待機児童ゼロとうたう横浜市、「保留」の扱いとは?
ココがキニナル!
知人が保育園の入園申請時に「保留」と言われました。「待機」でなく「保留」とのこと。横浜市の「待機児童ゼロ」は呼び方を変えただけ?待機と保留の違いは?なぜ保留等というの?(アソビンさん)
はまれぽ調査結果!
横浜が目指すのは「待機児童ゼロ」かつ「保留児童」にもしっかり対応すること。「待機児童」は「保留児童」から国が定める一定条件の児童を除いたもの
ライター:岡田 幸子
2013(平成25)年、メディアでも大々的に発表された横浜市の認可保育所「待機児童ゼロ」。保育所入所が困難を極める都心部の働く親にとって、センセーショナルな発表となった。
出産前から保育所入所にアクションを起こす「保活」もいまや当たり前!?(写真はイメージ)
とはいえ、現状では、横浜市で認可保育所への入所を申請した全員が入所を許可されるというわけではないのをご存じだろうか? その現状に迫ってみよう。
「待機児童ゼロ」の裏で数千人の「保留児童」が発生
横浜市の発表している資料によると、2013年の待機児童0報道以来、以降2年間の待機児童数は数名~20人の間となっているものの、希望通りの保育所等を利用できない「保留児童」は、2013年4月の時点でも1746人、2015(平成27)年4月では2534人も発生している。
千人単位の「保留児童」が発生(横浜市より※クリックして拡大)
港北区役所こども家庭支援課の窓口に伺うと「『待機児童ゼロ』だからすぐに保育園に入れるんですよね?」、「『待機児童ゼロ』なのに、『保留』で入園できないのはどういうこと?」との問い合わせも、正確な件数は分からないものの多くあるという。
「『待機児童ゼロ』をアピールしたいがために、表現を『待機児童』から『保留児童』に変えただけ!?」そんな印象を持つ人もいるだろう。
「待機児童」と「保留児童」の違いは?
「保留児童」の実態を探るべく、横浜市こども青少年局子育て支援部保育対策課の安形和倫(あがた・かずのり)係長にお話を伺った。
横浜市こども青少年局の安形係長
安形係長によると「利用調整により希望しても認可保育所などの入所が叶わないお子さまを、市では『保留児童』としています。そのうち、国の指針に基づいた一定の条件に該当していない子を『待機児童』として集計しているのです」とのこと。
つまり、「待機児童」の定義が国によるのに対し、「保留児童」は横浜市が独自に定めた用語。
「待機」と「保留」では主体性に異なる印象を受けるのだが・・・。
例えば「結婚を待機」と「結婚を保留」、ちょっと意味違うよね!?
「『待機児童』と『保留児童』で利用調整において差はなく、用語の選択に他意はありません。現在も周知に努めていますが、引き続きの課題でもありますね」
育休延長や求職しながら入所待ちは「待機」ではない!?
さて、安形係長の言う「国の指針」とは、2003(平成15)年8月に厚生労働省雇用均等・児童家庭局長が出した「児童福祉法に基づく市町村保育計画等について」という通知を指す。
これは「待機児童」の定義を一新したもので、横浜市の解釈によると、以下の条件に当てはまる子どもは、「待機児童」としてカウントされないことになるのだ。
国の「待機児童」定義を横浜市の現状に合わせて解釈すると・・・
(1)横浜保育室、川崎認定保育園、預かり保育幼稚園等の利用者
(2)育児休業中の家庭の児童
(3)第一希望のみの申込の方
(4)園や自宅の近くに利用可能で空きがある保育施設があると判断できるにも関わらず利用を希望しない方
(5)主に自宅において求職活動をしている方
(6)区役所職員が電話や手紙などで複数回所在を確認した結果、連絡がつかなかった方
・・・ん?
別施設に子どもを預けて働きながら認可園の空きを待つケース(1)や、保育所が決定するまで育休延長制度を利用し、職場復帰日を明確にしないまま入所申請を出すケース(2)、保育所の空きを待ちながらインターネットなどで求職するケース(5)は身近にもよく聞くが、すべて「待機児童」から除外される。
また、認可保育所の入所待ちをしていても、近所の保育ママ(家庭的保育事業)などに空きがあれば「待機児童」とはみなされない(4)ことになる。
これらをすべて除外してしまったら、そもそも「待機児童」の数を集計する意味がなくなってしまうのではないだろうか?