大船の「天龍」が40年以上の歴史に幕。名物ママさんが作る500円ラーメンを味わってきた
ココがキニナル!
大船で40年以上営業している老舗ラーメン店「天龍」が、2018年12月30日をもって閉店。 名物ママさんは元気なのか、別の場所でお店をやる予定はないのかキニナル!(はまれぽ編集部)
はまれぽ調査結果!
名物ママさんは相変わらず一見さんでも歓迎してくれた。残念ながら今のところは、別の場所でお店をやる予定はないそうです。
ライター:はまれぽ編集部
ずっと行きたいと思っていたラーメン屋さん「天龍」が2018(平成30)年12月30日をもって閉店すると知った。いつかいつか・・・と思って先延ばしにしていたが、そのいつかは永遠にやってこないことを思い知る。
激セマでちょっと入りづらいけれど、昭和の味と名物ママさんが待っているというのだから行く価値は十分にある。というか、名物ママさんに会わずして平成を終えることはできない!
朝ご飯を抜いていそいそと電車に乗り込んだ。
一見さんにも変わらぬ愛情
変な気合いが入ったのか、軍隊に入ったばかりのヘッポコ兵士のような足取りでJR大船駅に降り立つ。
東口から徒歩7分くらい
6分ほど歩いてそろそろかなぁ〜とキョロキョロしていると、黄色いバンダナをした小柄な女性が前方で自転車を停めていた。カゴには買ってきたばかりであろう浅葱(あさつき)がワサワサと揺れている。
きっと名物ママさんだ!
女性の後について、初めて「天龍」ののれんをくぐった。
来訪したのはちょうど正午を回った頃。店内にお客さんがいなかったので、もしや準備中かとギョッとしたが、意を決して声をかける。
筆者「あの~、やってますか?」
ママさん「やってるよ!!」
ほっ、良かった〜。前情報では不定休とも聞いていたからタイミングよく出会えて、すでに最高の気分。ママさんと同じ目元をしたおっちゃん(弟さん)が厨房で出迎えてくれた。
5つ並んだ丸椅子の一番左端に腰をかけると、ママさんがカウンターの上に水の入ったコップを置いてくれる。瓶ビールを頼むとついてくる小さな透明のコップだ。ゆっくりと店内を見回してみると、朱色で統一された店内の壁やカウンター、キッコーマンの卓上醤油瓶など、お店のそこかしこが昭和のラーメン屋さんっぽい。
平成生まれの筆者でも昭和の懐かしさを感じた
さて、何を頼もうか。前記事で、「ママさんは肩が上がらないから」とお鍋を振らないメニューを頼んでいたけれど、今日はおっちゃんもいる。
メニューの並びは以前の取材時から変わっていない
天龍メン、天龍丼、天龍定食など魅惑的なメニューが筆者を誘惑するが、やはり「ラーメン500円(税込み/以下同)」は外せないよなぁ。でも「チャーハン(800円)」もキニナル・・・。そこでママさんに相談してみた。
筆者「チャーハンって量多いですか?ラーメンとチャーハンどっちも食べたいんですけど」
ママさん「お腹空いてるの?いっぱい食べられる?」
筆者「はい、朝ごはん食べてないからお腹ペコペコです」
ママさん「じゃあ大丈夫ね、お腹空いてたらきっと食べられるよ!」
筆者「本当ですか!じゃあ、ラーメンとチャーハンひとつずつください」
なんだか初めて来たとは思えないほどママさんとの間に壁を感じない。この気の置けない距離感が天龍の魅力か。
もしや前に来たことあるっけ?と勘違いしてしまいそうになった
注文が入るとママさんはラーメンの麺を鍋に、おっちゃんはチャーハンのご飯を器に盛り始めた。無駄のない連携プレーだ。
それにしても、狭い(笑)。地図で見ると分かりやすいのだが、天龍は二等辺三角形のような形をしており、ちょうど底辺になる部分が従業員(ママさん・おっちゃん)用の入口、道路側の斜辺はお客さん用の入口だ。余分なスペースはない。
この小さな土地いっぱいにママさんの愛情が詰まっている
厨房ともお隣のお客さんとも距離が近いので、若輩者や一見さんが入るにはちょっとばかし勇気が必要かもしれない。でも、入店してママさんと一言二言交わせばそんな心配はどこかへ飛んでいってしまうだろう。
筆者からしたら特等席!
しばらくするとママさんが麺を湯切りする音が聞こえてきた。さきほどから鍋の中で泳いでいた黄色い麺が、熱々のスープが入った器に投入される。いよいよだ!
昔ながらの王道ラーメン
「はい、ラーメンね」とママさんがカウンター上に置いてくれたのは、500円とは思えない本格的かつシンプルなラーメン。
これはもう、絶対に美味しいやつだ!
手元に届いたラーメンからは醤油の香りがする。撮影もほどほどに黄金色に透き通るスープをすすった。
「あぁ~、うめぇ・・・」
口をついて出てしまった言葉に、「うめぇか、そりゃ良かった良かった」とママさんが笑ってくれる。
これが美味しくないわけがない
飲んだ後に来たら五臓六腑に染み渡るであろう想像が容易にできる。鶏ガラスープと醤油のシンプルな組み合わせは、サラリとしていてバランスが良い。
最近の「ラーメン」というと、昆布や魚介など厳選した素材を選んで出汁にこだわっているイメージも強いが、きっと昔はこういうシンプルなラーメンが主流だったんじゃないかなぁ。
楽しみにしていた黄色い中華麺はというと・・・!
