ズーラシアに来たメスのホッキョクグマ「ツヨシ」とは?
ココがキニナル!
オスと間違われていたシロクマのツヨシがズーラシアに嫁入りします。 性別を間違えられた経緯やズーラシアでの暮らしぶりをレポートお願いします(たこさん)
はまれぽ調査結果!
2003年12月に札幌市円山動物園で出生。目視で性別を判断するノウハウが不十分でオスと判断された。ズーラシアの公開は3月19日から
ライター:平田 志帆
2016(平成28)年3月1日、横浜市旭区のよこはま動物園ズーラシア(以下ズーラシア)にメスのホッキョクグマが来園し、3月19日の一般公開を待つばかりとなった。しかし、メスにもかかわらず名前が「ツヨシ」・・・?
あまりにキニナルので、ツヨシのふるさと、札幌市円山(まるやま)動物園に取材を申し入れた。
ちなみにシロクマとは俗称なので、表記はホッキョクグマに統一する。
札幌市中央区に位置する札幌市円山動物園(写真提供:札幌市円山動物園)
目視での性別確認は難しい
回答してくださったのは、飼育展示課の石橋佑規(いしばし・ひろき)さん。
ツヨシは2003(平成15)年12月11日に父デナリと母ララの間に生まれ、元・北海道日本ハムファイターズの新庄剛志(しんじょう・つよし)選手にちなんで名づけられたという。
雪と戯れるツヨシ(写真提供:札幌市円山動物園)
では、なぜ性別を間違えられてしまったのだろうか。
「当時、ホッキョクグマの繁殖は非常にまれでした。当園でも数10年ぶりで、ホッキョクグマに詳しい職員がいなかったのです。そんな中、母グマと引き離されてパニック状態で暴れる子グマの陰部を確認したため、誤った判断につながってしまいました。複数の職員で二重三重に確認していれば、防げたかもしれません」と石橋さん。
母グマのララと一緒に(写真提供:札幌市円山動物園)
ツヨシがメスだったという衝撃の事実が発覚したのは、2005(平成17)年1月に釧路市動物園に移ってからだという。
札幌市円山動物園では、これを機にDNA鑑定での性別判断を導入。その後は嬉しいことにホッキョクグマが次々と誕生したおかげでノウハウが蓄積され、現在は目視で性別を確認できるようになったそうだ。
お礼を言い、性別が間違っていると発見した経緯を伺うため釧路市動物園に問い合わせをした。
もしや、メス・・・?
対応してくださったのは広報担当の古賀公也(こが・きみや)さん。ツヨシはクルミというメスの“お婿さん”として釧路市動物園にやって来た。
オスとして来園したツヨシだが、当初から一部の飼育員より「メスではないか?」という声があったという。たとえばヒグマの飼育に長年携わってきた職員は、お尻の形などから性別に疑問を持っていたそうだ。
ツヨシ、メス疑惑浮上(写真提供:釧路市動物園)
しかし、あくまで婿殿としてやってきたツヨシ。オスであると信じ、クルミとペアリングを試みた。
ツヨシの“元妻”クルミ(写真提供:釧路市動物園)
幸い相性が良く楽しく過ごしていたが、繁殖につながる行動は一切見られない。人間に例えるなら、男女関係ではなく友達同士のような関わり方だったのだ。
さすがにおかしいと思い、釧路市動物園は性別鑑定を実施。麻酔で眠らせている間に陰部を確認し、さらにDNA鑑定も行った。
そして結果、メスだったのである。
ホッキョクグマの性別判断は難しい(写真提供:釧路市動物園)
素人の感覚だと、性別の判断ミスはお粗末に思える。しかし古賀さんによると、目視で性別を判断するには職人レベルの経験が必要だそうだ。
その経験がなければ、ホッキョクグマを静止させ、じっくり陰部を観察しなければならない。しかし子グマに麻酔を打つのはリスクが高く、使用にはかなり慎重になるという。
確かに札幌市円山動物園の石橋さんも、子グマが暴れる中で性別の確認をしたと言っていた。ツヨシを思うがゆえの間違いだったのだろう。
ホッキョクグマの性別判断は、人間のそれとは比べ物にならないほど難しいようだ。
人間なら、性別の判断は一瞬(フリー画像より)