石川町の裏通りに美味しい和食の名店があるって本当?
ココがキニナル!
石川町の裏通りに、道場六三郎のサインが入った暖簾を出している「かわかみ」という店はどんな店でどんな料理が出るのかが気になります。/石川町にあるSHIMOMURAがキニナル(bjさん/619さん)
はまれぽ調査結果!
石川町にあるおいしい和食の店、2軒。どちらも高級そうで入りづらく感じるが、実際に行ってみると思っていたよりリーズナブル。
ライター:吉澤 由美子
SHIMOMURA
次に向かった「隠れ家 心和食(しんわしょく) SHIMOMURA(シモムラ)」は、石川町駅から川沿いを亀の橋交差点まで進み、川沿いから1本入った道にある。
なんのお店かわからないながら、和テイストの外観
細い銀色のパイプが並ぶ間から笹の葉がのぞくスタイリッシュな建物の入口をのぞき込むと、小さなガラスのプレートに控えめな店名が見て取れる。
小さな店名のプレート。蕪のマークは中学校の時に店主がお世話になった美術の先生に描いてもらったそう
中に入ると、廊下沿いに4つの個室が並んでいる。
和モダンな雰囲気の廊下。突き当りに厨房がある
ここは、気鋭の料理人、下村邦和(しもむら・くにかず)さんが和食をベースにした創作料理を出すお店だ。下村さんは、日経レストラン主催全国メニューグランプリのグランプリやベストレシピ賞、ぐるナビ主催BEST OF MENU優秀賞など、数々の受賞歴を持っている。
入口横に、トロフィーやメダル、レシピ本などがずらりと並ぶ
「いつも料理のことを考えています。いい素材を見ると、これとこれを組み合わせたらというアイデアがどんどん湧いてきます。試行錯誤してブラッシュアップし、誰も食べたことがないおいしさを作るのが習性のようになっているんです」と下村さん。
そんな下村さんに料理人になるきっかけを伺ったところ「実は中学生の時は悪かったんです」と意外な答えが返ってきた。
品川で生まれ、育ったのは川崎市。中学に入って喧嘩ばかりするようになった。ある日、母がいつも周りの人に「本当は優しい子なんです」と詫びていたことを知り、一念発起。もともと好きだった料理の道に進んで、母が誇りに思うような料理人になろうと心に決めた。そこで、中学を卒業して横浜にある調理師学校に通い始めた。
「子どものころから料理が好きで、スイーツのオリジナルレシピを書き溜めていました」と下村さん
「その調理師学校には横浜と川崎の悪いのがかなり集まっていて、最初のころは一触即発でした。でも、いっしょに学んでいくうちにお互いを認めるようになっていきました。今も付き合いのある仲間がいますね」と下村さん。
卒業した後は、早く一人前になりたいと住み込みで板前修業。毎日4時間も眠れないほど忙しく厳しい修行を続け、なんと21歳で料理長にまで登りつめる。その後、もっと料理人としての幅を広げたいと、改めて先輩の元で修行を積み、神奈川県フグ包丁師免許、日本料理専門調理師免許、調理技能士免許を取得し、オリジナルの新しいレシピを次々に生み出していった。
その後、いくつもの店で料理長を務め、関内本店「月」・横浜「月」・関内「蘇」の総料理長就任後、2009(平成21)年、元町に「SHIMOMURA」をオープンさせ、オーナーシェフとして独立。事情があって石川町駅の反対側に店を移したが、独立して6年になった。
「自分のように悪かった者でもここまでやれるようになる。そういうことを今の若い子たちに伝えたいと思っています。料理はとても厳しい世界ですが、喰らいついてきてくれるなら、知っていることを全部教えたい」と下村さん。
下村さんの才能に惚れて門を叩き、現在修行中の西野伸明さんと
また、下村さんは横浜市商店街総連合会主催の『ガチ丼』でオリジナルの丼レシピを提供するなど、横浜を盛り上げたいという気持ちも強い。「東京のようにやる気のある若手のシェフや料理人が集まってボランティア活動などを行っていけたらと思っています」と語る。
こんなに熱い心を持った下村さんが作る料理について、次でご紹介。
受賞した代表作2品はセンスが光る創作料理
「自分の料理は、イタリアンやフレンチなどの素材や手法を使いますが、あくまでも和食」そういう下村さんが作ってくれたのは、受賞した代表作2品「雪のしずく」「黒豚の黒煮」ともう1品「土鍋炊き込みご飯」だ。
白くとろりとした「雪のしずく」
「雪のしずく」にかかっているのは、吉野葛で練ったとろとろのクリーム。中には、甘辛く煮た豚肉をバターたっぷりのマッシュポテトで包んだものが入っている。
「豚肉をマッシュポテトで包んだ料理はもともとあったのですが、なにかもう一工夫したら新しい世界が広がるような気がしていました。たまたま杏仁豆腐を作っている時に、こういうとろりとしたクリームをかけてみたら面白いかもしれないと思いついたんです」
吉野葛でとろみをつけたクリームをかける
