを召し上がった後の汁にそば湯を入れて飲むと、濃すぎるという方もいます。汁を湯呑みに少量移して、そば湯を加えて召し上がったり、そば湯をそのまま飲まれる方もいらっしゃいます」とのこと。・・・うれしい心遣いだ!
 


テーブルごとに飾られている小花にも癒される


「利久庵」では、今日出していただいたような、昔ながらのおつまみだけでなく、「和風ローストビーフ」(1500円)「嶺岡豆腐(みねおかどうふ)コンソメジュレ掛け」(680円)など、おしゃれな洋風メニューも多くあり、ワインも出している。老舗のおそば屋さんのイメージを良い意味で履えされた。