ハマ弁、ラグビー、新庁舎・・・横浜市が新年度予算で取り組む事業、どんな内容?
ココがキニナル!
2019年度の横浜市当初予算案、いったいどんな内容?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
ラグビーW杯開催イヤーの2019年度は、ハマ弁改善や新庁舎完成などの動きもありそう。一年でどんな事業が行われるのかチェック!
ライター:はまれぽ編集部
行政の取材をしていると耳にすることが多い「予算の関係上・・・」というセリフ。そう、お役所は予算がなければ動かない。逆に言えば、予算があれば動かざるを得ない。
そんな横浜の一年間を左右する平成31年度予算案が、2019(平成31)年1月25日に発表された。
市HPから誰でも確認できる
突発的な出来事への対応以外は、横浜市役所の一年間の動きは議決された予算によって決まる。とはいえ、分厚い資料なんて読む気が起きない!というのも当然なので、昨年に引き続き、今年もその内容をチェックしてみることにする。
新年度予算のあらまし
まず、横浜市の2019年度一般会計予算案は、前年から2パーセント増加の1兆7615億円と過去最高の規模。実に5年連続の増加を続けていることになる。
これは「たくさんのお金でいろいろなことができる」と受け止めることもできるが、それだけ「やらなければならないことがたくさんある」ということでもある。予算は一年間で使うお金の総額だが、それを得る手段(歳入)は市民税や固定資産税などの税金(市税)だけではない。
市債も1割近くを占めている(横浜市予算案資料より、クリックして拡大)
行政の借金である市債活用額1720億円と増加していることに加え、減額した国からの(税収入額が少ない自治体に対する)調整金である地方交付税交付金も、205億円ある。規模は大きいが、裕福な市ではないのだ。
そんな形で確保した1兆7000億円もの予算で、いったいなにをしようというのか?
予定事業の中でも「2019年」ならではのものや、横浜らしい予算の使い方をしているものを「はまれぽ的キニナル事業」としてピックアップしてみた。
あなたのキニナル事業もあるだろうか?
まずは、目前に控えたビッグイベントに関する事業を見ていこう。
ラグビーW杯・東京五輪への対策は?
2019年9月20日に開幕する「ラグビーワールドカップ2019」には、21億6500万円の予算が割り当てられている。横浜はこの大会の決勝戦開催地として、交通や警備、ボランティアの管理・運営などを担う役割がある。
横浜のあちこちでラグビー大会の広報が行われている
行政としては機運醸成に向けてこれまでもさまざまな取り組みを実施しているのが印象的だが、ラグビーになじみが薄い市民の反応はいまいちな面も? 大会開催年である2019年度も、より一層積極的な広報活動が行われるだろう。
会場となるのは日産スタジアム。バリアフリー改修も進んでいる
日本ではまだまだラグビー熱は発展途上だが、世界的に見れば大人気スポーツ。決勝戦の会場となる日産スタジアムの整備などお金がかかる分野も多いが、ラグビーファンの富裕層が大会を目当てに集まってくることは、サッカーワールドカップ以上に経済効果があると話す関係者もいるほどだ。
さらに、試合会場周辺に設置される誰でも入れる「ファンゾーン」や、大会を盛り上げるシティドレッシング(都市装飾)などは、直接試合を見に行かない人でも楽しめる催しだ。アジア初の世界大会、せっかくなのでお祭りとして楽しむのが吉といえそう。
ファンゾーンでは試合中継やさまざまな催しが行われるはず(写真は2016年)
そして、ラグビーW杯の翌年に控えるのが、2020年の東京五輪。
横浜だけでなく県内にはいくつか五輪会場があるが、その負担は?
この開催準備には3億6300万円が計上されている。
2017年ごろには五輪大会関連の予算について、東京都、国、五輪組織委員会の3者だけではなく、会場のある東京以外の都市にも負担を求めるのか、と話題になった。
横浜市が予算対応するのは、大会後も市民のメリットとして残るような各会場のバリアフリー化や、会場外での観光案内などを行うボランティアスタッフの研修など、範囲はある程度限定されている。とはいえ、少なくない額が五輪の成功に向けて使われることになる。
パブリックビューイングなどを行う「ライブサイト」の市内整備も検討されているようだ
一方で、市内には英国代表チームが「事前キャンプ」に来ることになっており、そのホストタウンとしての取り組みや、出場選手と市内小中学生の交流事業なども行う予定。子どもたちや五輪にあこがれる若者の夢を繋ぐというメリットは大きく、ソフト・ハード両面で準備が進むことになりそうだ。
2020年のあとは?
