半分白いキュウリ!? 幻の名産品を栽培する「湘南きゅうり園」に突撃!
ココがキニナル!
相模半白胡瓜って、どんなきゅうり?かつての名産品だそうですが、取材エリア内の現状を取材してください。キニナル。(にゃんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
昭和中期を境に栽培されなくなった調理にも適したキュウリ。市が把握する栽培農家は「湘南きゅうり園」のみ。買えればラッキーの非常に珍しい品種
ライター:福原 麻実
「相模半白節成」の現状は?
「相模半白節成」が栽培されなくなった理由は食の欧米化だけではなく、栽培する側の事情もあった。「相模半白節成」は太く大きいため中心部に「す」が入りやすく、また現在の品種のキュウリの方が病気への耐性が高かったのだ。
主力品種の交代は、生産者と消費者、両方のニーズの結果だったといえるだろう。
平塚市は2011(平成23)年に「平塚キュウリプロジェクト」と称して「相模半白節成」を蘇らせようと試みたが、「相模半白節成」を栽培している農園はごく少数。というよりも、平塚市の農水産課に問い合わせたところ「種は普通に販売されているようなので、栽培はほかでも可能でしょうが」と前置きしつつも「栽培している農園として把握しているのは『湘南きゅうり園』だけ」という回答だった。
大きなビニールハウスで温室栽培を行っている「湘南きゅうり園」
吉川さんが「湘南きゅうり園」を継ぎ、就農したのは2011年。それまでは種苗会社で勤務していたという。「相模半白節成」を育てている理由は何だろう?
「ここ平塚の伝統野菜である相模半白節成を作ることでPRになればと思い作り始めました。平塚市は神奈川県で初めてキュウリが栽培され、今も収穫量が県全体の25%を占めます。この伝統野菜の復活をきっかけに、そんなキュウリの産地としての平塚市を知ってほしい」と吉川さん。食感の良さなどが魅力の「相模半白節成」だが、何年も作られていなかったため、品質の安定など、課題は多い。
「キュウリは価格でしか差別化が図れない」という言葉に、切るだけで簡単に食べられるからと適当に買っていたなあ、なんて己を振り返って考えさせられる。単一品種が市場を独占することの弊害だろうか。おいしいものを食べたくて野菜を買うのだから、今後は産地や品質にも、もっと目を向けよう。
ここで「相模半白節成」について、ある疑問が浮かぶ。
「現行品種の味に慣れた、現代の人が食べてもおいしいのかな」
と、いうわけで、その「相模半白節成」を食べてみることに。
いただいてしまいました。ありがとうございます
『47都道府県・地野菜/伝統野菜百科』(丸善出版)という本には「相模半白きゅうりの塩回し」なるメニューがおすすめの食べ方として掲載されている。要は、板ずりして切って塩を振り、洗って冷やして食べるということだ。
そのまま食べられるのがキュウリの良さではあるが、もう少し、記事向けに一手間かけたいな・・・。
おすすめの調理法を試してみた
そう思い、吉川さんにおすすめの調理法を尋ねたところ「カレー」という回答。キュウリは最後に入れて、あまり長く煮こまないのが良いそう。夏野菜のカレーって確かにあるけれど、キュウリとカレーが結びつかない。
早速、作ってみることに。
断面。種がしっかり目立つという印象
そして・・・
カラーピーマンと卵の間にあるのが「相模半白節成」
通常のとろみのあるカレーを作る予定が、スープカレーになったのは、ごく最近、筆者宅の幼児が通う保育園の昼食にカレーが登場したと気づいたからである。
実は予定していたよりも煮込み時間が長くなってしまったのだが、それでも食感は残っていた。食べ慣れた生のキュウリの食感ではなく、でもズッキーニよりもしっかりしている。
妙な例えだが、長めにじっくり煮込んだニンジンの食感に近いかも。
しっかり食感でありながら、キュウリ特有のさっぱり味。カレーにもよく合う。作り手である吉川さんのおすすめだけあって、これは良い組み合わせ。
簡単な浅漬けも作りました
漬ける前に、まずそのまま食べてみたが、ほんのりと苦味がある。そして慣れ親しんだ普通のキュウリよりも、噛んだときにやや硬いというか、密度を感じた。キュウリってやっぱり瓜なんだ、と再認識する。
漬けてみると、もともと漬物に使われていたキュウリだけあって、普通のキュウリを漬けた時よりおいしく仕上がった(と思う)。漬けてもシワシワにならないし、2日後に食べてもキュウリそのものの瑞々しさが失われていなかった。瑞々しさには水分だけではなく、密度も必要なのだろう。
「相模半白節成」の食べ方として、ほかに天ぷらもおすすめだという。
天ぷら、ですか?(フリー画像より)
見栄え良く揚げられる自信がなくて今回は断念したが、興味深い食べ方である。揚げ物にできるなら、はさみ揚げにするとか、バリエーションも広がりそうだし。
取材を終えて
吉川さんいわく、「相模半白節成」は、JA湘南大型農産物直売所「あさつゆ広場」などで見つけることができるかもしれないので、ぜひ探してみてほしい。今はまだまだ「売っているのが見つかればラッキー」なくらい珍しいキュウリだが、調理にも適したキュウリとしてもっと流通すれば「相模半白節成」が「かつての名産品」ではなく「名産品」になる日もくるかもしれない。
―終わり―
取材協力
株式会社 湘南きゅうり園(旧:有限会社 城島園芸)
住所/神奈川県平塚市城所292
電話/0463-54-1183
参考文献
『日本の野菜文化史事典』(青葉高著)八坂書房
『47都道府県・地野菜/伝統野菜百科』(成瀬宇平,堀知佐子著)丸善
ばにらぷりんさん
2016年07月14日 16時19分
絵もカレーも上手~♪ 平塚市や伊勢原市は星とかハートの形の胡瓜もあるみたいです。写真で見たらほんとにかわいいんですよ。そういう珍しい野菜やここにしかない野菜を育てても、農家さん達は発信までは手が回らないでしょうから、はまれぽでこうやって取り上げられるのはいいですね。
八景のカズさん
2016年07月14日 06時41分
神奈川県固有種の野菜の中でこのきゅうりはホント見かけない。福原さん絵がお上手です。カワイイ。