横浜市の産業廃棄物処理の現状は?
ココがキニナル!
横浜市が産業廃棄物の処理に関する指導計画を策定したけど、市の産廃に対する取り組みはどうなっているの?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
循環型社会を実現するため安全・安心な廃棄物の処理を進める。同時に万が一の災害で発生した廃棄物を含めて仮置きできる場所の確保なども進める
ライター:はまれぽ編集部
3本柱と26の施策
第7次計画の素案では「持続可能な循環型社会の構築」を達成するため「循環型社会の推進」「安全・安心な廃棄物処理の推進」「災害廃棄物対策への取組」という3本の柱を掲げ、それに基づいて計26の具体的な施策を展開する。
26の施策の中でも「重点施策」としている一つがPCB廃棄物の処理。政府100%出資の特殊会社でPCB廃棄物処理を行う「中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO=ジェスコ)」の東京施設を活用する。
JESCOは全国5ヶ所にある(JESCOホームページより)
2012(平成24)年に改正された「ポリ塩化ビニフェル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)」では、2027年までに日本国内にあるすべてのPCB廃棄物を処理するという期限を設けている。
これまでは東京都内のPCB廃棄物処分が優先されていたが、今年度からは横浜市内に残るPCB廃棄物の処理枠が空くといい、湯川係長は「危機感を持って取り組む」としており、1日も早いPCB廃棄物の処理を目標としている。
また、1950年代半ばから1970年代半ばまで続いた高度経済成長期に建設された建物について、老朽化などの問題から2028年ころに解体工事の件数がピークになると予測している。
建物も老朽化し、解体件数も増えると予測(写真はイメージ)
解体工事で出た廃材などを仮置きしておくことは必ずしも違法とは言えないが、中小・零細企業などが資金繰りに困り、処理ができずにそのまま放置していくケースも少なからずあるという。
「仮置き」のまま廃材を放置するケースも(写真はイメージ)
湯川係長によると、この問題は市街化調整区域が集中する市西部で顕在化しがち。このため、事業者に対して指導するだけでなく、事業者が処理できなくなった場合には仮置き場の地主に責任が移ることもあるため、不動産業者などと連携して注意喚起をしていく。
重点施策では、新たに地震や洪水などの災害で発生した廃棄物を一時的に保管するための仮置き場を市内に確保することを目指す。横浜市が現在想定している最大規模の地震が発生した場合は1670万立方メートルの災害廃棄物が出ると想定している。
東日本大震災では大量のがれきが街にあふれた
これは30年以内に70%の確率で発生する「東京湾北部地震」で発生すると想定されている362万立方メートルや、2015(平成27)年9月に茨城県常総市を襲った鬼怒川水害の20万~30万立方メートルといわれる廃棄物を大きく上回る量だ。
災害廃棄物を仮置きするにしても、傾斜があると崩壊の可能性もあるため市が管理する都市公園や市有地がメインとなるが「仮設住宅など、ほかの用途との関係もあり、利用できる土地は限られている」と湯川係長は言う。そのため、民間事業者との連携などを模索していく。
公園などを活用しても最大被害の3分の1程度しか受け入れできない
湯川係長は「産廃の発生量もだが、最終的には発生量に対する最終処分率を引き下げ『持続可能な循環型社会』を実現することが目標。そのために社会的・自然的な諸条件に合わせた施策を取っていきたい」とした。
市は、2015年10月1日(木)から11月2日(月)まで第7次産業廃棄物処理指導計画の素案に対する意見公募を行う。今後は市民の意見を踏まえて2016年1月をめどに内容を固め、同年4月から新たな計画を実施していく。
取材を終えて
言葉が一人歩きをして、「産廃=悪者」のようなイメージにとらえられがちだが、モノを作る過程で生み出されるものは「産業廃棄物」となる。
豆腐を作る際に豆乳を絞り切った、いわゆる「おから」は産廃になるのかという点を争って最高裁までもつれた判例もある。この裁判では、おからは廃棄物に当たると判断されたが「排出状況や取引価値、所有者の意思を総合的に判断することで廃棄物には当たらないケースがある」という指針も示された。
おからは「産廃」(フリー素材より)
横浜市が現在進めている第7次計画の素案は、産廃の排出量を抑えるリデュースに重点を置いたものとなっている。
排出量削減については、一義的にはモノを扱い、それで利益を上げる事業者が考えるべきことではあるが、無駄なモノを買ってごみを増やさないなど、市民レベルでもできることはある。
今後5年間の横浜の産廃行政の基本となる計画。一読して意見を述べてみてはいかがだろう。
―終わり―
横浜市資源循環局産業廃棄物対策課
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