検索ボタン

検索

横浜のキニナル情報が見つかる! はまれぽ.com

横須賀市の空き家対策の現状は?

ココがキニナル!

横須賀市で2015年5月に施行された空き家対策特別措置法に基づいた行政による代執行が行われました。どういうものか、今後を含めて気になります。(619さんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

市民からの苦情により行政が動き「倒壊等著しく保安上危険な状態であり著しく公益に反する状態」と判断して行われた。今後、代執行が行われるか未定

  • LINE
  • はてな

ライター:やまだ ひさえ

2015(平成27)年10月、横須賀市東浦賀で所有者不明の空き家が、横須賀市による行政代執行によって解体された。

なぜ所有者不明のまま解体されたのか? また、行政代執行が行われるきっかけとなった法律「空き家対策特別措置法」とは、どういうものなのか調査することにした。

 

横須賀市には
限界集落を中心に市内に空き家が点在している
 

2015年5月に施行された「空き家対策特別措置法」とはどういう法律なのか、国土交通省のHPで調べてみた。

今回の法律が施行された背景に「適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしており、地域住民の生命、身体、財産の保護、生活環境の保全、空家等の活用のための対策が必要(原文ママ)」とある。

2013(平成25)年現在、全国に点在する空き家の数は約820万戸。
もちろん横須賀市でも空き家問題に直面している。



横須賀市の抱える空き家問題



まず、代執行を行った横須賀市役所に行ってみた。

 

横須賀市役所
 

代執行を担当したのは、都市部建築指導課安全防災係。
担当者の松尾啓意(まつお・ひろおき)さんと成瀬賢祐(なるせ・けんすけ)さんにお話を伺った。

 

松尾さん(左)と成瀬さん
 

行政代執行というのがどういうものなのか、まず、教えてもらった。

行政代執行には「略式代執行」と「通常の代執行」の2種類ある。
略式代執行は、過失なくして所有者等を確知できない場合に法令に基づき代執行を行うもの。
通常の代執行は、相手方が居て法令に基づき命令をかけて、行政代執行法に基づき代執行を行うものだ。

今回、代執行が行われた東浦賀の空き家は、20年以上放置されていたとのことだが、「所有者を確知できない略式代執行」にあたる。

 

代執行で解体された空き家 (提供:横須賀市役所)
 

横須賀市の空き家率は、2010(平成22)年時点で約12%。
総務省の2013(平成25)年の「住宅・土地統計調査」によると全国平均が約13%なので、空き家率が群を抜いて高いわけではないが、放置できない状態にあることには変わりはない。

市としても空き家の実態調査を行って現状の把握に努めるとともに、2012(平成24)年10月には、「横須賀市空き家等の適正管理に関する条例」を施行させている。

この条例は、「空き家等が放置され、管理不全な状態となることを防止することにより、生活環境の保全、良好な住環境の維持及び安全安心のまちづくりの推進に寄与することを目的とする。(原文ママ)」もので、空き家の管理や調査、指導、勧告などを行うことができる。

代執行が行われた問題の空き家に関しても、条例施行直後に「屋根や壁が飛んできそうで危険」という苦情が、近隣住民から寄せられていた。

 

市民からの苦情が寄せられていた解体前の空き家 (提供:横須賀市役所)
 

市としては条例や建築基準法に基づいて、登記簿や住民票、戸籍、近隣住民への聞き取りなどで所有者、もしくは管理者を特定しようと調査を行ったが、確知することはできなかった。

また、建築基準法による略式代執行で取り壊しを検討したが、地方税法の規制で「横須賀市で所有する所有者の税情報」を取得することができないため、税情報を取得できなかった。このため、略式代執行の要件である「過失がなく所有者を確知できない」状態にあるとは言えないと判断し、断念した。

その問題点を克復したのが「空き家対策特別措置法」だ。



空き家対策特別措置法で大きく進歩した点



「空き家対策特別措置法」の施行により大きく変わったのが、所有者や管理者を特定するために各自治体が税情報の一部、空き家などの所有者に関する情報のみを取得できるようになったことだ。

今回のケースでは、横須賀市でも建築指導課が税情報を取得したが、それでも所有者の確知ができなかった。そのため略式代執行の要件である「過失がなく所有者を確知できない」を満たしたと判断し「空き家対策特別措置法」に基づき略式代執行を行うことを決定した。

 

「空き家対策特別措置法」に定められた特定空き家のガイドライン
 

「倒壊等著しく保安上危険となるおそれがある状態」であると認定された東浦賀の空き家 (提供:横須賀市役所)
 

今回の東浦賀のケースでかかった費用は約150万円。
費用には解体のための経費や廃材の運搬代金も含まれており、市の予備費で賄われている。

 

予備費から代執行の費用が出ている