高級住宅街、山手の住宅では道路側に洗濯物を干せないってホント?
ココがキニナル!
山手在住の方に「道路側に布団を干していたら町内会の人に外観が損なわれるからと注意された」と聞きました。どうやって布団や洗濯物を干してる?部屋干し?家のつくりが特別?(黒くてもシロッコさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
道路南側の住民は南向きのベランダに干し北側の住民には南向きではなく西向きに干す努力をする人も。専用のランドリールーム完備のマンションもあり
ライター:小方 サダオ
中区山手にある山手本通り・・・。教会、外人墓地、洋館などの歴史的建築物が山沿いの蛇行した通りに立ち並ぶ、横浜を代表する異国情緒に包まれた人気の観光スポットだ。
であると同時に、住宅やマンションも通りに面して多く建っている。
投稿によると、山手の住民が布団を干していたら「観光地としての景観が損なわれる」という理由で町内会の人に注意されたという。少し理不尽な気もするが、そのような景観基準が存在するのだろうか?
景観を守る意識の強い「山手町住人」の洗濯物の干し方とは
中区の山手本通り
まず横浜市の町づくりを計画する、横浜市都市整備局の担当者、立石さんに「山手の景観保全の基準は何をもとにしているのか」聞いてみた。
立石さんによると「1972(昭和47)年11月13日から実施された、“山手地区景観風致保全要綱”
を基準にしています。これは山手地区の自然美を維持保存する“景観風致保全”のために、指定区域における開発行為および建築行為を指導することを目的としたものになります」とのこと。
山手の「保全地区」(※クリックして拡大)
それは主に、建築物の高さ、壁面の色、樹木の配置などを制限する規則。
洗濯物の干し方に関する内容は明記されていない。
しかし都市整備局は、同時に「建物等に関する基準・景観を守る建築物の意匠」という基準も設けている。そこには・・・
「ベランダの布団や洗濯物等の干し物は、街の景観への影響が大きいため、外から見えないように工夫しましょう」
とある。横浜市としては、市全体の町づくりの基準として「洗濯物を目立たないようにする」指導を行っているのだ。景観保全地区の山手なら、強く指導したいのだろう。
山手住民はどこに洗濯物を干しているのだろうか(フリー素材より)
立石さんは「山手の住民の方々にも『景観に合うように洗濯物は表に出ないように、低いところに干してください』とお願いしています」と、言っていた。
ここで、「要綱」という決まりの性質について少し考えると、「要綱違反の洗濯物や布団を干す行為」が山手で行われていても、違法行為ではない、ということが分かる。
法令用語研究会編集の『法令用語辞典』によると、「要綱」とは基本的なまたは重要な事柄、またはそれをまとめたもの、とある。条例と規則と異なり、要綱には法的拘束力がないようだ。
樹木で隠れた印象があるが、洗濯物の干された港の見える丘公園近くのアパート
そのため立石さんも「山手の住民の方には、“建築物を登録する際に景観を損ねないような洗濯物の干し方”を指導します。しかしその後、景観に配慮しない洗 濯物の干し方をする方が出てきても、注意するようなことはないです。問題が起こったという前例はありません」と言っていた。
つまり「要綱違反の洗濯物や布団を干す行為」が山手で行われていても、違法行為ではないため、行政も町内会も何もできないようだ。
町内会は景観について指導している?
続いて投稿にある「町内会の人」に聞いてみる。山手周辺の町内会長連絡協議会の担当者に話を聞いてみた。
山手地区を分ける東部・西部の町内会長に「街の景観が損なわれないよう、道路側に布団を干さないよう注意をしているかどうか」質問したところ、お二人とも返事は「景観が損なわれるというような問題は起こったことがなく、注意をしたことはありません」というものだった。
それでは投稿のような事実はないのだろうか? そこで地元の住民たちの証言から、問題の真偽について迫れないかと現地を訪れることにした。
まずは山のふもとのショッピング街として有名な元町から調査を開始。元町も風致地区に含まれており、ここから山手の事情を事前調査してみよう。
買い物客でにぎわう横浜元町ショッピングストリート
元町町内会川岸地区の町内会長・高橋さんにお話を伺った。
「山手地区の洗濯物の干し方についての噂を聞いたことはありますが、単なる『ローカルルール』です。マンションの大家さんの『ペットを飼うな』と同じも の。地域が地域だから、なるべく通行人や観光客の目に触れないようにしようね、という感覚です。『いや、私は見られても良い』といわれたら、町内会として も何もできないでしょう」とのことだ。
元町川岸地区の町内会長・高橋さん
そこで高橋さんから聞いた“洗濯物の干し方”の噂の真相に迫ろうと山手の住宅街へ潜入を試みた。