誰かが反対している? 陸の孤島・本牧に鉄道が延伸しない理由の真相は?
ココがキニナル!
地下鉄が本牧まで延びないのは本当は誰が反対しているのか?(kodama_koさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
今まで何度か地下鉄が通る計画はあったが、港湾業界や地元住民の反対、また採算性が悪いなどの理由で実現できなかった。
ライター:小方 サダオ
関係各所に経緯を伺う
ここで関係各所にこの件に関して伺うことにした。
横浜市都市整備局の担当者に、本牧に鉄道を通す計画に関して伺うと「鉄道ネットワークに関しては、まずは高速鉄道3号線の延伸を優先させています」
「根岸から元町・中華街の間は、横浜環状鉄道として計画はありますが、事業化されていません。長期的に取り組む路線として検討中です。しかし本牧方面は採算が取れないと予測はあります」と答えてくれた。
高速鉄道3号線の延伸(黄色い矢印)が優先だという
次に、本郷町商店街のFさんから伺った「地下鉄の阪東橋駅」の件に関して、横浜市交通局高速鉄道本部営業課の瀧澤(たきざわ)さんに伺った。
「横浜市営地下鉄ブルーラインは、1号線(関内~湘南台)と3号線(あざみ野~関内)が一体化し、一つの路線として運行しております」
「この3号線は、1966(昭和41)年7月の都市交通審議会答申第9号(東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関して旧都市交通審議会により作成された基本計画)にあげられた、本牧から関内、桜木町、横浜駅、新横浜駅を経て勝田(現在の都筑区)に至る路線を基にしています」
勝田(緑矢印)山下町(赤矢印)本牧(青矢印)
都市交通審議会答申第9号(京王線連立線増促進協力会ホームページより)
このうち、山下町~横浜駅間は緊急整備区間に指定されました。
しかし、1975(昭和50)年、港湾業界から「県庁前の道路における地下鉄建設工事は貨物輸送に影響を及ぼす」との理由から、関内~山下町間の工事着手延期の陳情書が市会と運輸省に提出され、工事は中断されました」
「その後、みなとみらい線の新設決定(東神奈川~みなとみらい21地区~元町付近・・・本牧町・・・根岸)を受け、これを優先したため、1988(昭和63)年、3号線・関内~山下町線は正式に断念されました。これに伴い、本牧への延伸も断念されました」
みなとみらい21線の新設(元町付近・・・本牧町〈青矢印〉・・・根岸が予定されていた)運輸政策審議会答申第7号(1985年7月11日)
「このことから、1975(昭和50)年~1988(昭和63)年の間に阪東橋駅の案内は撤去されたものと考えます」と答えてくれた。
続いて横浜高速鉄道の担当者に、本牧に地下鉄が伸びる計画がなくなった経緯について伺うと「本来は元町まで結ぶという計画でした。その先の本牧まで通す話もあったようですが、それが実現しなかった理由は定かではありません。もしかすると元町まで完成した時点で、その先の本牧に伸ばすよりも優先度の高いほかの路線が出てきたからなのかもしれません」
みなとみらい21線(『ヨコハマ「みなとみらい線」誕生物語』)
また「『ヨコハマ「みなとみらい線」誕生物語』廣瀬良一」には、本牧に鉄道を開通させる可能性に関して興味深い記述があり「みなとみらい線は鉄道事業として必要な車両留置場などの電車基地が確保できず、当面は東急電鉄の元住吉車両基地を借りている。みなとみらい線をJR根岸線まで延伸できれば、JR側の協力を得て、根岸線付近の貨物施設用地を活用させてもらうことで自前の車両基地を保有も可能だ」とある。
なぜ本牧は優先順位が低く扱われるのだろうか? それは「本牧方面は採算が取れない区間」と偏見を持たれているからなのかもしれない。
次世代路面電車が本牧を走る?
ところでLRT(Light Rail Transit)という、次世代の路面電車のような交通機関がある。
フランスなど欧州諸国の世界の大都市では環境問題の解決へ向けて「自動車依存都市」の脱却から「持続可能な交通システム」として、積極的に導入されている。
世界のLRT(『世界ゆったりトラム旅物語』(株)東京書籍)
以前は市電が走っていた本牧。
鉄道建設が難しいと思われるため、それに代わるものとして、LRT導入の可能性はどうなのであろうか?
