六角橋商店街にある銭湯「千代田湯」で行われる銭湯寄席はどんな様子?
ココがキニナル!
銭湯寄席が、六角橋商店街内の銭湯千代田湯で行われているようです。ぜひ、レポートをお願いします。(行方不明さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
「二つ目」と呼ばれる真打ちになる前の落語家に、機会を与えようと生まれた寄席。2003年7月から奇数月の第三金曜に開催されるようになった、心温まる寄席だった。
ライター:河野 哲弥
町内の人にとっては、頑張っている息子を応援する気分
まだほのかな薄明かりを残す、下町六角橋。開演の30分ほど前になると、まるで日の入りを開場の合図とするかのように、多くの観客たちが千代田湯へ集まってきた。
この日は50席を用意、中には若い女性の姿も
開発さんによれば、寄席が終わった後は、親しい人たち同士による「囲む会」が開かれるそうだ。取材をするなら今のうち・・・とのアドバイスを受け、来場客にお話を伺ってみることにした。
左から、吉浜さんと、そのお友達の吉崎さんご夫妻
「(三遊亭)好の助さんはドジだから、それが楽しみ」とは吉崎さん。吉浜さんは、「でも、正月の寄席以来9カ月ぶりだから、どれだけ成長しているかも見どころ」と話す。何だか、子どもが出る学芸会で、その両親に話を聞いているような感じを受ける。
一方、どこかでお見かけしたような気がしたのは、この方。
以前「提灯祭」の取材でお世話になった、宮前商店街の小西会長(中央)
宮前商店街の小西会長は、同じ商店街の取り組みとして参考にするため、ときどき聴きにくるのだとか。そんな会長いわく、「銭湯建築の中で『大工調べ』を楽しめたらおもしろいなぁ」とのこと。すっかり役目を忘れ、自分が楽しんでいらっしゃるご様子だった。
開発さんを中心に、三遊亭好の助(左)と、柳家初花(右)
第一回目から前回までの演目が記された「ネタ帳」
さて、本日の主役、両「二つ目」にもインタビューしてみた。
三遊亭好の助は、「普段接することのない、他の流派の噺家さんたちと交流が持てて、刺激になる」との談。柳家初花は、「練習の機会が持てて非常にありがたい。真打ちになるのが、皆さんへの何よりの恩返し」と話していた。
やがて会場にはお囃子が流れ出し、いよいよ開演の時刻となった。
いよいよ二つ目の寄席、はじまりはじまり
ハナを切ったのは、柳家初花。演ずるは、奥さんとおめかけさんの両方の家から閉め出されてしまった旦那の話、「権助提灯」である。
対する三遊亭好の助は、まだ女性経験の少ない若旦那を、町の悪友が吉原へ連れて行く「明烏」を演じた。
柳家一門のご多分に漏れず、どっしりした体格の柳家初花
若旦那役がぴったりハマった、三遊亭好の助
多少のたどたどしさはご愛敬。下町の温かい人情に支えられ、最初はぎこちなかった「二つ目」たちも、次第にエンジンがかかってきたようだ。前半戦では、若旦那役を見事に演じきった三遊亭好の助が、一歩リードといったところだろうか。「うまくなったよねぇ」という声も上がっていた。
ここで休憩を挟み、今度は三遊亭好の助が、カゴ屋のドタバタコントともいうべき「蜘蛛駕籠」を披露。柳家初花は、伝説級の横綱が負け相撲を取った人情話「佐野山」で応じた。どうやら、こういった“聞かせる話”は、柳家一門のお家芸なのかもしれない。来場客のハートを、うまくつかんだようだった。
記念すべき100回公演、2020年を目指して
六角橋の人情が、若き落語家を支える銭湯寄席。このまま公演が続けば、2020年には100回を迎えることになる。現在75歳の開発さん、「それまでコッチが持たないよ」とおっしゃるが、何とか続けてほしいものである。
千代田湯のネタ帳に、また新たな1ページが追加された
もしかしたら、それまでには何人かの「真打ち」が、この千代田湯から生まれているかもしれない。しかし、彼らは「真打ち」になると、もうここには戻れないのだ。そんな巣立ちのはかなさも、この寄席にはある。
体だけでなく、心もじんわり温まる「銭湯寄席」。次の楽しみは、11月16日(金)だ。
―終わり―
千代田湯
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横浜市神奈川区六角橋1-7-20
電話:045-432-2783