神奈川の海ではナマコがよく獲れる? 横浜の「マニアック」なナマコ事情を徹底レポート!
ココがキニナル!
神奈川県の海でナマコがよく捕れるそう。年間の漁獲量は? 横浜市内で新鮮なナマコを食べられるお店は? ナマコで有名な青森県横浜町とはどちらが多く捕れる?(華麗なる模型界の貴公子様♪さん)
はまれぽ調査結果!
2013年度の漁獲量は神奈川県の東京湾が約69.5トンで青森県横浜町が約91トン、青森県横浜町の勝ち。新鮮なナマコが食べられるのは本牧漁港内「叶家」
ライター:楪 ゆう子
乾燥ナマコの殿堂を訪ねよう!
目からウロコの新食感と意外な美味しさでナマコ嫌いの筆者を驚かせた乾燥ナマコだが、一般的にはどこで手に入れられるものなのだろうか? 少なくとも、うちの近所のスーパーじゃ見たことないぞ。
状元樓での仕入れ先は業者さんとのことだったので、中華街で買えるお店を探してみると。
創業1958(昭和33)年、貿易部や流通センターを持ち、中国には直営工場も
明るく開放的な店内は覗くだけでワクワク
媽祖廟(まそびょう)や横浜大世界でにぎわう南門シルクロードで、老舗の中華材料卸売店「萬福臨(わんふーりん)」を発見。貿易会社直営により、全国の一流ホテルに食材を提供している業界屈指の有名店だ。
加山雄三さんなど料理自慢の芸能人御用達のお店
さっそく、店長の高瀬さんに乾燥ナマコについてお話をうかがった。
「萬福臨」店長の高瀬一信さん
「島国である日本はミネラル分が豊富な上質なアワビやフカフレ、干しナマコ、貝柱を獲ることができ、<カチカチに干す技術>が世界でもトップレベルで、古くから中国に向けて海産物の乾物を輸出してきました。当店に置いてある乾燥ナマコの種類は“北海道”“関西”“沖子”“白海参”です。東洋医学では、ナマコはガンに効くともいわれてます。だから中国ではお金持ちがこぞって食べるんですね」
1グラム15円から175円まで、まさにピンキリ
となると、東洋医学と食文化から「萬福臨」で日本の質の良いナマコを買い求める中国人が多いのだろうか?
「もちろん日本人のお客さんもいますが、ほとんどが香港、台湾、中国を中心とした観光客です。お目当ては日本の家電だけじゃなく、乾物なんですよ。日本に観光に来た中国人がTwitterで、乾物を買いたいと思って店を聞いても当の日本人が誰も知らない、なんてボヤいてるのを見かけます」
トップレベルの北海ナマコは一個2000円以上。戻りが良くて味が抜群に良いらしい
そ、そんなに人気のお土産なんですか!?
「そうですよー。乾燥ナマコを何本か買って帰って、会社で上司など目上の人に配るんですね。これをお土産にできるというだけで一目置かれ、もらった方も誇れる。日本でも昔は結納なんか昆布やスルメで財力を示しましたもんね」
戻し済関西ナマコの冷凍パックも。すぐ使いたいときに便利
その中でも、中国の富裕層にとくに人気なのは、黒くてトゲがある北海ナマコだという。
「日本の北海ナマコといえば、毎年密漁者が捕まるぐらいですからね。あれはウニ漁船で沖まで行って、ウニを捨ててナマコを獲って、そのまま沖で中国人と売買するやり方でしょ? そのぐらい、北海ナマコは生のアワビよりウニよりも高価な『黒いダイヤ』なんです」
中華系スレンダー美女を口説くなら、ジュエリーよりもナマコ!? これから中国に行く予定がある人は、ポケットに北海ナマコを忍ばせて行くべし。
最高級フカヒレ「天九翅頭」(ティンガオチー)
「萬福臨」は、ナマコ以外にも中国料理高級食材の四大海味、「参鮑翅肚(パオサンチートウ/海参:ナマコ、鮑魚:アワビ、魚翅:フカヒレ、魚肚:魚の浮き袋)」のすべてが手に入るお店。そのほか、よそでは見かけない珍しい食材がたくさんあるので、中華街を訪れた時はぜひ立ち寄ってみてほしい。自宅の食卓をリッチに彩ることができるはずだ。
美肌の素・コラーゲンたっぷりな燕の巣(イェンウォ)
干しアワビ(ガンバオ)を置いてある店はプレミアム
ドライフルーツやナッツ類も豊富
取材を終えて店を出ようとする筆者に、山岸嬢から悪魔のささやき。
「ユズリハさん、乾燥ナマコ料理にトライしてみてくださいよ・・・」
高瀬さんは笑顔で手ごろな関西ナマコをおすすめしてくれたが・・・
でたッ! 「やってみた」オーダー!!
