横浜では有名!? 河童がいたという川の伝説について教えて!
ココがキニナル!
ほとんど暗渠(あんきょ)化された滝の川や、鶴見川など横浜に古くから伝わる河童伝説と、その真相について調査してほしいです。(ねこぼくさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
現在は河童が姿を見せるには難しい環境かもしれない。今回は滝の川、鶴見川、いたち川に残る河童伝説を紹介!
ライター:ほしば あずみ
鶴見川河童伝説
鶴見川には99匹の河童がいたといわれる。さしずめKPA99といったところだろうか。そのセンターを務めていたのが次郎河童。
河童たちは川で遊ぶ子どもたちにいたずらをしていたという。
ある時、漁師の太郎兵衛(たろべえ)という力自慢の男が、生麦の北浜の桟橋で居眠りをしていた次郎河童を見つけて追い払う。すると後日「あの時は油断した。相撲で勝負をしたい」と彼の前に次郎河童が現れた。
河童は相撲好きだと言い伝えられている(イメージ)
いざ相撲をとると、太郎兵衛がどんなに押せども退けども次郎河童はびくともしない。とうとう太郎兵衛が降参すると、実は次郎河童だと思ってしがみついていたのは大きな松の木だった。
騙された太郎兵衛は、数日後また桟橋にいる次郎河童を見つけるなり、家から鰻鎌を持ちだしていきなり次郎河童に切りつけた。
鰻鎌とは、およそこのような形状をしたウナギをひっかけて捕える漁具(干場画)
凶器による殺傷沙汰である。巷でいう「やられたらやり返す倍返し」の結果、次郎河童は悲鳴をあげて川へ飛び込み姿を消す。
太郎兵衛にとっては武勇伝だったが、それを聞いたおばあさんが次郎河童をあわれに思い、「二度と人前に現れてはいけないよ」と好物のキュウリを川に流した。以来、河童は姿を見せなくなったという。
現在の鶴見川。JR「国道駅」付近から河口へ向かう
JR鶴見線の鉄橋の下には、のんびり釣り糸を垂れる太公望とそれを眺めるおじさんたち。
「河童をさがしてるの? 釣れたら教えてあげる!」
・・・ありがとうございます。
遠浅で干潟状だった生麦周辺は江戸時代からたびたび埋立が行われてきた歴史がある。言い伝えの「北浜の桟橋」がどのあたりでどのような風景だったのか、今ではわからない。
カモメに聞いてもわかりゃせぬ
鵜の目鷹の目で探せと・・・
かつては真っ白い貝殻の浜が続いていたという生麦の面影を残すのは、この保全された干潟「貝殻浜」。
漁船が並ぶ生麦の風景は江戸時代、鶴見八景の「江口の帰帆(きはん)」として名高かったという
保育園仲間だという家族連れの団体が川遊びをしていた
次第に子どもたちが、河原で甲羅干しをしているKPA99に見えてくる
対岸は市立横浜サイエンスフロンティア高校
いたち川河童伝説
栄区を主流とするいたち川の河童は、小菅ヶ谷の「城山堰(せき)」という用水路付近に住んでいたという。
付近の田畑をうるおすために、城山とも白山とも呼ばれた小高い丘の近くに作られた堰だったが、大正時代ごろは子どもたちの恰好の遊び場になっていた。
明治時代の小菅ヶ谷付近
(出典:独立行政法人農業環境技術研究所/歴史的農業環境閲覧システム)
水の流れで次第にえぐれて深みができ、そこに子どもがはまったり溺れたりするので親たちは心配していた。その親心が、いつしか城山堰には河童がすんでいるという噂に変わっていったようだ。
城山堰が用をなしていたのは昭和のはじめごろまで。その後、しろ山は旧海軍燃料廠(しょう)の敷地の一部となり削られて姿を消す。
城山は橋の名に残っている
しろ山があったあたりには現在公務員宿舎が建つ
いたち川には敗戦時に武器弾薬や化学薬品が遺棄されたため、川床はコンクリートブロックで覆われた。河童も住みづらくなってしまったのではないだろうか。
それでもなんだか河童が現れそうな気配もする
カッパ頭のイタチ! と思ったら蝶が乗ったデザインだった
取材を終えて
城山堰の河童は、子どもを思う大人たちのまことしやかな作り話だったのではと考えられている。日本各地の河童伝説の中にも、そうした由来が潜んでいるのかもしれない。それでもやはり河童は本当にいて、豊かな環境でのんびりしたがっていると思いたい。
いたずらをしてもどこか憎めないユーモラスな妖怪は、実在していてほしい。
―終わり―
参考文献:
『横浜の伝説散歩』(重富昭夫著/神奈川新聞社/1986)
『神奈川の民話1よこはまの民話』(萩坂昇著/むさしの児童文化の会/1981)
『市民グラフヨコハマNo.111-122(保存版⑫)』(横浜市市民局市民情報室広報センター/横浜市市民局広報相談部広報課/2000)
『ふるさと戸塚・体験でつづる明治・大正・昭和』(郷土戸塚区歴史の会編/戸塚区老人クラブ連合会/1979年)
『本郷の民話と伝説』(本郷郷土史研究会編/戸塚区役所本郷支所/1982)
Levicoさん
2013年10月05日 10時22分
河童は我々が持つイメージと近いかどうかは別として、実在したのでしょうね。干場さんの文章はとてもリズム良く読むことができ、内容も面白いので大好きです!
つじどさん
2013年10月03日 20時54分
見つかっていないだけで、いまでも何処かで静かに暮らしているのではないでしょうか...
たこイチローさん
2013年10月03日 15時02分
河童・・・これだけ津々浦々に伝説を残す生物なんですから、実在しておかしくないんですけどねぇ。ちなみに水木しげるさんの漫画で私がいちばん好きなのは「河童の三平」です。何度読んでもラストは泣ける。関係ないけど。干場さんのユーモアあふれる文章もグッジョブでした! ただし、生麦の写真は「やらせ報道」として訴えようかと思います(嘘・笑)。