ひと匙(さじ)すくって口に入れると、じゃがいもの香りと味、バターや生クリームのコク、パンチのある豚肉の甘辛さが混然一体になる。濃度があるのに口の中でさっとほどけるような感触は吉野葛ならでは。確かにこれは新しい和食だ。
しつこい匂いが全くない、上品な一皿。上に乗った半熟の黄身は軽くスモークされている
これは「せっかく黒豚を使っているのに、肉自体の見た目が同じなのは残念なので、黒豚で黒い料理を作ってみたいといろいろ試してできた料理」だそう。
最終的にたどり着いたのはヒジキ。しかもヒジキで豚肉を煮ると臭みが消えて、豚肉本体のおいしそうな香りが残ることに気付いた。和食の料理人が豚の角煮を作る時には、おからで煮るなどで臭みを抜くが、それではいい香りも抜けてしまう。ヒジキと豚肉は一石二鳥の食い合わせだったのだ。
炊き立てで供される。具は旬のもの
テーブルに運ばれてきた土鍋のフタを開けると、ふわっといい香りが部屋中に広がる。取材時の具はホタテ。おこげもあって箸が進む。炊き込みご飯は、1人前1合。もし食べきれなかった場合は、おむすびのお土産にしてくれるそう。
実は「SHIMOMURA」にお品書きはない。その時々に入った素材に合わせてメニューを組み立てるからだ。その代わり、予約の時にはアレルギーの有無だけでなく、食材やどんな料理法が好みかをしっかり聞く。
今回紹介頂いたメニューはランチコース(2600円:季節の先付・野菜と旬の魚のカルパッチョ・雪のしずく・黒豚の黒煮・土鍋炊き込みご飯・5種盛デザート)で提供しているとのことなので、この料理を試したいならランチがおすすめだ。そのほかにランチコースは3種類あり、ディナーコースも3900円から用意されている。
1階の個室は4部屋あって16席。ほかに2階にも個室が2つあり、そちらは20席
「オリジナルのおいしい料理だけを出していきたいので、うちでは食べられない飾りをお皿に置きません。料理だけで勝負するのが自分の役割だと思っています」と下村さん。徹頭徹尾、料理にかける想いが熱く伝わってくる「SHIMOMURA」だった。
取材を終えて
石川町にあるおいしい和食の店、2軒。どちらも高級そうで入りづらく感じるが、実際に行ってみると思っていたよりリーズナブル。自分へのご褒美で利用したい店だった。
どちらのお店も人気があるので、週末などは予約が取りにくいこともあるとのこと。ただし「この週でいつでも」という風に指定したら、けっこうすんなり予約できることがあるらしい。
「ザ・和食」の「かわかみ」、新しいおいしさと出会いたいなら「SHIMOMURA」。タイプは全く異なるとはいえ、どちらも魅力的な和食店だった。
― 終わり ―
取材協力
石川町かわかみ
住所/中区石川町1-18-3 長谷川ビル1F
電話/045-651-1127
営業時間/17:30~22:30(L.O)
週末のみ予約制でランチ(11:00~14:00)あり
(第2日曜日はランチのみ営業で夜はお休み)
定休日/月曜日
1品料理500~2600円
夜のコース 全8品 6500円(税込)
(前菜・お椀・お造り・焼き物・煮物・肉料理・食事・デザート)
隠れ家 心和食(しんわしょく) SHIMOMURA(シモムラ)
住所/中区石川町3-107
電話/045-263-8989
営業時間/
ランチ11:30~14:00
ディナー18:00~22:30
ラストオーダー22:00
コースラストオーダー21:00
定休日/月曜日
ランチ2600円~、ディナー3900円~ご予算に応じてご用意
公式サイト/http://www.shimomura-kunikazu.com/
terurunさん
2017年09月26日 04時02分
先日評判を伺っていたSHIMOMURAさんで食事をすることができました。友人の誕生日祝いで伺ったのですが、料理が出てくるたびに友人と二人でため息が出ました。見た目の美しさだけでなく一つ一つの素材が思い切り活かされていて、本当に美味しくいただけました。それぞれの料理に一手間〔もっと❓〕かけたソースもとても相性よくこんな組み合わせがあったんだと驚きの連続でした。最後の炊き込み御飯は秋の香り満載で幸せな気分になれました。和食だったのでデザートは期待していなかったのですが、誕生日プレートも工夫を凝らしていただいていて、大満足な1日でした。
ushinさん
2015年04月06日 19時42分
いつも前を通っていて、改めて「ああ、そうだったのか!」と関心・感心。ところで、この通りって、細くて一方通行とはいえ、れっきとして自動車も通る道路でありながら、歩行者がいつも道のど真ん中を封鎖して歩いているんだよね・・・アタマおかしいの?
とーたすさん
2015年04月06日 11時34分
SHIMOMURAさんは井土ヶ谷にあるラーメン屋も結構美味いのですよ。