洋食の街、横浜の料理人に密着「横浜コック宝」相生町「グリルエス」編
ココがキニナル!
横浜の洋食文化をつくった老舗洋食店の料理人に密着取材する「横浜コック宝」。第7回は、横浜一と名高いオムライスを作る相生町「グリルエス」6代目料理長の大武剛(おおたけ・つよし)さん
ライター:クドー・シュンサク
「働かざるを得ない状況だったんです、15歳の時。その時、大好きなコックの道を選びました。何より、お客さんが『美味しかったよ』と声をかけてくれるとね・・・どんなにクタクタでも、がんばれるものなんです」
洋食の町、横浜。変わらない、穏やかで、それぞれの確かな思い出がつまった横浜の洋食の味。そして、その文化。
美味しい、嬉しい、いつもそばにある洋食を支え続けるコックさん。
横浜が日本に、世界に誇る「横浜の洋食」を作るコックさんを、横浜の国宝としてその1日に密着し特集する「横浜コック宝」。
今回のコック宝はこの方
7人目の選出となる今回は、若干15歳でコックの世界に飛び込んだ、横浜一と名高いオムライスを作る、中区相生町「グリルエス」6代目料理長の大武剛(おおたけ・つよし)さん。
その確かな味と、洋食に対しての真摯な姿勢。穏やかな語り口と垣間見えるユーモア。そして何より、料理とその向こう側にある、「美味しい」への、確かな想い。
それでは。
始めたいと思います
「グリルエス」の確かな技術と味
美味しい洋食の判断基準は、好みそのもの。慣れ親しんだ味、思い出の味、イメージの味。その日の気分や、体調によっても、それぞれ。
ただ、ここのオムライスは、それを超えた域にあるような気がする。
創業60年「グリルエス」は中区相生町に
創業当時のままの姿で佇む
午前9時をまわったところ、今回のコック宝、大武さんの1日が始める。
まずは厨房でソース類の火入れや仕込みから入る。
あらためて今回のコック宝の大武さん
1967(昭和42)年生まれ、もうすぐ48歳になる大武さん。中学を卒業と同時に「グリルエス」に入り、コックの道へ。「家庭の事情で、働かざるを得ない状況だったんですね・・・。今日は1日よろしくお願いします」と話してくれた。詳しいお話は、後ほど。
寡黙で穏やかな大武さんはまず店の命である
デミグラスソースとじっくりと向き合う
大きな寸胴鍋をゆっくりゆっくりとまぜる。それからデミグラスソースをベースとしたそれぞれのソースを仕上げる。
ハヤシライスソースにミートソース
フライ用にベイクしたポテト
ごはんは釜で炊き上げ
その合間にはデミグラスソースの調子をみる
いくつもの作業を重ねながら、流れるように仕込みを続けるコック宝。
動きは早いが、その作業はどれも丁寧。あっという間に1時間半は経った。
そしてコック宝は
大きな肉の塊を
鮮やかな手つきで切り分け
ソースに使うスジと
ステーキ用の仕込みを終える
熟練の技。見ていて、その確かな技術に釘づけになる。
そしてまたデミグラスソースと静かに向き合う
午前11時30分になり
グリルエスの営業が始まる
開店と同時に、お客さんが店へ。時折、行列ができるほどグリルエスは人気の洋食店である。それもうなずけるグリルエスのランチの代名詞「オムライス」。
コック帽を被り
素早く調理に取り掛かるコック宝
矢継ぎ早に入る注文を
静かにそして正確に
次々と
仕上げていく
店内は、グリルエスの味を楽しみにしているお客さんでいっぱいになってきた。