無料の野毛山動物園をはじめ、横浜市の動物園が充実している理由とは?
ココがキニナル!
野毛山動物園はなぜ入園料無料なのですか?野毛山のほかにも数が多いですし、ズーラシアの広大さ、充実ぶりを見ると市の動物園にかける情熱を感じるのですが、何か理由があるのでしょうか?(かもめさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
野毛山動物園が無料なのは、当時の市長の決断。画期的な動物園を目指す市と、動物園を残したい地元民の要望を合致させた結果、4園が存立した。
ライター:河野 哲弥
「野毛山動物園」の誕生
横浜市内で最初に開園した動物園、それは、「野毛山動物園」になる。
その歴史については、以前の「野毛山動物園は無料なのにどうやって入場者を数えているの?」の記事を参照してもらいたい。
同園が無料となったのは、1964(昭和39)年の遊園地部分閉園がきっかけ。それまでは「野毛山遊園地」であったため、主たる施設の閉鎖に際し、当時の飛鳥田市長が動物園は社会教育施設であり、市民の憩いの場として無料にしたのだそうだ。
市内では一番歴史のある同園入口
続いて1970年代。第二次ベビーブームで生まれた子供たちが小学生になるころ、横浜市郊外に動物との触れ合いを楽しめる施設を作ろうという動きが、市で検討されはじめた。
「万騎が原ちびっこ動物園」の誕生
そこで1979(昭和54)年、旭区の「こども自然公園」内に、野毛山動物園の分園という形で「万騎が原ちびっこ動物園」が開園されることになった。
「万騎が原ちびっこ動物園」の様子
モルモットなど、4種の動物たちと触れ合うことができる
同園は、小動物に特化した体験型の施設であり、動物園とは言い難い。そこで横浜市は、いよいよ本格的な動物園の建設に向けて動き出すことになった。
「金沢動物園」の誕生
当時市が考えていたのは、今までにない、画期的な動物園だった。
まず、動物を閉じ込めている狭いオリを廃止。その代わりとして採用したのが、堀などで隔てられた自由な環境の中で、のびのびと動物を飼育する「無柵放養式」である。また、動物のことをより理解してもらうための工夫として、園内のゾーンを「大陸別」に分けることになった。さらに、動物園の目的に「種の保存」という考え方を取り入れ、希少な草食動物の育成・展示に力を入れた。
こうして1982(昭和57)年、横浜市にとって初の本格的な動物園となる、「金沢動物園」がオープンしたのである。
のびのびと過ごす、同園のキリンの姿
今では当たり前に思われるこうした工夫の数々だが、横浜市は30年も前から、当時としては斬新的な取り組みを行っていたことになる。
時代は平成に入ると、「野毛山動物園」の老朽化が問題となってきた。そこで市では、「野毛山動物園」と「万騎が原ちびっこ動物園」の閉園を前提に、新しい総合動物園の建設を目指すことになった。それが「ズーラシア」である。
「よこはま動物園(ズーラシア)」の誕生
開園は1999(平成11)年、その広さは約41ヘクタールで、東京ドームに例えると約10個分。いまだ建設途中というとてつもなく広大な動物園である。
「ズーラシア」の人気者、「森の貴婦人」と呼ばれるオカピ
金沢動物園の方針でもある「動物の生息状態をそのまま展示する」という考え方は、当然「ズーラシア」にも受け継がれることになった。ところが、開園当初は、「動物がいない(見えない)」、「広くて疲れる」など、不評の声も少なくなかったそうである。
そこで同園では、こうした意見を反映し、飼育員による解説付きの展示や、園内を走るオカピ型バスなどを取り入れている。
なぜ「野毛山動物園」は廃止されなかったのか
こうして、「金沢動物園」と「ズーラシア」の2園に、動物園を集約させようとした横浜市。ところが、「野毛山動物園」の廃園には、地元などから強い反対運動が起こったそうだ。野毛には、「動物園通り」という名前の商店街があるように、同園と深い関係を保ってきた歴史がある。しかし、残すにしても、維持管理費用が必要となってくる。
「野毛山動物園」のレッサーパンダ「ウミ君」、その運命はいかに
そこで、市の税負担を軽減すべく、地元からの寄付(年間約300万円)を募ることで折り合いを付け、「万騎が原ちびっこ動物園」と共に、現状維持の無料としている。
こうした結果、市内の4園には、自然に役割分担のようなものができたと、松嵜さんは話す。
「野毛山動物園」は、小さなこどもたちにとっての、動物園デビューの場。
「万騎が原ちびっこ動物園」は、小学生などに向けた、動物たちとの触れ合いの場。
「金沢動物園」は、4年前からはじまった「エコ森プロジェクト」を主体とした、環境保全の場。
「ズーラシア」は、遊びながら学べる「エデュテーメント(エデュケーションとエンターテインメントをつなげた造語)」の場。
また、動物園の数自体も、世界の主要都市と比べて「相応である」と捕らえているとのこと。
横浜市提供資料「世界の動物園」
ニューヨーク「4園」、ロンドン「2園」、パリ「3園」、東京(23区)「3園」と続く
横浜市の動物園にかける情熱
横浜市の動物園が充実している理由。
そこには、画期的な動物園を造ろうとした横浜市の情熱と、昔から続く動物園を残したいという地元の情熱の、2つの想いがあったからではないだろうか。
ちなみに、「ズーラシア」には来春、新たに「アフリカサバンナゾーン」が誕生する。いろいろな動物を一緒に飼う「混合展示」をはじめ、さまざまな工夫が随所になされているらしい。
いまだ冷めやらぬこうした市の情熱に、引き続き、期待をしていきたいと思う。
―終わり―
myuuchan2さん
2016年02月18日 13時21分
先程の投稿で、家畜中心と書きましたが、現在は、大型家畜はいないんですね。一時は、黒毛和牛や日本短各種(牛)、や、リャマなんかもいたような記憶があります。飼育に手がかかるし、ご時世とはいえ、普段お世話になっている家畜の展示は続けてほしかったですね。
myuuchan2さん
2016年02月18日 13時11分
万騎が原ちびっこ動物園は体験型、とサラっとスルーされてしまっていますが、実は、家畜中心の珍しい展示なんです。牛、豚、ヤギに羊、水牛、さらに、家禽では、日本鶏がずらり。日本鶏は天然記念物。一般の動物園でこれだけの品種がそろっているのはあまりないのでは?ここができたころの話で古いのですが、某・農業大学の学生時代に、家禽論の試験が、「日本鶏の鳴き声を真似よ」という実技試験でした。試験前には皆でテープレコーダー持参で、ここの日本鶏ケージの前で、鳴いてくれるのを延々と待ったものです。
ひろくすさん
2013年02月16日 16時14分
野毛山動物園には募金箱もありますし、スポンサー制度もあります。これからは、少額ずつでも寄付をしていきたいと思います。