デビュー50周年! 湘南育ちの兄弟デュオ「ブレッド&バター」って、どんな人たち?後編
ココがキニナル!
デビュー50周年! 湘南育ちの兄弟デュオ「ブレッド&バター」って、どんな人たち?後編
ライター:山本航
スティービー・ワンダーとのかけがえのない友情
――海外との交流で最も有名な、スティービー・ワンダーとのエピソードを改めて教えてください。
(S)1973(昭和48)年にロンドンでレコーディングしたときのプロデューサーが、スティービーのエンジニアだったんで、会わせてもらえました。
そこで自分たちがレコーディングをしている間に、彼がLA(ロスアンジェルス)へ帰ってしまったことを聞いて、後からお礼を兼ねてLAまで追いかけてスタジオ訪問したんです。そしたら、「今録っている曲を聴いて感想を聞かせてよ」と言われて、聴かせてくれたのがあの名曲『You Are The Sunshine of My Life』でした。
スティービー・ワンダーとの固い友情
(S)で、毎日通いつめてタイミングを見計らって、曲を書いてとお願いしたら、いいよって。その後、活動再開の頃にスティービーから曲が届いて、ユーミン作詞、細野くんアレンジで復帰作として出す予定だったんだけど、「この曲が映画の主題歌に決まったから発売しないでくれ」と連絡が来て、急遽、発売中止になっちゃった。
それでユーミンが代わりに、『あの頃のまま』を作ってくれたの。
――ユーミン自身も、数ある提供曲の中で最も好きなのが、『あの頃のまま』とおっしゃってますね。
そしてそのスティービーがプレゼントしてくれた曲こそが、ジーン・ワイルダー監督・主演の1984(昭和59)年公開映画『ウーマン・イン・レッド』の主題歌『I Just Called To Say I Love You』ですね。全米1位になり、アカデミー賞を獲得した名曲。
(S)まあその後、無事に発売できたし、スタジオに行けたおかげでスティービーとスティーブン・スティルシュと3人でコーラスできたしね。
音楽的ルーツを語るときは少年の笑顔に
――すごい財産ですね。今まで見てきたアーティストで、スティービー・ワンダー以外で最も影響を受けたのは誰ですか?
(S)僕はサイモン&ガーファンクル(以下、S&G)かな。渡米して彼らのステージを生で観て感動して、それからあのボブ・ディランのくだりがあって、もう自分には音楽しかないと決心したきっかけだから。でも、アメリカでプロ活動が出来るとは思っていなかったから、帰国してS&Gのような音楽をやろうと決めたの。
(提供:茅ヶ崎ロックンロールセンターAGAIN実行委員会)
――1969(昭和44)年のメジャーデビューが決まったとき、日本のS&Gと謳われていましたが、それも割と合点がいってたんですね。デビュー曲『傷だらけの軽井沢』も垢抜けたものではなく、ノスタルジックなタッチですよね。
(S)まあ、和製S&Gというのはプロデューサーらが決めたことだけどね。あのデビュー曲も、どちらかというとメロディラインがロシア民謡っぽいよね。
デビュー曲『傷だらけの軽井沢』の告知ポスター
――二弓さんは、ビートルズに衝撃を受けてからはどんな影響を受けましたか?