「乾燥ナマコの戻しは失敗する人も多いから気を付けてくださいね~」と笑う店長に半ベソでコツを聞くと。とにかく油分に弱く、ちょっとでも油が入ると本体が溶けてしまうため、器具と手をよく洗うようにとのこと。そして忍耐。あーもう、料理ニガテなのに勘弁してくださいよォ(泣)
そして干しナマコ料理やってみた
だがしかし。
実際にやってみると「戻し」は調理というよりも「実験」であり「観察」だった!
最初は5㎝ぐらいからスタート
以下、「萬福臨」レシピによると・・・
(1)調理器具や手などをしっかりと洗い、干しナマコの汚れを取るため塩でこすり塩とともに洗う
こすると塩の中にゴミのようなものがボロボロ落ちる
流水で流すとツヤピカに
(2)大きめの鍋かボールの中にナマコが焦げないように皿を敷き、ナマコと水を入れ、中火にかける。沸騰し始めたら火を止め(沸騰させると戻らなくなるので注意!)蓋をして冷まし、一晩そのまま置いておく。
たまたまあったけど、鍋ぴったりサイズの皿って難しいよね
沸騰する直前の見定めが難しい。泡立つ前ってこと?
(3)翌日、水を替えてナマコを握り、芯に硬さがなくなるまで(2)を繰り返す。その間に、ナマコの表面をナイフでこすり表皮をこすりとる。
冷ますときはフタを忘れずに
知らずに開けた娘「ぎゃあキモイ!」
毎朝起きると蓋を開けてナマコの様子を確認。餌こそ与えないが、水を替え、温めて、冷ましてやるというお世話を繰り返すうちに、なんだかナマコに愛着が湧いてきた筆者。見るたびに成長(?)しているし、お鍋にブクブクや岩や砂や水草なんか入れてやりたい気分だ。
だいぶ大きく育ちました
ふくらんだトゲトゲがかわいいので、指示に従わず表皮を残す。
だんだんキモカワいさのトリコに!?
5日目、ついに10㎝ぐらい。倍になったよ
(4)芯に硬さが無くなったら口の部分を取り除き、腹を開いてスジを取り、腹の中を指でこすって綺麗に掃除。やわらかく戻してからでは作業がしづらいので、戻しすぎに注意!
ナウシカのオームにも見えてきた。いい子!
腹を裂くのがツラい・・・
いっぱい取れたスジ
(5)(2)の工程を繰り返し、十分に戻り大きく伸びれば大成功! 完成。ここまでの作業は5日~7日くらい。
というわけで、筆者のスケジュールの都合上5日間ギリギリで戻し、姿煮をかたくなに拒む娘のために輪切りにスライスしてこしらえた乾燥ナマコ料理がこれ。
「ナマコとタケノコの炒め煮」である。レシピは、ナマコを刻んでタケノコとネギを炒める。味付けは紹興酒、醤油、砂糖、鶏がらスープ。全部煮込んで味がしみたら、水溶き片栗粉でとろみをつけてでき上がり。戻しが早過ぎたか若干ナマコの歯ごたえが残ってしまったが、まぁ普通にご飯に合う家庭的な中華料理に仕上がった。
姿煮じゃないとどれがナマコでどれがシイタケかわからない
結局のところ、娘が口にしたナマコは最初の一口二口、あとはタケノコばかりやたらガリガリかきこんでいたので、事前に本体を見せるべきではなかったという反省は残るが。
5日間共に暮らし、かいがいしく世話をしたナマコである。時間をかけたからこそのありがたみと感謝の想いを胸に(アンチエイジング効果をおおいに期待しながら)筆者がペロリとたいらげたことは言うまでもない。
ナマコちゃんよ・・・ありがとう、そしてごちそうさまでした!
