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『今夜、ハマのバーにて。 vol.4』〜「ヨコハマ」とストーリー〜

ココがキニナル!

ホテルニューグランドのバー「シーガーディアンⅡ(ツウ)」。チーフバーテンダーの太田圭介さんと、バー初心者の筆者が毎週1杯のカクテルをとおして、「バー」という場所のたしなみ方を考えます

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ライター:はまれぽ編集部

 

今夜のカクテル:ヨコハマ
 

ウオッカ、ジン、アブサンとベースになるお酒を3つ使うカクテル。オレンジジュースとグレナデン(ザクロのシロップ)を加えて、まるで夕焼けのような赤色が特徴。シティカクテルという、日本でも数少ない都市名がついたカクテルのひとつだ。

「甘くてフルーティーなので飲みやすいですね。もしヨコハマが気に入ったら、ぜひほかのバーでも頼んでみてください。きっとここのが一番おいしいですよ」と笑った「シーガーディアンⅡ」のチーフバーテンダー太田圭介(おおた・けいすけ)さん。それはハッタリではなさそうだ。



カクテル「ヨコハマ」がたどった航路

港町・横浜とともに歩んだホテルニューグランド。そのバー「シーガーディアンⅡ」で真っ赤なヨコハマを傾けるなんて、ちょっとロマンチックにもほどがあると思いませんか。憧れちゃうな。

 

夕陽に乾杯、しちゃったり?
 

「ぼくはね、世界で一番ヨコハマを作っているバーテンダーだと思いますよ(笑)」と太田さん。・・・うんうん、そうでしょうね! 

ヨコハマは、バーテンダーのバイブルともいわれる『サヴォイ・カクテルブック』に掲載されている、世界のスタンダードカクテルのひとつ。
しかし太田さんによると、ヨコハマの成り立ちについて分かっているのは、外国客船の中のバーで生まれたということと、昭和初期には登場していた、ということだけ。謎の多いカクテルなのだ。

われらが横浜の名前を冠したカクテルについて、もっと知りたい・・・。
そう思ったのは筆者だけではなかった。



柳原良平先生と「シーガーディアンⅡ」

柳原良平(やなぎはら・りょうへい)という人物をご存知だろうか。
もし知らないという人がいたとしても、このおじさんを見たことがない人はいないと思う。

 

サントリー「トリス」のキャラクター、「アンクルトリス」の生みの親だ(協力:(株)美術著作権センター)
 

故・柳原良平先生は「アンクルトリス」など数々の作品を手掛けた日本の著名なイラストレーター。そして、「シーガーディアンⅡ」の常連客でもあった。
「先生にはしょっちゅういらしていただいてました。『シーガーディアンⅡ』へもそうですが、お仕事の打ち合わせをうちのラウンジでやっていただいたりとか」と太田さん。

 

1983(昭和58)年に発行された雑誌。まだ「シーガーディアン」だったころ
 

柳原先生が描いた太田さんの似顔絵と、著書へのサイン!!
 

柳原先生は、無類の船好きとしても知られる。船好きが高じて、港に近い横浜へ引っ越したほど。ホテルニューグランドの近所に住んでいた。
船の中で生まれ、横浜の名を冠したカクテル、ヨコハマにも多大な興味を寄せていたんだとか。太田さんとヨコハマの成り立ちについて、推測を交わすこともあったそうだ。
二人の推測はなんともロマンチックだった。

「ヨコハマのレシピをひもとくと、ちょっと違和感があるんです。当時のカクテルでは、ベースとなるお酒はジンならジンだけ、ウオッカならウオッカだけ、がセオリー。それがヨコハマにはベースのお酒が3つも入っている・・・。きっと素人の作品ですね」

 

太田さんがそう言うなら、間違いなくそうなのでしょう
 

ヨコハマは船の中で生まれたカクテルだ。そしておそらく素人が作ったもの。
船で世界各地を回っていたその旅人は、道中、戯れに世界中のお酒を使ってカクテルでも作ってみようかという気になった。
そして、その船は目的地である横浜にたどり着き、港で真っ赤な夕焼けを見た。
グレナデンシロップでその赤色を真似て、「ヨコハマ」と名付けた・・・。

 

太田さん「そんな話で先生と盛り上がりましたよ」。筆者「素敵すぎませんか?」
 



ストーリーでカクテルを楽しむ

ベースのお酒がたくさん入っているわりに、アルコールを強く感じることはなく、思ったよりもずっと飲みやすいんですね。ヨコハマのストーリーを思って飲むと、さらに味わい深く感じます。

「ヨコハマは詳しいことは不明ですけど、カクテルってね、そのひとつひとつに背景があるんですよ。何で作られたのかとかね」

「カクテルにまつわるストーリーを知って楽しむっていうのも、カクテルへの入り口のひとつですよ。味わいも変わってきますしね。ぼくもそうだったかな」

柳原先生と太田さんが紡いだヨコハマ誕生に関する推測は、味だけではなく、また違った楽しみ方を教えてくれた。いつか誰かを連れてきたとき、サラリと話せたらかっこいいかも。

気に入ったカクテルが見つかったら、その隠されたストーリーをバーテンダーに聞いてみようっと。


次回は~「マルガリータ」とカクテルの雑学~をお届けします。


―終わり―
 

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