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家系総本山「吉村家」創業者、吉村実氏にインタビュー。今の家系ラーメン業界について何を思う?

家系総本山「吉村家」創業者、吉村実氏にインタビュー。今の家系ラーメン業界について何を思う?

ココがキニナル!

家系ラーメンの生みの親、吉村実氏にインタビュー。「家系ラーメンとは」「直系店舗・人を育てること」「吉村家の今後」についてうかがう。

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ライター:はまれぽ編集部

家系総本山「吉村家」。その名を出さずして、家系ラーメンは語れない。そして「吉村家」創業者、吉村実(よしむら・みのる)氏なしには、家系ラーメンを語るなど言語道断だ。

このたびはまれぽでは、吉村実氏にインタビューする機会に恵まれ、全国のラーメンファンがキニナっているであろう、「家系ラーメンとは」「直系店舗・人を育てること」「吉村家の今後」についてお話ををうかがった。脚色なく、そのままの吉村氏の言葉を前編・後編でお届けする。
 
 
 

家系総本山「吉村家」


 
まずは「吉村家」について、簡単におさらいしておこう。
今や世界に名を轟かせる「家系ラーメン」だが、始まりは1974(昭和49)年、磯子区新杉田駅近くで誕生した一軒のラーメン店だった。その店主こそ、現吉村家会長の吉村実氏だ。
吉村氏は、トラックの運転手や左官業などさまざまな仕事を経て、「吉村家」を開業。
 


家系ラーメンの本家本元「吉村家」のラーメン

 
とんこつと鶏ガラをベースにしたコク深い醤油スープ、酒井製麺の極太麺、鶏油、チャーシュー、ほうれん草、海苔をトッピングした家系ラーメン王道の姿を作り上げた。
息子さんが吉村家の社長となった今も、午前5時からラーメンの仕込みを続ける吉村氏。これまで語ることのなかった、今の家系ラーメンに対する想いとは。
 
 
家系ラーメンの生みの親、吉村実
 
2019(平成31)年2月下旬、吉村家からほど近い飲食店に吉村実氏(以下、吉村氏)は現われた。
黄色のコートにストールを巻いており、「黄色が好きなんですか?」と問うと「これはね、金運だよ、金運!」と笑顔で答えてくれる。吉村氏に対して勝手に抱いていた怖いイメージが払拭されるような笑顔だ。

席に着くと「今日は無礼講で、なんでも聞いてください」と吉村氏。遠慮なく、いろいろと突っ込んだ質問をさせていただいた。
 


終始、真っ直ぐな眼差しでインタビューに対応してくれた

 
 
ーーー現在の家系ラーメンについて、どう思っていますか?
 
吉村氏「危惧しているよ。家系が世界に名を馳せるようになったのはウェルカムだけど、ただ、本物を出してほしい。本物を出していないから吉村家があんなに(混雑)なっちゃってるんだ。お客さんが来すぎて吉村家は大変。日本と海外合わせて家系が2000軒ある中で、3分の1が缶詰、3分の1はガラとかチャーシューが輸入もの、残りがまともにやっている。良い若い衆がいなくなったな」
 
 
ーーーラーメン店から連絡が来ることは?
 
「ある。俺のところにね、『どうしたらよろしいでしょうか』って。『そんなの自分に聞け!』ってガチャンって切っちゃうんだよ。朝の貴重な仕込みの時間に、面倒だし、緊張感がなくなるんだよ。下手なやつだと朝お土産もって来るけど、お茶菓子なんかいらねぇんだ」

「でもどっかで何かしなきゃだめだな、と思ってる。30パーセント・・・いや、半分が当たってない。俺は他業種の社長さん方を見てきたから、どうやったら成功するかってことを教わった。今ラーメン屋さんやっている人間は、そういうヒントがないんだよ、だから『売れない売れない』って四苦八苦しちゃって。かわいそうだけどな」

「まぁ、吉村家はちょっと異常なのかもしれないな。ラーメン屋を44年やってるなんて、なかなかいないからな。それもまたトップを走り続けている。当たるにはコツがいるし、コツを掴めばそんなに難しいもんじゃない。72歳になって、どういうやり方が成功するのかな、っていうぐらいはラーメン屋で分かったかな」
 


「俺は一か八かの勝負が多いから」

 
 
ーーー何が大事なんでしょうか
 
「腕だけじゃない、ハートだけでもない、両方なの。愛情注入して美味くなるならみんな美味くなってるよ。だからな、やっぱりトップを走り続けている人と喋って、ヒントもらってっていうのがいいんだと思う。だから、僕は教えてあげようかなって最近思っているんだ、あんまりに来るからさ。それでもね、99パーセントが裏切る。ダメだねぇ。裏切らないのは『杉田家』さんと、『はじめ家』さん」
 
 
ーーー平ザルを使っていたのに、急にテボになったお店もありますよね
 
「『こうやったら美味しくなる』ってモデルケースを見せているのに、大変だからってその真似をしない。僕は何百回も練習したから分かる、空中切りなんて美味しくないんだよ。それに麺は大きな鍋で湯がいたほうが美味しい。小さい鍋でやれば、湯も止められるっていうのは金のない人間の発想だ」
 


平ザルを扱う技術を習得するには何年もかかる

 
 
ーーーセントラルキッチンについては?
 
「黙っているけど缶詰使っているところは少なくないね。吉村家から出た人は“うまい要領”を知っているから、どうやったら簡単にできるか知っている。でもね、悪いんだけど生ガラはうち(吉村家)が抑えちゃってるから、横浜市の市場いってもそんなに出ない。材料自体が手に入らないんだよな。こんなこと今日初めて言ったよ。でも、お客さんバカじゃないから。そういう人が自分で店やってもそんなに繁盛しないんだ。ラーメン博物館のあれだな、『豚ガラ、鶏がら、人柄』ってやつだ。うまいこと言うよな(笑)」

「スープは動物性だから、6時間何もしないでそのまま置いておいたら腐っちゃう。それが一年中腐らないっていうのは、なんか入ってるんだろうな。最近じゃ後ろの食品表示をよく見るようになったよ。うちは30年前から醤油は無添加。無添加は取扱いが難しいから、回転が良くて売れないとすぐにダメになっちゃうんだ。酒井製麺さんもかなり早い時期から保存料を入れるのやめたしな」
 


家系と言えば、酒井製麺さん