横浜市の中央図書館で「アンネの日記」が破られた、その事件の経緯は?
ココがキニナル!
東京で被害があった、「アンネの日記」が横浜市の中央図書館で破られていたということを詳しくしらべていただきたいです。(mona tai さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
2月27日現在、横浜市立図書館におけるアンネ・フランク関連の書籍の被害は2冊。警察に被害届が出され捜査が開始されている。
ライター:松崎 辰彦
アンネ・フランクの本が破られている(続き)
すでに警察に被害届を出し、その際に証拠物件として提出したため現物は手元になく、別の図書館から持ってきた同じ書籍で説明してくれた。
被害部分について説明する坪内氏
巻頭の写真部分が引きちぎられていた
「神奈川図書館の本は『アンネの日記完全版』というタイトルです。本文ではなく、訳者の書いたあとがきの部分が5分の1ページほど、タテに破られていました」
こうした犯行は、職員の方々により発見されたものである。くわしい説明をいただいた。
「2月21日(金)昼頃、私は“東京都内でアンネ・フランク関連の書籍が大量に破られる事件が発生している”という連絡を受けました。それで同日午後2時半に、横浜市の全公立図書館にメールでそのことを伝えました。そしてここ中央図書館でも被害はないか、アンネ・フランク関連の図書を調べましたが、そのときは発見されませんでした。翌日22日(土)、午前9時ごろ、9時半の開館に備えて職員が書架整理をしていたところ、この本の写真部分が切り取られていることを発見しました」
書架にこのようにあったが、調べてみたところ・・・
神奈川図書館の被害は、25日(火)に発覚した。その日、中央図書館から「アンネ・フランクの書籍に被害が発生した。ついてはすべてのアンネ・フランク関連図書をカウンターの職員の目の届く位置か、書庫に引き上げること」という指示が出たので、職員が書籍を調べたところ、ページが破られているのがわかったとのことである。
公開の書架から引き上げられている
こうした事態を受けて、横浜市は26日に神奈川県警に被害届けを提出した。現在、アンネ・フランク関連の書籍はすべて来館者が自由に手に取ることのできないカウンター、書庫などに引き上げられている。
「公共図書館の役割を考えると、図書を市民の手の届かない場所に置くことには抵抗があります。しかし現実に被害が出ている以上、資料管理という面から何もしないわけにはいきません。市民の皆様にはご理解をいただきたく思います」
犯行に関しては、「閲覧室で本のページを破るのは、人目もあり、かなり難しいと思います。あるいは本を借り出して家で破いたとしても、返す際に職員の手を通すわけで、発見される危険があります。もしかしたら図書館内の人目につかない、トイレのようなところに持ち込んで破いたのかもしれません」
ほかの利用者や職員の死角をついての犯行か
これまでにも所蔵する本のページが破られたり、書き込みをされたりなどということは、しばしあったと坪内氏はいう。
「歴史の本などで、記述されている著者の学説を上から塗りつぶし、自分の考えを書き込んだりする人がいます。ページが引きちぎられることもあり、悪質なものは被害届を出したことも過去にありました」
しかし今度のように特定個人に関する書籍のみ、広範囲に被害に遭うという事態は記憶にないという。今回の事件について思うところを伺った。「図書館の書籍は公共の財産であり、叡知の結晶です。とくに『アンネの日記』は世界記憶遺産にも登録されています。それなのにこのような事態になり、腹立たしい限りです」
横浜市での被害発覚以来、メディアが押し寄せて対応に追われているという坪内氏。犯人に関して「東京と同一の犯人かどうか、わかりません。あるいは模倣犯の可能性もあります」と推測する。
かくして現在、横浜市の図書館にある約50タイトル、340冊のアンネ・フランク関連の書籍は公開の書架から引き上げられ、一般利用者に不便を強いている。いつになったらこの異常事態が解消されるのか、当面様子を見るしかないという。