鶴見区馬場の「埋蔵文化財の発掘調査」って何が埋まってるの?
ココがキニナル!
鶴見区に、「歴史的埋蔵物発掘工事中」のエリアがありました。何が埋まってるんでしょうか、気になります。(がこさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
5年後開通予定の首都高速・横浜環状北線の工事にともなう発掘です。旧石器時代、縄文・古墳・平安・江戸時代の遺跡が出ています!
ライター:吉岡 まちこ
平安時代の火葬墓、縄文・古墳の竪穴住居も
さらに掘り進めると、平安時代の火葬骨が入った蔵骨器が4つ出土。貴重な発見だそうだ。
仏教の影響で、身分の高い人にはすでに火葬の習慣があり、さらに横浜市と川崎市の境にあたる一帯にこうした火葬墓が集中していることから、帰化人が独自の葬法を持ちこんだのかもしれないという。
約1100年前、平安時代の火葬骨が入っていた。ちょうど骨壷くらいの大きさ
さて、さらに地面を剥いで掘り進めると――
約1300年前、古墳時代の竪穴住居が2軒見つかった。
古墳時代の竪穴住居跡の発掘調査風景。右はその頃の、いわばお茶碗
「これにご飯を盛って食べたんじゃないでしょうかね」と小川さんが説明してくださり、その頃にこの丘で誰かが暮らしていたんだなぁ、とほのぼのとした気持ちになる。
さらに古く、今から6000年も前の縄文時代の竪穴住居跡も2つ見つかった。
でも、その2軒は全然別の時期なので、ご近所さんというわけではなさそう。
都筑区の小丸遺跡なんかは50軒くらいの大集落だったとわかっているが、ここ馬場綿内谷遺跡では、ポツンと一軒住んではどこかに去り、また何百年何千年の時を経て、ふらりと誰かが訪れて住んだような静かな地だった。そんな気まぐれで人が住んだ丘だった様子が浮かんでくる。
こんな感じで遺跡がある。写真の上部が法隆寺交差点。左手に横浜線が走る
(写真提供/かながわ考古学財団)
縄文時代はドングリが主食だったので、その貯蔵やアク抜きの煮炊き用土器もたくさん出土している。
狩猟に使った黒曜石(こくようせき)の矢じりもあった。はるばる長野県の和田峠や神津島からやって来た黒曜石。
「当時は、近くや遠くの村同士でこうした石器や土器、貝や骨の装飾品などを交易あるいは交換し合っていたようなんです。それで遠方の黒曜石もこの遺跡にもたらされたんじゃないでしょうか」と小川さん。
お中元で贈り物をし合うようなイメージで、なんだか意外だ。
ほとんどが破片だけれど縄目の美しい縄文時代の土器、そして黒曜石
こうした出土品はすべて阪東橋にある神奈川県埋蔵文化センターに保管される。
希望すれば見せてももらえるし、博物館で展示される機会もあるかもしれない。
江戸時代の地層から約1m掘り下げ、関東での発掘は、赤土の関東ローム層が出てきたらおしまい。
最後の層、旧石器時代からは、石器を作るのに打ち割った石や破片が出てきたそうだ。
2万年も前誰かがここでもくもくと石器を作っていたのだ。どんな景色を見、何を考えていたのだろう。
平成28年度、ここは首都高速の「馬場出入口」になる
ところでここが何の工事のための土地なのか、気になる方も多いと思う。
今回の発掘の事業主は、首都高速道路株式会社。
第三京浜の「港北インターチェンジ」と首都高速横羽線「生麦ジャンクション」をつなぐ、約8kmにわたる「横浜環状北線」の工事用地なのだ。いま発掘が行なわれている一帯は「馬場出入口」にあたる。
ちなみに日産スタジアム近くと生麦地区にも出入口ができるそうだ。
図のオレンジ系の部分はトンネル。ピンクが地表に出る部分
横浜環状北線の7割は地下。ここも、今ある道路の下をぐるぐるとループ状のトンネルがくぐって、出入口の部分だけが地上に出てくる。
そして、首都高速道路株式会社・神奈川建設局、調査・環境グループの説明によれば、白いフェンス内の発掘現場には換気塔が建つそうだ。(下図・右のイラスト参照)
法隆寺信号(新横浜方面)を背にして撮影。左の地点からの眺めが右のようになる
計画から着工まで10年強の歳月、地盤沈下等を心配する住民との協議が重ねられた。
そして今回の発掘調査をしている場所でも、徐々に道路の工事が始まったところだ。
取材を終えて
菊名駅から歩いて15分ほどの場所で行なわれていたのは、平成28年度に開通予定の首都高速の横浜環状北線の工事にともなった発掘調査だった。
発掘したところ、2万年前から人が生活していた証が見つかり、途中空白があるものの常に連綿と誰かの暮らしの場だったことがわかった。
その上に、最先端の技術で高速道路ができる。
私たちの生活は、どこも幾千年の人の営みの上にあって、歴史は止まることがないのだと実感する。
― 終わり ―
【シールドトンネル工事現場見学会のご案内】
首都高速道路株式会社主催の見学会が行なわれます。抽選制。
◆日時:平成24年3月20日(火・祝日)
◆場所:港北区新羽町の工事現場
◆参加方法:横浜環状北線予定地近郊の駅・図書館・市の施設に配置または近郊の方々にポスティングされた広報誌「きたせん」Vol.28に添付の応募はがきを送付のうえ抽選。
(下記ホームページ参照。)
http://www.yokokan-kita.com/index.html