【横浜の名建築】近代建築の父レーモンド設計 エリスマン邸
ココがキニナル!
横浜にある数多くの名建築を詳しくレポートするこのシリーズ。第8回は、外人墓地の隣にあるエリスマン邸。シンプルでモダンなこの建物には、日本を深く愛した3人の外国人の思いが詰まっていた。
ライター:吉澤 由美子
レーモンドの5原則「自然、単純、直裁、正直、経済的」を具現化したデザイン
(続き)
部屋の中で見逃せないのが、腰高の壁や窓。
壁の端をよく見ると、トリミングのように小さな目立たない鋲(びょう)が規則的に打ってある。
廊下や階段といった場所にもこの鋲の意匠は繰り返し使われている
部屋の大きな上げ下げ窓は、2つがワンセットになっていて、下部にはひかえめな窓台がしつらえられている。
窓台の下を支える金物はつる草のような繊細なデザイン
2階に上がる階段横の柱にはライト的な意匠が施され、腰高壁の大きな段がシャープなリズムを与えている。
簡素で抑えた装飾だが、力強いデザイン
踊場の柱も同じデザイン。廊下の窓上部壁が出ているのは、上にあげた窓を収納する空間があるため
2階には3つの寝室と共用の浴室。ここの浴室にある備品はすべて創建当時からのもの。
バスタブや洗面台、カーテンレールやシャワーノズルもアンティーク
2階の廊下には、屋根裏に上がる階段へと続くドアもある。普段は施錠されているが、11月15日にエリスマン邸で建築家レーモンドの記念講演があり、そこで屋根裏の特別公開が行われる予定だ。
屋根裏の軸組は露出しているので、間近に観察できる。洋館のこういった場所が公開されることは珍しい
屋根裏は、創建時からの軸組部材を使用して復元されており、その意味でも歴史的価値は高い。
取材を終えて
エリスマン邸の厨房は改築されて喫茶室になっている。創建時には和館がつながっていた部分にサンルームのようなガラス張りの席も作られており、元町公園の緑を前にコーヒーを楽しめる。
目の前は一面の緑で、高原にでもいるような気分。サクラの季節には一面がピンクになる
日本の建築に多大な貢献を残し、近代建築の父と呼ばれるレーモンドと、公私ともによきパートナーだったノエミ夫人。
そして、日本人の妻を持ち、52年間日本に住んで、今は隣の外人墓地に眠るエリスマン。
サンルーム側から見ると、バスルーム上部に2つある正方形の窓がアクセント
日本を愛した3人の外国人の思いが詰まったエリスマン邸は、静謐で簡素ながら合理的に作られた美しい建造物だった。
※屋根裏などは、特別な許可をいただいて撮影しています
― 終わり―
エリスマン邸 公式サイト
http://www.yamate-seiyoukan.org/erisumantei.html
11月15日のレーモンド記念講演の告知もこちらに記載される予定です。
エリスマン邸
住所:横浜市中区元町1-77-4
電話:045-211-1101
開館:9:30~17:00(7・8月は~18:00)
休館:第2水曜(祝日の場合翌日)・年末年始
交通:みなとみらい線元町中華街駅5番出口から徒歩10分
みゆきちさん
2011年09月04日 20時05分
山手西洋館大好きです。ほかの館の記事もぜひお願いします!たしか館によってはウエディングもできたはず…