横浜と鎌倉を愛した名作家、大佛次郎ってどんな人?
ココがキニナル!
横浜生まれの作家といえば、大佛次郎は外せないと思います。港の見える丘公園には「大佛次郎記念館」、鎌倉には「大佛茶廊」があります。大佛次郎の横浜や鎌倉にまつわるエピソードなどをお願いします(河童丸さん)
はまれぽ調査結果!
大佛次郎は、生涯に渡って横浜と鎌倉を代表とする神奈川を愛した文豪。昔の作家だからと尻込みせず、ぜひ豊かな大佛ワールドに触れてほしい!
ライター:吉澤 由美子
大佛次郎と鎌倉
(続き)
奥様も猫好きで「家で飼う猫は15匹まで」というルールがあったという大佛家。自宅では猫が多すぎて落ち着いてお客様をおもてなしできないため、この別宅を手に入れたという説もあるらしい。
梅、しだれ桜の咲く季節には毎年、宴を開いていた庭
数寄屋(すきや)造りの建物に、木々に囲まれた広い芝生。
しっとりとした落ち着きのある玄関
関東大震災前の貴重な建物。この中には、静謐(せいひつ)でゆるやかな時間が流れている
ゆったりとした茶廊内には、大佛次郎が愛用した品々などが展示されている。
ショーケースにある「天皇の世紀」原稿の最後には、本人の字で「病気休載」の文字が記されていた
大佛茶廊では、音楽を流していない。数寄屋造りの空間、緑の濃淡にも気を配って作庭された眺め、昔ながらの時間の流れを味わえるよう、余計な音を流さないようにしているとのこと。
大佛茶廊 ご主人の野尻芳英(よしふさ)さんは、大佛次郎のお孫さんにあたる方
現在は静寂がとても貴重なもの。
風が起こす葉ズレの音、路地で遊ぶ子どもの遠い声、鳥のさえずり、そしてその合間に流れる静けさ
ここでは日本の伝統的な美意識に触れながら、ゆったりした時間を過ごすことができる。
そして、こちらで出されるコーヒーや抹茶、お菓子はとびきり上質なもの。なんだか大佛次郎自身からおもてなしを受けていような贅沢な気持ちになれるのもうれしい。
上生菓子がついた抹茶は、お座敷席でいただくと1500円。庭園席では1300円で味わえる
取材を終えて
7月15日まで大佛次郎記念館で行われている「大佛次郎と神奈川」という特別展で、横浜や鎌倉との深いつながりを知ることができた。
鎌倉では、ナショナル・トラスト運動を紹介して、鶴岡八幡宮の背後にある森を守るきっかけを作るという先進性と、数寄屋造りの別邸という伝統的な日本文化を愛した美意識をあわせ持つ大佛次郎の視野の広さに改めて驚かされた。
大佛次郎の別邸だった鎌倉の大佛茶廊は、土日祝日のみカフェとして利用可能で、大佛次郎が暮らしていた当時の雰囲気を味わうことができたのも楽しかった。
大佛茶廊の庭。藤棚と芝生の奥にある木立には、四季を彩る草花が控えめに咲く
横浜生まれで、生涯にわたって横浜と鎌倉を代表とする神奈川を愛した文豪。昔の作家だからと尻込みせず、ぜひ豊かな大佛ワールドに触れてほしい。さらっと読めるエッセイから血沸き肉躍る娯楽小説、骨太のノンフィクションまでジャンルも幅広いので、きっとお気に入りが見つかるはず。
大佛次郎記念館の壁面に飾られたエジプトのバステト像
あと、猫好きの方には、「猫のいる日々」は絶対絶対絶対オススメ!
―終わり―
◆大佛次郎記念館
住所/横浜市中区山手町113番地
TEL/045-622-5002 FAX/045-622-5071
観覧時間/4~9月10:00~17:30(入館は17時まで)
10~3月10:00~17:00(入館は16時30分まで)
観覧料/大人200円 小・中学生100円
http://osaragi.yafjp.org/
■特別展 没後40年・大佛次郎と神奈川―未来へのメッセージ―
~7月15日(月・祝)
※展示内容は、一部入れ替えにより、取材時と違う場合があります
さすらい日乗さん
2016年05月20日 09時35分
大仏次郎は、東大法学部卒です。東大法学部卒の小説家は3人だけで、大仏の他、三島由紀夫と林房雄です。林は、元は共産党員だったのですが、1960年代に『大東亜戦争肯定論』を書いて大騒ぎになった人です。戦後はほとんど娯楽小説ばかりでしたが。
さすらい日乗さん
2015年02月02日 11時33分
大仏次郎は、戦前の『鞍馬天狗』には、当時の左翼運動への共感があったと言われています。しかし、戦後は穏健保守派というべき立場になり、戦後の風潮には相当に批判的だったようです。大仏原作の映画では、大庭秀雄監督の『帰郷』、小津安二郎監督の『宗方姉妹』があり、戦後世代にかなり疑問を呈しています。
浜っ子五代目さん
2013年07月03日 21時46分
記念館が山手にできた理由がキニナル。もともと何があった場所も。