【横浜の名建築】当時最先端の防災設備を持った赤レンガ倉庫
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第14回は、赤レンガ倉庫。今年100周年を迎えたこの建物は、創建当時最先端の防災設備と洗練された機能美を兼ね備えていた。
ライター:吉澤 由美子
レンガや瓦、華奢な鉄骨などが織りなすクールな機能美
まず、レンガは4種類のものが使われている。
材質は同じだが、焼かれた状態に差があり、土台は「焼過」、地上階表面は「磨き」、室内「並上」、そして窓台にはやや色の濃い「鼻横黒」。
黒っぽく焼けたレンガは防水性が高いため、水がかかりやすい土台や窓台に使われた。
土台と窓の下部に黒っぽいレンガがあることで引き締まった印象
レンガの大きさは通常より一回り大きいサイズ。2号倉庫だけで、318万個ものレンガが使われている。
リニューアルに際し、破損したレンガは新しいレンガと交換された。
現在の日本のレンガは精度が高すぎて創建当時のレンガとギャップが激しくなってしまうため、使われたのは中国製のレンガ。
新旧のレンガを見比べるのも面白い
微妙な形の違いやムラ、色と表面のなめらかさの差が、微妙な陰影と暖かみを与えている。
強度が弱い中国産レンガの補強のため、12万個のレンガの間に目地として粘度が高い樹脂を使用し、構造上の耐震性を保った。
次に、倉庫の外観に和洋折衷の美しさをもたらしている瓦。ふたつの倉庫で合計14万枚ほど使われている。
創建当時の瓦には「三州 菊 撰製請合 横濱港四 安井仕入」といった刻印が入っていた。
リニューアル時に瓦はすべて交換されたが、その際も三州瓦を使用している。
瓦一枚のサイズは普通よりやや小さめ。長さ28cm×幅27.5cmという大きさで、現在の64版に相当する。
64版とは、1坪に64枚の瓦を置けるサイズのこと。
美しい瓦と装飾的な避雷針。三角の面を持った切妻壁がアクセント
屋根には、この倉庫で唯一装飾的な避雷針がある。鋳造の台座と鋳造の飾り棒は約3mだ。
さらに、エレベーターや天井なども見逃せないポイント。
倉庫に付属するものでは最古と伝わるエレベーター
エレベーター前には機械と説明のプレートがある
天井の波型鉄板
屋内の防火壁にある吊下げ式引き戸。特徴的な戸車が印象に残る
起重機や滑車などが入っていた機械室があった2号倉庫3階上部の扉。機械類は撤去済
2号館3階から眺められる鉄骨の梁は、大きく分厚い壁と重い瓦を持つ建物を華奢な鉄骨が支えているさまが見どころ。
ここにある『BEER NEXT』というレストランは、鉄骨の梁がトラス構造で半円状に組まれた構造や戸車で下げられた防火扉をじっくり観察できる。
『BEER NEXT』店内
2号倉庫2階のバルコニーは、誰でも入れる場所。
ここには防火用水道管がいくつも残っている。
2号倉庫2階バルコニー