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栄区「田谷の洞窟」のVRデータ化が進んでいるって本当?

ココがキニナル!

栄区の田谷の洞窟が風化・劣化が進んで維持管理が難しくなっているようで、内部を3DスキャンしVRとして残そうという計画があるようです。実際の劣化具合や現状の対策、VRの計画等を調べて下さい(やしーさん)

はまれぽ調査結果!

2020年を目途に、現状保存と並行してVRデータ化計画が進行中。現在はVRデータ化に向け、専門家によるさまざまな学術調査が行われている

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ライター:田中 大輔

VR化への第一歩、学術調査がスタート



VR撮影を行うことは、特別に難しいことではない。
ただし、それはお金があればの話だ。

田谷の洞窟の場合、専門業者に依頼しての撮影には数千万円規模の予算が必要で、すぐに出てくる金額ではない。
また、そこそこの画質でOKなのか、最高画質で残すべきなのか、撮影の程度によっても値段が大きく変わってくる。
 


四国写し霊場。石仏の上に梵字、天井には龍が彫られている

 
そこで、まずは改めて洞窟をしっかりと調査して、その上で検討を進めていこうということになったと二人は話す。
市からの経済的支援は期待できない中ではあるが、幸いにも栄区長が協力をしてくれ、さまざまな専門家との線がつながり始めた。

洞窟の本当の姿を見極めるためには、宗教学、地盤工学、文化財学、民俗学、土木工学など多方面からのアプローチが必要だと二人は言う。これまで行われてこなかった学術調査を経て、いろいろな専門家の意見を重ね合わせることで、VR撮影のクオリティを検討しようというわけだ。
 


こちらは秩父三十四個所の写し霊場の一部

 
また、この調査は、VR撮影の画質を検討する材料になるのと同時に、学術的根拠に基づいて洞窟の価値を再検証することにもなる。二人は、そのデータを元に市との協力関係を再構築することも考えに入れているそうだ。

学術調査では、例えば地盤工学の調査においては、埼玉大学の小口千明(おぐち・ちあき)准教授に協力を仰ぎ、地盤のサンプル採取、調査などが進められている。
 


カッターで壁の一部を採取。明りのない非公開部分で行われた


切り取られた壁。この日は、暗闇の中で6時間近い作業となった

 
小口先生の調査によって洞窟の石は乾燥に極端に弱いことも確認されたため、洞窟の入り口のドアを気密性の高いものに変えることも検討されている。

また、文化財の専門家としては鶴見大学にある文化財学科の緒方啓介(おがた・けいすけ)准教授が協力してくれていて、レリーフの記録写真撮影方法などについて指導を受けている。
 


緒方先生(右)に撮影の指導を受ける


5.7メートルある天井付近に360度カメラを設置して撮影テスト

 
屋外にあるものと違い、光やスペースの限られた洞窟内での撮影は簡単ではなく、いろいろな工夫が求められる。緒方先生は、ライトの当て方や撮影アングルなど、細かなアドバイスを送ってくれた。

驚くべきことは、小口准教授、緒方准教授をはじめ、協力してくれている専門家はすべてボランティア。手弁当で田谷の洞窟保護に力を貸してくれているのだ。



地域のランドマークへ



保存実行委員長の田村さんも、自らの持ち出しだ。
仕事の合間を縫って洞窟に出向いて作業をしたり、クラウドファンディングを利用して寄付を募ったりと精力的に活動を続けている。

しかし、田村さんも渡辺副住職も「VRデータ化がゴールではない」と異口同音に言う。
洞窟を保護していくことはもちろんだが、撮影したVRデータ、ひいては洞窟そのものをどう活かしていくかが大切だと考えているそうだ。
 


崩れかけてしまっている仏様。どう守っていくか

 
二人はVRデータを資料として保存するとともに、タブレット端末やスマートホン向けのアプリとして活用することも検討している。

そうすれば、現在は拝観のできない障害者や、地球の裏側に住む人でも田谷の洞窟を疑似体験することができる。もちろん、将来、田谷の洞窟を拝観できなくなってしまったとしても、洞窟がどんなものだったかをリアルに体験できることになる。
 


保存実行委員会の掲げるVRデータ活用イメージ

 
また、強く印象に残るランドマークが少ない栄区にあって、田谷の洞窟を地域を象徴するような存在にしようとも考えているそうだ。
それまで地域内でバラバラに行われてきた個人、あるいは組織の活動を、田谷の洞窟を軸に一つの大きな力に変えられないかという模索も続いている。

一例として、5月には定泉寺の本堂を利用して落語会を催した。
戸塚区出身の柳家小せんさんを迎えた落語会では、近隣の農家で収穫された野菜や、地元の障害者支援施設で手作りされたロウソクやパンも販売された。
 


最寄のバス停は「洞窟前」。地域での存在感がうかがえる

 
あえて檀家には声をかけないことで地域全体のイベントにし、有料にも関わらず80人以上の人が席を埋めたそうだ。木戸銭(見物料)の2000円に洞窟の拝観料が含まれていたこともポイントだろう。

こういった形で、アプリ制作とともに、地域を盛り上げるために田谷の洞窟を活用していこうというのが、VR化と同時に進められている取り組みというわけだ。



取材を終えて



田村さんは「VRデータ化は、2020年を目処に進めていきたい」と話す。
しかし、そこで活動が終了するわけではない。データの保存や利活用、洞窟やレリーフ自体の保護など、取り組まなければならないことは山積みだ。

「洞窟を残していくのが最大の使命」と明言する渡辺副住職は、「それと同時にVRという技術を利用して、後世にハッキリ伝えられるようにすれば、洞窟を掘ったお坊さんたちに面目が立つかなと思う」と話してくれた。
 


洞窟内は言いようのない独特の空気に包まれている(撮影:園田賢史)

 
この洞窟は、宗教的な価値は別にすると、歴史的に極めて古いわけではなく、美術的に特別に優れているわけでもない。残念ながら制度上の文化財としての価値は、今のところそこまで高いとはされていない。

それでも、実際に足を運んでみると、守ろうとしている人がいる意味が理解できる。
熱心な仏教徒や美術に興味のある人は当然だが、そういった知識がない人が見ても、神秘的な雰囲気や美しい彫刻は残しておきたいと思えるものなのだ。

少しでも興味のある人は、ぜひ一度実物を見に行ってはいかがだろうか。そして、田谷の洞窟がどんな空間なのか実際に感じ、それを守ろうと奮闘している人がいることを思い出してほしい。
ただし、神聖な場所なので、その際はルールを守って拝観をすることをお忘れなく。
 
 
-終わり-
 

取材協力
定泉寺
http://taya-josenji.jp/
田谷の洞窟保存実行委員会
https://www.facebook.com/shingonjousenjidoukutsu/
 

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  • 林市長。IR整備の前に、ここに仕事がありますよ。遺跡は横浜市民の大切な文化遺産です。小机城をはじめ、横浜市は貴重な史跡をことごとく開発して破壊してきたのだから、この田谷の洞窟くらいはぜひとも守ってほしい。

  • 横浜市にいながら、このような遺跡を目の当たりにすることができる、貴重な洞窟です。一見の価値ありますよね。山あり、海あり、洞窟あり、横浜ってホントいろいろな顔があって面白いです。

  • 修繕に自治体から金銭的な援助が無いというのは大変ですね。今後、すぐ近くに横浜南環状線の栄インターが出来るとアクセスはとても良くなりますが、交通量や工事が増えて振動や地下水の流れが変わる等、心配です。杞憂であれば良いのですが。

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