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横浜で最も老舗の店ってどこ?

ココがキニナル!

横浜で最も老舗の店ってどこでしょうか。(hondairieさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

創業当時から同じ場所で営業している一番の老舗は、日吉の「天野工務店」。そして関内の「泉平」、戸塚の「中屋」が続く。

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ライター:吉岡 まちこ

横浜のちょっと悲しい結果



日本ほど老舗が多い国はない、と先月のニュースにあった。
韓国銀行の報告によると、世界の創業200年以上を超える企業のうち、その半数以上にあたる3146社が日本にあるという。

そんななかで、昨年夏(株)帝国データバンク横浜支店が、神奈川県民にはちょっと残念(?)な結果の報告書を出していた。
「老舗企業実態調査」によれば、都道府県別にみた企業の総数に対しての老舗の比率は、京都府が1位。2位は山形県、3位は島根県。戦後の接収の影響か、神奈川県はなんと47都道府県中46位! 最下位は沖縄県。ここでいう「老舗企業」とは、明治末期にあたる1912年までの創業をさすようだ。

帝国データバンクの資料で、神奈川県の老舗企業の上位10社を見てみると…。
 


(帝国データバンク資料より抜粋)


8軒中5軒が旅館だ。そして横浜市の企業も7位に入っている!
さっそく調べたところ、この「杉本吉十郎」は、石工具の製造販売の会社で、創業は古いが、東京の日本橋から大正期に入って中区に移転してきた会社だった。

“横浜で最も老舗”というからには、生粋の横浜創業がふさわしいのではないか、と帝国データバンクやネットからも情報を集めた。


日吉に今も続く1834年創業の宮大工「天野工務店」

帝国データバンクに「杉本吉十郎さんにつづく、横浜市内の古い企業はどこか?」と聞いてみた。
すると、二番目の茶卸業会社(青葉区)も築地からの転入だった。そして、三番目に名前が出た港北区日吉の「天野工務店」が、1834年(天保5年)からずっと市内の同じ場所で営業していることが判明!

老舗というと和菓子をつい思い浮かべワクワクしていた筆者吉岡は、なぜ工務店!?と思ったが、ギネスにも載る世界最古の老舗が、日本の「金剛組」(現在は高松建設の傘下)という建設会社だということもあとで知った。「天野工務店」も歴代の宮大工だ。
 


横浜の中心街ではなく、老舗「天野工務店」は日吉にあった


アピタ日吉店の裏手、いっけん普通の事務所。でも奥に作業場と材木置場があるので敷地はかなり広い。そして出迎えてくださったのは、今年で社長就任10年目のソフトな若社長。初代から数えて6代目の直系だ。末っ子で元々コンピュータ開発関係の仕事をしていたが、急きょ継ぐことに。自身は経営に徹し、宮大工を育て上げ棟梁として次々独立させているそうだ。
 


初代宮大工からの6代目直系、天野哲也社長


最近では、上の写真の後ろに映っている川崎市麻生区の香林寺五重塔(昭和62年)や、伊勢原市の浄発願寺三重塔(平成12年)なども手がけたそうだ。

応接室には幕末、慶応元年(1865年)、初代が55歳のとき描いた川崎市中原区木月にある妙海寺山門の図面が飾ってあった。
 


147年前の山門の設計図。残念なことに門は明治時代に焼失してしまった
 

「慶応元年」「矢上村 棟梁 天野」の文字が!


矢上村と呼ばれていたこのあたりは、鶴見川で材木が運べ、しかも徒歩で小杉や溝口、綱島などの町場に働きに出られて便利だったようだ(横浜市歴史博物館談)。
そして、工務店から3~4kmの鶴見区矢向に、なんと初代が天保13年(1842年)、170年前に造った神社が現存しているという。
 


初代が天保13年に建築した、矢向の日枝神社


工務店創業180年の節目に向けて、その神社から大々的な改修工事の依頼があったことに「縁を感じる」と社長は感無量な様子。
ところで気になる7代目は――「子どもはまだ中学生の女の子なんです。将来、結婚相手が興味あって志を継いでくれたら、なんてことになればいいんですけれどね~」。
先のことはわからないが、そうなることを思わず祈ってしまった。