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一見入りづらい、曙町で50年以上続く老舗店。「パブレストラン アポロ」に突撃!

ココがキニナル!

鎌倉街道の曙町のあたりに、「パブレストランアポロ」って店があるのですが、どんな店でしょうか?以前から気になっていたんですが、入り口が二階だしとても入りづらくて・・・。(今宵月男さんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

入口から中が見えず入りにくいが、女の子ではなく素敵な老紳士が迎えてくれる老舗の名レストラン。ジュークボックスの音色も心地いい

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ライター:紀あさ

パブレストランアポロの歴史



パブレストランアポロの創業は、東京オリンピックのあった1964(昭和39)年の10月1日。石原さんが26歳の時。
 


秘蔵ブロマイド! 若き日の石原さん

 
アポロは建物の2階にあるが、当時は1階が「スパルタ」という、スパルタ出身のギリシャ人がオーナーのバーだった。このスパルタは現在の吉田町の「スパルタ」の前身で、同店HPによると、日本で一番古いギリシャ料理店だそうだ。
 


そのためギリシャ神殿風の外観

 
石原さんは19歳のころから3~4年間、1階のスパルタでウエイターとして働いていた。お店では「チャンさん」と呼ばれるが、その愛称は、当時坊主頭に詰襟のボウイ服だった石原さんを見て、お客さんから「蒋介石(しょうかいせき)に似ている」と言われて付いた。

蒋介石は英語ではChiang Kai-shek(チャン・カイ・セー)、そこから「チャン」に。愛称の由来を知る人はもうほとんどいないというが、「ギリシャ人の船乗りだったニック・マンザリンが名付けたんだよ」と命名者の名前まで憶えているチャンさんだった。
 


中華民国総統の正装に身を固めた蔣介石(wikipediaより)

 
その後、一時退職し、横浜中華街で米兵相手のバーをしていた義兄のもとでバーテンダーの修行や、東白楽で実兄の建材業を手伝うなどをしていたが、25歳ごろにスパルタのオーナーから、2階に店を持たないかと誘われた。
 


初代スパルタのオーナー夫妻 エリヤス・スカンゾフさん(右)と妻のアンナさん

 
当時の石原さんの心境は、人がいないなら・・・という感じだったが、「チャンスだ!」という思いもあったそう。

「アポロ」の店名はエリヤスさんらと3人で相談して付けた。ギリシャ神話の太陽神の名であり、「ア」の音は、日本語「あ」でも、英語のアルファベット「a(エー)」でも、ギリシャ文字「α(アルファ)」でも一番最初の音。
 


「ことのはじめっていうことで」

 
まだアポロ11号が人類を月面に運ぶより前のこと。横浜にギリシャバーは数十件あったが、ほかに「アポロ」の名を持つバーはなかった。
 


「スナックアポロ」はオープン時の店名

 
世は1960年代の高度経済成長期。国際港横浜には多くの貨物船が入港し、1回の寄港あたりの船員たちの滞在日数も1ヶ月近くと長かった。船が着くと、アポロはギリシャ人の船員たちで溢れかえり、日本のお客さんは入れなかったという。

やがて70年代に入ると、ギリシャの船が減り、乗組員はインドネシアなどのアジア人に変わっていく。船の滞在も短くなり、ギリシャ人は来なくなった。そのかわり、日本のお客さんが訪れるようになったので、店の看板をギリシャ語表記から日本語表記に取り変えた。
 


昔からの名残で、今もドリンクメニューがない

 
キニナルお値段は、アルコール類は1杯およそ1000円前後で、ボトルキープは8500円から2万円くらい。
 


カウンター上にずらりと並んだボトルキープがとても愛されていることを物語る


お店の奥にはワインセラーも

 
ここで何かアポロならではのカクテルはないかと尋ねると、そのものズバリの「アポロ」というカクテルがあるという。ぜひ飲みたい! とお願いすると・・・
 


「ダメ、強いから」

 
まさかのオーダーお断り・・・!

「お酒っていつでも飲めるでしょ。いつでも作れるよ。だから飲ませない」とプロの流儀。それなら「強くないアポロオリジナルを」とオーダー。

並べられたのは、琥珀色のアマレットリキュールのディサローノ、フルーツとハーブのリキュールのサザン・コンフォート、ベリー系リキュールのボルス・スロー・ジン。お手柔らかにしてくれた割にはしっかりしたリキュールたち。
 


この3種を混ぜてシェイカーを振ると


綺麗なオレンジのカクテルに

 
フルーツの香りがして飲みやすく、でもしっかりお酒を飲んでいる感じがする。とてもおいしい。「ゆっくり飲んでね」と笑顔のマスターに、このカクテルの名前を聞いた。
 


「教えなーい」と笑う

 
この笑い声がすてきで、酔わされていく。

さて、こんなふうに今年53年目となった「パブレストラン アポロ」。週に1度の休日を除き、毎日午後7時から午前3時過ぎまでカウンターに立つチャンさん。

すっとした立ち姿に、長時間つらくないかと尋ねると「そりゃつらいよ」とまた笑う。でも「アポロは自分の恋人だから、休みの日でも一回は店に来る」のだそうだ。

そんなマスターの恋人。カウンター12席、ボックス席が5つ。40人も入ったらいっぱいのお店。内装は約半世紀も同じままだという。