横浜の港北ニュータウンに残る里山、都筑区「茅ヶ崎公園自然生態園」とは?
ココがキニナル!
自然生態園という里山をそのまま保存・管理しているところがあります。土日祝日しか開いておらず入場は無料。ボランティアで運営しています。どのような方々に支えられているのでしょう(とりりさん)
はまれぽ調査結果!
茅ヶ崎公園自然生態園は、非営利団体のNPO法人によって運営されている自然体験施設。地域住民参加のさまざまな活動を通して、都市の中に奇跡のような里山の風景が守り続けられている。
ライター:結城靖博
東京オリンピックの翌年、1965(昭和40)年に横浜市が発表した「港北ニュータウン計画」。これを機に進んだ都市開発を経て、半世紀余りの間に横浜北部地域はまったく違う風景に変貌を遂げる。
とはいえ、当初から目指していた自然環境重視のまちづくりのおかげで、横浜市営地下鉄ブルーライン・センター北駅、センター南駅周辺は自然と生活環境のバランスが整う住みやすい街として近年人気が高い。
都筑区にある茅ヶ崎公園自然生態園は、まさにそうした地域を象徴する存在だ。今回はその活動に密着し、実態をつぶさにレポートする。
「自然生態園」の周辺――ゼロからの開発の強み
訪れたのは2月半ばの土曜日だった。
自然生態園はセンター南駅から徒歩十数分
センター南の駅前は複合ショッピングビルが林立する
だがちょっと駅から離れると並木が整う遊歩道が続く住宅地に
途中には竹林に目が奪われる古寺・正覚寺(しょうがくじ)も
自然生態園へ向かう道程は、住み心地の良さそうな生活環境が展開していた。
だが開発以前は、辺りは山林と田畑ばかり。民家もほとんどなく「横浜のチベット」と呼ばれていたという。むしろそんなゼロからの開発だったからこそ、これほど整った環境をつくり得たともいえる。
生態園付近の空撮。左は1963年頃、右は現在(写真提供:茅ヶ崎公園自然生態園)
やがて遊歩道を逸れて普通の生活道路を抜けると・・・
茅ヶ崎公園に突き当たる
公園に入ると左手にすぐ生態園を見下ろす場所があった
「自然生態園」の内部へ――まずは保全活動に密着
入場無料なので躊躇なく中へ入る
入り口の案内板
園内の入り口近くにプレハブの詰所があった
だが中を覗くと「園内で作業・イベント中」の掲示が
詰所は御手洗池(みたらいいけ)に面している。
その池の中に男性が2人
声をかけると、「外来種のザリガニとブルーギルの駆除中です」とのこと。
彼らを横目にさらに池沿いの道を進むと・・・
左手に休耕中の田んぼが広がり、その向こうに人々の姿が見えた
畦道を歩いていくと――
田んぼ脇の山の斜面でこんな光景に出くわす
大人も子どもも大小の木の枝を抱えて山を下りてくる。そんな彼らに元気よく声をかけるチェック柄のシャツの女性がいた。彼女こそ、自然生態園の事務局長・赤木光子(あかぎ・みつこ)さんだった。
にこやかに迎えてくれた赤木さん
何をしているのか尋ねると、「昨年の台風で被害を受けた木々を除去し、雑木林の環境を整える保全作業中です」という。
山からきりなく下ろされ積まれていく木の枝
昨年の台風15・19号の影響で神奈川県下の多くの山道が閉鎖されたが、ここもやはり山への立ち入りが禁止された。それがようやく2020(令和2)年1月から解禁となったものの、まだ山中には倒木や折れた枝がたくさん残っているそうだ。
子どもが太い丸太を持って下りてきた
「力持ちだねぇ~」と声をかけると、「全然平気だよ!」と明るい応えが返ってきた。
歩きづらい斜面を、作業の邪魔にならないように上っていく
すると上にも伐木や枯れ枝の山が
ここから下へ降ろしていたのだ。
眼下の急斜面で、折れた枝をのこぎりで細かくしている人たちがいた
見ているだけでも汗が出そうな仕事だ。
のこぎりを挽く方に訊くと、昨年の台風以来、月4回ほどのペースでずっとこの作業を続けているという。
急斜面から積まれた伐木のほうを見上げると・・・
ちょうど外国人の男の子が長い枝と奮闘中だった。
「大丈夫?」と声をかけると、「こんなの片手で持てるよ」と頼もしい。
実際、片手で抱えて山を下りていった
田んぼへ戻ると、リヤカーを押すおじいさんがいた。このリヤカーで山から降ろした伐木をさらに別の場所に移しているらしいが・・・
運び終えた復路のリヤカーは子どもたちの乗り物に変わる
また木を積んでリヤカーを引くおじいさんのあとをついて行く
少し離れた場所で伐木を降ろしつつおじいさんは言った
「ほんとは倒木はそのままにしておいたほうがいい。腐って肥料になるし、虫の棲み家にもなるから」
伐木を降ろしたあと、近くのシイタケのホタギを見せてくれた
ホタギとはキノコの種菌を植える原木のこと。コナラの木じゃないとダメなのだとか。
よく見るとホタギにシイタケの子どもがいっぱいついていた
「今月最後の日曜日から、また菌の植え付けをやるんだ」と、嬉しそうなおじいさん。
ふたたび田んぼへ戻ると、さきほど池に入っていた2人がいた。
リヤカーに乗っていた男の子が興味深そうに覗き込む
男の子が見ていたのはザリガニを獲る罠の「モンドリ」
足元のバケツの中にはブルーギルの成魚1尾とザリガニ2匹
あとはその赤ちゃんが無数に。これが今日の外来種駆除の成果だ。
「冬は多くは駆除できませんが、この時期に少しでも獲っておくことで、暖かくなってからの増殖を抑えられます」と作業をしていた男性が教えてくれた。