横浜で将来予測される津波はどれくらい?
ココがキニナル!
横浜に大津波が来るとどこまで津波が到達するのかな?昔の実績、今回の大津波レベルのものが来たらどうなるのかが気になる。シュミレーションがありますか?(nagatoshiさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
津波は立地上発生しにくいが、最大で平沼橋周辺まで到達する可能性アリ横浜市は元禄型関東地震をモデルとしたシミュレーションを行っている!
ライター:河野 哲弥
先日、「横浜市の災害時の対応や避難場所はどうなってるの?」の記事で、横浜に震災が起こったときの避難場所や備蓄物資の状況を取り上げた。
今回はその続編として、将来予測される津波と過去の被害についてレポートしようと思う。
なお、取材元は前回と同じく「横浜市消防局危機管理室」。対応いただいたのも同勝山課長となる。
本庁舎内にある「危機管理室」入り口
まずは過去の被害から、関東大震災時の津波はどうだったのか
がれきの山が一面に続く、関内方面の様子
(写真は「横浜市市史資料室」所蔵資料)
危機管理室が発行する「横浜市防災計画対策編2005年版」によると、関東大震災は、1923年9月1日午前11時58分に発生。相模湾海溝北東端の深さ15kmを震源とし、地震の規模を示すマグニチュードは7.9となっている。
桜木町駅周辺、浸水被害はなかったようだ
(写真は「横浜市市史資料室」所蔵資料)
当時の横浜市の人口は約45万人。このうち死亡者は21,384人、21人に1人の方が亡くなっている。
行方不明者は約2,000人、重軽傷者は合わせて約1万人となっている。
関東大震災というと、「東京の地震」というイメージを持たれる方もいると思う。
しかし震災に遭った世帯の割合は、東京が73.4%であったのに対し、横浜は95.5%に及ぶ。
これは横浜が東京よりも震源地に近かったためで、横浜の家屋の倒壊は東京の約10倍、火災による宅地の被害面積は1,287万㎡、宅地の総面積の実に約8割に及んだ。横浜の被害の方が割合としては大きかったのである。
では、肝心の津波はどうだったのだろうか。
東京湾に守られた、横浜の立地に注目
勝山課長によれば、津波被害については特に資料に残っていないそうだが、関東大震災の震源地は相模湾北東部であったため、三浦半島が岸壁のような役割を果たし、ほとんど影響がなかったものと思われる。
従って、質問にあったいわゆる「大津波」は発生しにくいと考えられるとのこと。理由としては、横浜市は外洋に接していないことや、仮に海面の隆起があったとしても、東京湾内の水量による影響しか受けないことが挙げられる。
では、考えられる最大のものは、どの程度を予測しているのだろうか。
横浜市が想定している地震は3タイプ
8月31日に策定されたばかりの「ガイドライン」
横浜市では8月31日、防災の日に間に合わせるべく、国の中央防災会議で示された方向性に独自の検討を加えた「津波からの避難に関するガイドライン」を完成させた。これによれば、市が今後30年の間に想定している地震は3タイプあるそうだ。
- 1つは駿河トラフを震源とする「東海地震」で、マグニチュードは8.0を想定。予測される津波高は約1 .0m。今後30年間の発生確率は87%とのこと。
- 2つめは相模トラフ沿いを震源とし、1703年に発生した元禄大地震をモデルとした「元禄型関東地震」で、マグニチュード8.1、津波高は2 .1m、同発生確率は0.001%未満と予測。
- 3つめが相模トラフを震源とする関東大震災型の「南関東地震」で、マグニチュード7.9、津波高0 .4~0 .9m、同発生確率は0.001%未満~2%となる。
赤線が相模トラフ、黄色が駿河トラフとなる
市では、発生確率よりも市民の生命を重視する観点で、このうち最大の「元禄型関東地震」をモデルとしてシミュレーションを行っている。なお、各タイプの地震ごとの「津波浸水予測図」は、神奈川県のサイトで公表されている。
横浜駅近辺の「津波浸水予測図(元禄型関東地震)」
※画像転載と「横浜駅」の表示の加筆は許可済み
このpdfデータは全22ページあり、横浜市街地は19ページ目にある。
黄色く記されている箇所は0.15m未満の浸水が予想される場所で、青色が濃くなるにつれ浸水高も高くなり、最大は5.0m以上を示している。
これを見る限りでは、湾岸沿いの工業地帯や埋め立て地を除くと、神奈川区にある「神奈川公園の一帯」、相模鉄道「平沼橋駅周辺」、そして「横浜駅東口」は津波が到達する可能性がある。
かつては野毛まで津波が押し寄せたようだが、現状の推定ではこの図に示される状況となる。
それにしても「横浜駅東口」が、少し不自然さを感じるほど色が濃くなっているのはなぜなのだろうか。