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横浜の歴史の重みが! 野毛にある100年以上のレンガ作りの蔵を改築した隠れ家的なKULAKULADiningとは?

ココがキニナル!

野毛方面に隠れ家的で築130年余のレンガ造りの蔵を改築した「KULA KULA Dining」。レンガや石造りは意図があって残されている?蔵と横浜の歴史を重ねて調査を(ころすけさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

質屋の蔵として明治33年に建設。頑丈なレンガ造りで空襲にも耐え増改築をくり返し現在に至る。店内は当時の趣きが残り地産地消の料理がいただける

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ライター:細野 誠治

横浜で100年、あり続けるものを見る



ではキニナルを解決していこう。お店の歴史について伺った。
「この場所に蔵が建ったのが1900(明治33)年。元は、横浜の発展に尽力した上保龜次郎(うわぼ かめじろう)氏の質屋の蔵だったそうです」
 


蔵の持ち主だった上保龜次郎氏。(横浜市史料室蔵、横濱市誌より)※提供=KULA KULA Dining


地権者は上保氏ゆかりの方だそうだ。

倉庫ではなく、質屋の蔵だったのか!
なぜ質蔵がレンガ造りかは分からないが、蔵は頑丈に建てられるもの。レンガ造りの蔵なんて、横浜らしいじゃないか。

野毛に建って今年で114年。19世紀の最後の年に生まれ、そして20世紀をすべて見てきたのだ(キニナル投稿では130年とあったが、正確には114年)。

この年は日本で初めて長距離電信電話事業が開始され、第4次伊藤博文内閣が発足した年でもある。

当時の横浜の街の灯はガス灯で、薄明るい照明にぼうっと浮かぶレンガの壁は、さぞや情感あふれる風景だったんだろうな。
 


レンガを照らす灯。今は電気だ


しかし1945(昭和20)年、5月29日。蔵は半壊してしまう。横浜大空襲だ。横浜、そして関東で行われた空襲は主に“焼夷弾”によるものだった。

一説では当時アメリカ軍は焼夷弾で関東を焼き払い、更地になった土地を接収するため、火災を引き起こさせたと言われている。だが、レンガ造りのものは火に強い。残ったのだ。
 


野毛山から撮られた空襲直後の写真。(横浜市史料室蔵、横濱市誌より)※提供=KULA KULA Dining


中央、印の部分がKULA KULA Diningのレンガの蔵。

当時の貴重な写真をお借りした。中央に見えるのがここ、KULA KULA Dining。

右にある大きな建物は当時の横浜中税務署(現在は“横浜にぎわい座”が建っている)。そして彼方、地平にそびえる3つの塔が、今も現存している“横浜三塔”(キング=神奈川県庁本庁舎/クイーン=横浜税関/ジャック=横浜市開港記念会館)。

火災によって更地化し、接収を目論んだもののレンガ造り、石作りの建築物は耐えた。
ハマの三塔と同じく、戦火を耐え切ったなんてハマっ子として嬉しくなる!
 


店の2階部分。当時と変わらぬレンガに触れることができる


やがて終戦。辺りにあった木造建築はすべて消失。残った蔵はそのまま増改築を重ね続けて現在に至っている。戦後復興時にはパブ「ローヤル」として、64 年間、その後「ACTION(アクション)」という名のバーへ。そして21世紀。前出の2010年にKULA KULA Diningへと変貌していった。

「当時は2階部分だけでの営業だったんです」と齋藤氏。1階部分がテナントを引き払ったことを受け、1階も店舗として拡張を行ったという。このリニューアルが2013(平成24)年の3月。できたばかりの店でもある。
 


少し急な階段。2階フロアと繋げるために作った


「ちょうどリニューアルの時に、打ち付けられた壁板を外したらレンガの壁が出てきたんですよ」
齋藤氏のこの言葉が、1階のバーカウンターの壁だ。
 


蔵が、息を吹き返したんじゃないかな


そろそろ蔵のなかへ入ってみようか。
 


階段を登ってすぐの2階部分


こちらはテーブル席。ここは後に増築された部分だ。

そして入口部分から向かって奥が、蔵の内部にあたる。主に大人数での利用に使われている。

 

大テーブルが3つ。かなりのゆったりスペース
 

趣きある装飾いっぱい
 

天井の梁(はり)も、当時のままの姿で残る


ここでちょっと気になった耐震のことを質問。

「1981(昭和56)年に施行された新耐震基準ですよね。81年以降に建てられたものが対象なので、ウチは対象外です。
ただ、リニューアルの時に入った大工さんからは、国の基準なんかよりも、よっぽど強くできていると言って頂きましたし、3・11(東日本大震災)のときもビクともせずに、グラスもボトルも1つも割れなかったんですよ」

それはすごい!

「これ、見て下さい」と指された先を見ると・・・。
 


柱の間隔がひどく狭い。太さも数も基準値以上の造作


大切なものを守るための蔵。面目躍如だ。