東京五輪が迫る中、世間では2020年までの大きな大会が終わったあと、日本経済の停滞も心配されている。
その先の横浜も見据え、市が目指しているのが「国際園芸博覧会」の2026年招致を成功させることだ。そのために2019年度は1億2300万円の予算を計上している。
会場候補地は、旧上瀬谷通信施設
2015年に返還を受けた施設跡地は、民間の農地と市や国の土地が入り乱れており、開発のためにはその整理が必要になる。周辺の公共交通の強化なども必須で、やるべきことは山積しているといえる。
この国際園芸博覧会開催に向けた機運醸成とも言えるのが、毎年行われている「ガーデンネックレス横浜の推進」だ。市内会場を花でいっぱいにするこの取り組み、2019年度予算には7億1000万円を盛り込んでいる。
これまでも事業が続いてきた「ガーデンネックレス横浜」だが、2019年は新たにバラをテーマにした「横浜ローズウィーク」を開催し、さらに規模を拡大する方針。市内には都市部だけではなく、緑豊かな郊外部や農業地帯もあるため、こうした事業でそうした魅力をPRしていく狙いがあるようだ。
一方、市民からは不満の声も大きい「横浜みどり税」では、「横浜みどりアップ計画」の推進に125億6500万円が計上されている。
これは、みどり税を財源の一部に使い、市内の樹林地や農地を保全を行い、みどりの創出に取り組むというもの。イベント的ではない形で、緑あふれる都市を実現させていこうという事業だ。
農地や芝生を中心に、みどりの総量は確実に増えているようだが・・・
さらに、緑の充実を含む環境向上に関連して、公園の整備も進めるために「市民の憩いの場となる公園の整備、公民連携の推進」に159億5300万円が盛り込まれている。
市内では、(仮称)鶴見花月園公園、(仮称)小柴貯油施設跡地公園、(仮称)舞岡町公園などの大規模公園の整備が進んでいる。そのほかにも、身近な公園や日産スタジアムなどの安全対策も進めることとしている。
舞岡のリサーチパークでも、大規模な公園が出来上がりつつある(過去記事)
近年横浜に限らず課題となっているのが、ただ行政が負担をするだけではなく、公園に民間のノウハウを取り入れた収益化を果たすこと。
横浜市では「公園における公民連携の基本方針(仮称)」を踏まえ、里山ガーデンで遊戯施設等の整備や民間事業者と連携したイベント実施等の取組を進めていく方針で、新しい公園の姿が見られるようになるかもしれない。
郊外部のまちづくり
こうした緑あふれる街を作るという方針にもかかわることだが、郊外部を始めとしたまちづくりの推進も、積極的に進めるための予算が組まれている。
瀬谷駅の南口が生まれ変わる!
「鉄道駅周辺のまちづくりの推進」では、69億8500万円を計上。これは大船駅北側や瀬谷駅南口といったエリアで駅前広場や商業施設、都市型住宅などの工事を進めるための予算。さらに、新綱島駅周辺では土地区画整理(土地の区画を調整し、道路幅を広げるたりすること)をはじめ、市街地開発事業が進むことになりそうだ。
一方、横浜のまちづくりを考えるときに外せないのが、米軍施設の跡地利用の問題だ。2019年度、11億5900万円の予算を計上してこの課題に取り組むことになっている。
返還されたばかりの旧上瀬谷通信施設
国際園芸博覧会の開催も見据えて整備が検討されている旧上瀬谷通信施設では、既に返還されている土地での農業振興や土地活用を進めるため、市が土地区画整理や公共交通の導入に向けた検討を行う。
在日米軍用の住宅が立ち並ぶ根岸住宅地区では、今後の返還を見据えて、跡地をどのように利用するかを定める基本計画の検討を進める予定だ。
また、泉区の旧深谷通信所は、返還後の跡地利用の具体化を進めていく方針。一方で、この地域では公園と墓地が一体となった「公園型墓園」の整備に向けて環境影響評価の手続きを行い、墓地需要への対応に生かしていく。
今も円形の通信所跡地
旧深谷通信所での取り組みも含め、「新たな斎場・墓地の整備」には15億7700万円が計上。鶴見区大黒町の私有地に建設予定の東部方面斎場の基本設計を進めるほか、舞岡地区では「公園型墓園」の整備向けた造成工事が行われる予定だ。