中細ストレートで角切りっぽい麺
これがもう、本当に美味しいんだわ。力強いハリもありつつ喉越しは柔らかくて、ちょっとほっといたら緩くなっちゃう感じの麺。優しい味だけどキリっとした塩気もあるスープなので、この中細の麺が活きている感じがした。
ビールのつまみになりそうな味付けメンマと、これまたお酒が進みそうなガシガシ噛む系のチャーシューもクセがなくて飽きがこない。
たかがラーメン、されどラーメンだ。価格は少しずつ上がっているにしても、この値段でこのラーメンを食べられるなんて近所の人がうらやましすぎる。
そして例のアレも・・・。
「はい、たくあんどうぞ」
噂では聞いていた「たくあん」のサービス。ラーメンと一緒に出てきたのだが、どのように食べたらいいのか分からない。
筆者「たくあんって、どういう風に食べればいいですか?」
ママさん「好きに食べればいいんだよ。ラーメン食べてたくあん食べてチャーハン食べてたくあん食べて、またラーメン食べて・・・って、どんな風でもいいんだよ(笑)」
我ながらアホな質問してしまったと思ったが、ママさんが楽しそうに答えてくれたので「そっか、好きに食べればいいんだ」と早速たくあんをかじる。
天龍クオリティに感動していると、ラーメンに続いてチャーハンが手元に届いた。
こんもり丸く盛り付けられたチャーハン
1.5人前くらいある
チャーハンには、米なのかチャーシューなのか分からないくらい、細かく刻まれたチャーシューがたっぷりと入っている。甘いたくあんとチャーシューの塩気が抜群の相性で、ここにラーメンのスープを流し込めば天にも昇る気分だ。
食べている途中で入店してきた常連さんがラーメンを注文する中で、「はぁ~、うめぇ」とまたもやうっかり呟いてしまった筆者。すかさず常連さんが、「そうそう、ここはうまいんだよ!」と相槌を打ってくれてママさんも嬉しそうだった。
やっぱり一番の魅力はママさん
料理の美味しさはもちろん、やはり天龍の一番の魅力はママさんにあると実感する。
鼻水を垂らしながら夢中で食べている筆者に、「はいよ」とティッシュを差し出してくれたり、コップの水が空になる前に「水は?」と声をかけてくれたり、筆者が気付く前に気付いてくれる。そんな心配りをしてくれるママさんのおかげで4杯もお水を頂いてしまった 。
心なしかティッシュの箱もほほ笑みかけてくれてる気がした
それから3名の常連さんが入店すると、みなラーメンを注文。「今日は暑いねぇ~」なんて世間話をしながらラーメンをすすっている女性もいれば、黙々とラーメンを食べ進めるサラリーマンもいる。
ラーメンを食べ終えたサラリーマンが、ぴったり500円をカウンターに置いて店を後にしようとすると、ママさんは「ありがとう、また。30日まではやってるから」と声をかけていた。
この狭いカウンターも味になっている
聞けば、店舗の契約更新のタイミングで閉店を決意したそう。元気そうに見えても、やはり体力面の心配は尽きないのかもしれない。跡地は駐車場になる予定で、今後ほかの場所で「天龍」をやる予定はないとのこと。
閉店のお知らせは店内に
「寂しくなりますね・・・」と筆者がボソッとつぶやくと、「そらね~、そうだね」と目を伏せるママさん。
最終日の30日、夜営業をするかどうかは分からないと言っていたので、今まで気になっていても入れなかった方は是非30日のお昼までに足を運んでみてほしい。
美味しかったです、ごちそうさまでした!
取材を終えて
ママさんの人懐っこさというか、壁を作らないその空気感は誰もが作り出せるものではない。初めて訪れた人は気兼ねなく過ごせる場所だし、常連さんにとってはもう一つの家のような場所で、ママさんは家族のような存在なんじゃないかと思う。
ママさんの「ありがとう、また!」という短い挨拶に込められた思いは、きっと創業当初から変わらっていないはず。最後にママさんと同じ優しい笑顔見せてくれたおっちゃんの顔を見てそう思った。
500円玉を握って、最終日までにもう一度、「また!」と言ってもらいたい。
ー終わりー
天龍
2018年12月30日で閉店
住所/神奈川県鎌倉市大船3-3-5
不定休
※情報は取材当時のものです
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かまくライダーさん
2018年12月10日 15時23分
「取材です」っておばちゃんに伝えないでこの記事を書いたって本当?おばちゃんに記事を見せたら取材なんて来てないって
i-takaさん
2018年12月08日 19時39分
はす向かいにあった鎌倉ホビー館も閉店して、天龍も。これも時代なのでしょう。また古き良きが終了してしまいました。何か閉店のたびに街の温かみが減るのは気のせいなのかな?
DMさん
2018年12月07日 11時57分
ショックを受ける地元民は多いだろうな…