(F)自分の中で強く残っているのは、トラフィックですね。兄と一緒にライブを観たんだけど、ステージ袖で観ることが出来て。いや、すごかったですね。それにスティーブン・ウインウッドは、何をやっても上手いねー! キーボードだけじゃなくて、ギターはエリック・クラプトンより上手いと思えるし、歌も白人離れしてるよね。
(S)今度、シカゴのドキュメンタリー映画をやるよね。あれ、楽しみなんだよね。
(F)エルトン・ジョンの『ロケットマン』も良かったけど、エイミー・ワインハウスのドキュメンタリーがすごい良かったね。ドキュメンタリーだから、作りものじゃなくてなおさらよかった。こないだ、テレビでウッドストックのドキュメンタリーもやってたけど、すごい時代だったよね。
広い音楽性と視野に脱帽
――ウッドストックは今年、おふたりと同じ50周年なんですよね。あれだけいろんなジャンルやスタイルのミュージシャンがひとつのイベントに集まるなんて有り得ないですもんね。
(F)有料だったのが、オーディエンスが殺到しすぎてフリーライブになっちゃったんだよね。すごいよねー。日本の音楽界は、ジャンルが違うと交流が少ないよね。日本はロックフェスも偏ってるから、みんながみんな楽しめないよね。
――そういう意味では、茅ヶ崎とか湘南界隈って、いろんな音楽や文化が混在してて、老若男女や家族で楽しんでますよね。
(F)ホントにそう! ロックもサーフミュージックもレゲエもDJも何でもありで、誰もがそれを楽しんでるよね。だからキマグレンやSuchmos(サチモス)みたいな、若いけど80年代のようなテイストの音楽も生まれるんだよね。
街が変わっても茅ヶ崎愛に溢れている
――では最後に、はまれぽ読者に一言お願いします。
(S)自分は海のそばで育って、庭が海のようなものだったから一年の半分以上を海で過ごしていたので、あの頃のブラックサンドビーチでゴミのないきれいな海をとても強く覚えてます。だから、茅ヶ崎があの頃のきれいな海に戻ってくれればいいなと思っています。
これからもみなさん、海をきれいにしないと、という気持ちをなくさないでもらえると嬉しいです。
家族で海水浴のひととき(提供:岩沢幸矢さん)
(F)地元出身歌手の宮手くん(TEMIYAN)が最近、森戸におせっかい食堂というお店を作って、料理人をやってるんですよ。ほかにも逗子のSurfers(サーファーズ)とか、友人が鵠沼にお店を作ったんで僕もそこで内装を手伝ったりとか、湘南のあちこちでそういう横の繋がりが広がってきたんで、そこからいろいろ何か新しいものが生まれてきたらいいなと思っています。
――50周年なのに、おふたりとも全くご自分たちの活動のPRがないんですね(笑)
(F)ほんとだね(笑)
(S)あはは、いいんじゃない(笑)
デビュー時のポスターと
取材を終えて
今までの音楽活動や奏でてきた音楽のように、終始、肩の力を抜いてリラックスした和やかなインタビューとなった。
半世紀以上共に生きてきた兄弟ならでの阿吽の呼吸による掛け合いが、通常のインタビューとは異なる楽しい取材で、まるで海にいるかのような穏やかな時間だった。
次から次へと出てくる、日本を代表する超大物アーティストの名前と逸話! さらには海外レジェンドとの交流。
そんな話しもサラッと流してしまう、自然体の姿こそが、彼らの魅力なのだろう。名だたるアーティストやディレクターの方々も、そんな人間性に惚れ込んだのだと思う。
数年間のソロ活動を経て、50周年イヤーを駆け抜ける。まだまだ今後もマイペースにライブの予定が決まっているので、ぜひゆったりと波音に耳を澄ませるように、彼らの音に触れに出かけてみては。
これからもご活躍を期待してます!
ー終わりー
ブレッド&バター出演情報
公演名/鳥山雄司 ~Happy 60~
日程/2020年3月7日(土)開場17:00/開演18:00
会場/昭和女子大学 人見記念講堂
出演/鳥山雄司、高中正義 、葉加瀬太郎、松任谷正隆、松任谷由実、ブレッド&バター
ナビゲーター/小山薫堂
プロデュース・音楽監督/武部聡志
Special Band /後日発表
チケット/一般席 11,000円/学生席 5,000円
公演に関するお問い合わせ/
サンライズプロモーション東京
0570-00-3337(平日12:00~18:00)
https://yujitoriyama-60th.com