相鉄線の作業車両、「じゃりべー」とは?
ココがキニナル!
相鉄線天王町駅近くのいつも同じ線路上に【じゃりべー】なる車両があります。名前から察するに砂利運搬用?いつ動いているのか、他にも脱力系の愛称を持つ車両があるのか調査お願いします。(たこさん)
はまれぽ調査結果!
じゃりべーは砂利やレールを線路上の作業現場に運搬するための車両で、稼働は原則終電から始発までの数時間のみ。じゃりべーには兄弟がいた。
ライター:すがた もえ子
じゃりべーはどんな仕事をしているの?
じゃりべーたちの作業車両は、基本的に夜間しか運行・作業しない。動くのは終電から始発までの間に限られ、平均すると月に10日前後の活動となる。担当する仕事は線路にしきつめられている砂利やレールの運搬が主な作業になる。
夜間作業のレール交換の様子
レールは分かるが、砂利ってそんなに頻繁に交換が必要なんだろうか? 富田さんに聞いてみると「それが必要なんですよ」というお返事が。線路に敷き詰められている砂利は、レールを支える重要な役目を担っているという。
レールを支える砂利
毎日列車が運行し、日々衝撃を受け続けている砂利は常にメンテナンスが必要。摩耗して砂利の角が丸くなってしまうと、レールを支える支持力が無くなってしまうからだ。
レールも同じように摩耗すると欠けたり、ひどい場合は折れたりというトラブルに繋がってしまう。
砂利もレールも一定期間で交換が必要になってくる
砂利の交換は電車の運行が終了した夜間、線路から古くなった砂利を掘り出すところから始まる。掘り出した砂利を空のコンテナのような箱型のダンプトロに積み込み、運んできた新しい砂利を敷き詰めていく。この作業はショベルカーなどの機械で行われるが、昔は全て手作業で行われていたというのだから頭が下がる。
機材を使う現代でも、一晩で入れ替えができるのは約15メートルほどだという。
作業はよほどの暴風雨でなければ原則行われ、雨でも関係ない
続いて、レールを交換する作業方法を、保坂さんが教えてくれた。
「レールの長さは1本25メートルです。これを動かす時は3人で同時にクレーンを操作するんですが、呼吸を合わせるのが大変です」と保坂さん。
1本25メートルあるレールは「60キロレール」と呼ばれていて、このレールは1メートルあたり60kgあるのでこの名前が付けられている。新幹線に使われているものと同じレールになるという。昔は「30キロレール」という軽いものを使用していたそう。
またじゃりベーは建築限界測定といって、じゃりべーに定規(白い羽根のようなもの)を取付け走行し、建築物などの構造物が列車の走行をさまたげていないか、目視で確認するという作業も行っている。
建築限界用のパーツを装着したじゃりべー
建築限界とは、沿線の建物などの構造物と車両との間に空間を確保し、その範囲を侵して構造物を設置してはならない空間範囲のこと。定期的にこの範囲を点検し列車の安全運行に繋げているのだ。
じゃりべーに乗ってみた
普段は作業担当の方しか乗り込めないじゃりべーの中へ乗車させていただいた。
車内には前方と後方に運転席が2ヶ所
こちらが後方側運転席
これは作業によって前後どちらでも進むことができるようにとのこと。
安全のため、どちらかの運転席のリセットボタンで運転を解除し、使用する側の運転選択ボタンを押さなければ運転ができない仕組みになっている。
ボタンで運転切り替えを行う
そのほか、深夜作業ならではの装置も付いている。踏切に近づけばセンサーが作動して踏切の音が鳴ってしまうが、踏切近くで作業を行わなければならない場合、周囲の環境に配慮して、車輪に流れる電流を切り、センサーが反応しないようにしているそうだ。
短絡ONで電流が流れ踏切音が鳴り、絶縁ONで音が鳴らなくなる
定員は5人。乗客を乗せるものではないので、普通自動車免許を持っており社内の研修を受ければ運転をすることができる。基本は普通電車と同じ仕組みになっているが、電気ではなくディーゼルエンジンで動いている。
じゃりべーたちは軽油で動く
「じゃりべーを運転する上で大変なことは、本線の運行に支障を及ぼさないようにするということですね」と保坂さん。
レールや砂利を運搬する際の荷崩れやエンジントラブル、脱線や踏切にて第三者(車など)と接触するなど、考えられるトラブルはいくつもあるのだ。
じゃりべーたち4兄弟のほかにも、「でんゾウくん」というキャラクターもいる。陸軌(りくき)両用架線作業車といって電車に電気を送る電線などの点検・修理を行う作業用の自動車である。
でんゾウくんはゾウがモチーフ
通常は自動車として道路を走っているが、線路の上も走れるようゴムのタイヤ以外に鉄の車輪も装備している。でんゾウくんもじゃりべー同様に、活動するのは夜間だ。
電線などの点検・修理を行っている
終電後の線路上を鉄の車輪で電車と同様に走らせ、始発電車までの限られた時間帯の中で設備の点検・保守を行う。また、高いところでの作業もしやすいよう、車両の上部にある作業台が上下可能となっている。
こちらは新型マルチプルタイタンパー「ぷるたん」
新型マルチプルタイタンパーとは、レールの歪みを矯正し、電車の乗り心地を良くするための保守用車両。
ぷるたんの全体像
相鉄線ではさまざまなキャラクターの作業車両たちが、終電が終わった深夜から始発電車までの間に、日々の安全を確保するために働いていた。
取材を終えて
夜間対応は難しいということで今回はじゃりべーが動く姿を見ることはできなかったが、線路に敷かれている砂利に、レールを支えるという大事な役目があり、摩耗するために入れ替えなどが頻繁に必要だということを今回の取材で初めて知ることができた。
こうした日々のメンテナンスの上に、世界最高水準ともいわれる日本の電車の運行があるのだなぁ、とあらためて思った取材だった。
―終わり―
たこさん
2016年06月15日 07時56分
記事にして頂きありがとうございます。まさか兄弟がいるとは。
セイラーさん
2016年06月14日 17時45分
もともと相鉄線は相模川で採った砂利を運ぶための鉄道だったんですよね。だからじゃりべーが本流・本業なのかも。ちなみに、うちのおふくろは「じゃり鉄はいつから人を乗せるようになったんだい?」と今でも言ってます。
ホトリコさん
2016年06月14日 13時00分
「ぷるたん」は西横浜駅の近くで見かけました。