『LRTが京都を救う 都大路まちづくり大作戦』(つむぎ出版)によると「LRTの動力は電気のためクリーンであり、建設費用は地下鉄の10分の1で建設・運営のコストが安い。また車両デザインが街のシンボル的な存在になり観光地に向いている」
「架線式だと維持費などがかかるため、蓄電池や燃料電池で供給すると架線を必要としない」という特徴がある。
LRTの走る商店街のイメージ(『LRTが京都を救う 都大路まちづくり大作戦』つむぎ出版)
しかし「警察と協力して、路上駐車を徹底排除するなどの必要性がある」ということで、自動車利用の多い地域には導入が難しそうだ。
そこで「LRTを本牧に走らせる」という活動をしていたFさんにお話を伺った。
まず今までのご自身の活動に関しては「以前市電が走っていたように、本牧は路面電車に向いている路面なのです。何よりも導入すると街並みがきれいで、本牧に合います。本牧の主要道は5車線ですが、歩道側の一車線をLRT専用にして、残り4車線を自動車道路にするのです。そうすれば自動車の交通の邪魔になりません」
「しかし『LRTを走らせる会』として今まで活動してきましたが、本牧に走らせるのは厳しいですね。地元の有力者に相談しても『道路が混む』『路上駐車が出来ない』という意見です」
日本のLRT車両(『LRTが京都を救う 都大路まちづくり大作戦』つむぎ出版)
「私は市にも働きかけました。本牧とLRTは、観光面での市の活性化のためによいと思ったからです。例えば外国船が入ってきた際、乗客には、大桟橋から根岸駅までLRTを通し、本牧で下車し三溪園に寄ってもらい、さらに根岸駅で貨物路線を一部貸り、大船から鎌倉まで行ってもらえれば、和の風情を満喫してもらえると思います。しかし市は三溪園が観光収入になるとは思っていないようです」
外国船の停泊する大桟橋と鎌倉方面を結ぶFさんの考案。赤線がLRT区間で、ピンクの線が鉄道区間
「また市は税金を取るだけではなく、LRTを効果的に走らせて、その交通システムをアフリカなどの外国にアピールして売れば、儲けになるのではないでしょうか? 市には夢のある人がいないようです」とのこと。
Fさんは根岸駅で貨物路線を一部貸り、乗客に鎌倉まで観光してもらう案を持っていた
鉄道建設に関して伺うと「地下鉄の実現は難しいと思いますよ。関内あたりは沼地と地盤が悪かったため、その区間の工事には予想以上の費用がかかりました。本牧も昔は田んぼでしたから、地盤が悪くて時間も費用もかかるのではないでしょうか?」と答えてくれた。
LRTの導入には、地元市民の自動車中心の交通に代わって、路面電車が走っていたころの意識に戻ることが必要になるのではないだろうか。
取材を終えて
鉄道建設は、行政機関が、本牧は採算が取りづらい区間とみていることが実現を難しくさせているようだ。
マイカル本牧があったころは、バブル景気の追い風もあったとはいえ、本牧が活気づいていたという。それは「地下鉄が通るかもしれない」という期待が影響していたのではないだろうか?
本牧ならではの名所が増えるなど、何らかの形でその活気が戻れば採算が取れると判断され、事業化が早まる可能性もあるのではなかろうか?
本牧に活気が戻れば鉄道が通る可能性も高くなりそうだ
―終わり―
取材協力
特定非営利活動法人 横浜にLRTを走らせる会
http://lrt.cocolog-nifty.com/yokohama/
鉄道くんさん
2023年07月20日 12時52分
とは言え、本牧の住民世帯は増えているそうです。わざわざ商業の街にしなくても、みどり豊かで空が広い住みやすい街のままで良いのでは。イオンと旧イトーヨーカドーだけ、もう少し頑張って欲しい気がしますが。(食べ物屋増やして欲しい)
わにきちさん
2020年02月24日 12時24分
地元の有力者が馬鹿だと大勢を巻き添えにして地域を衰退させる典型的な事例ですね。
長後駅の呉服屋と同類です。IRに声だかに反対している人たちと重なってみえます。
現状維持を求めることは衰退だということを学ばないと本牧は横浜全体の未来かもしれません
元マイカル本牧の廃れ感はみていてとても悲しいです。
トロロさん
2020年02月23日 22時34分
むしろ本郷村民の反対派を敢えて避ける意味で、大きく迂回するルートにすれば可能じゃないかって素人には感じます。