取材を終えて
最初はかなりの“トホホ感”と共に引き受けた調査だったが、取材を進めるうちに、ナマコのミステリアスな生態と歴史を知り、東京湾の漁港の今を感じ、人体への効能を発見し、未知の食材に触れ、味わうという貴重な体験をすることができた。シンプルなのに奥深いナマコの魅力に完敗である。筆者と同じナマコ嫌いの読者も、ぜひ理解を深めてから再体験にトライしてみてほしい・・・ナマコに限らず、人生のパラダイムチェンジはいくつになってからでも可能なのだから!
とりあえず筆者は、これから“ナマコの飼育法”について調べていきたい。
―終わり―
参考文献・HP
『ナマコガイドブック』(本川達雄・今岡亨・楚山いさむ 著/CCCメディアハウス 発行)
『平成25年度水産技術センター業務概要』資源動向調査「東京湾ナマコ資源管理推進調査」
神奈川県水産技術センター
http://www.pref.kanagawa.jp/div/1730/
青森県水産情報
http://www.pref.aomori.lg.jp/sangyo/agri/suisan_top.html
漁師.jp:全国漁業就業者確保育成センター
http://www.ryoushi.jp/
JF青森漁連アスパム直販店
住所/青森県青森市安方一丁目1番40号 青森県観光物産館アスパム内
お問合せ TEL 017-773-3633
http://www.aomori-kanko.or.jp/web/guide02_shop02.html
本牧海釣り施設
住所/横浜市中区本牧ふ頭1番地
電話/045-623-6030
定休日/年末・年始(12月31日~1月1日)他に施設点検、荒天の場合等、臨時休業あり
利用時間/季節によって異なる。
http://honmoku.yokohama-fishingpiers.jp/
叶家
住所/神奈川県横浜市中区錦町7-1
電話/045-624-4906
定休日/土日祝日
営業時間/11:30~ 14:00
上海料理 状元樓(じょうげんろう)本店
住所/横浜市中区山下町191(中華街大通り)
営業時間/
月0木、日 11:30-22:00 (L.O.)
金、土、祝前 11:30-22:30 (L.O.)
URL/ http://jogen.co.jp/jgr_yokohama/index.html
萬福臨
住所/横浜市中区山下町123-8
営業時間/9:00~18:00
URL/ http://homepage2.nifty.com/manpukulin/index.html
Nicksさん
2015年01月18日 23時25分
横浜港の本牧埠頭や大黒埠頭のすぐ手前で底引き網漁が盛んに行われているのを見て驚いたことがあります。あれだけの通航量がある横浜航路近辺でも、そこを漁場としている人がいて生計を立てている人が、今この時代の横浜市に存在することにびっくりしたことがあります。そういえば小柴でも漁業がまだ盛んですね。市内の就業構成のなかでは漁業や農業従事者は数%もいないかもしれませんが、世の中は身近なところに様々な職業や生活があることを小中高で社会授業の一環で教えてほしいと思います。
烈親父さん
2015年01月16日 21時38分
ナマコ酢。酒のおともに最高。高いと言っても生きている生ナマコ1個500円程度。1個あればかなりお酒が進む。グルメを自称している人はこのような珍味を食さねば。記事の中の写真にあったギンポも知らないんじゃないかな。最高の天ぷらだよ。
せいちゃんさん
2015年01月15日 20時56分
乾燥ナマコの炒め煮、十年以上前ですが、自宅で作ってみたことがあります。独特の旨みというかダシみたいな風味もスープに溶け出して、おいしいんですよね~。記事を読んだら、また作ってみたくなりました。作るのに時間かかるんですけどね……。