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怪談めいた話が出てくる? 川崎市高津区にある地名「子母口(しぼくち)」の由来を教えて!

ココがキニナル!

川崎市高津区に「子母口(しぼくち)」という地名の地区があります。かなり変わった地名で、その由来が必ず何かあると思います。何か怪談めいたものを想像してしまうのですが・・・(ねこぼくさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

丘に挟まれた地形を意味する「しぶ」から「しぶくち(渋口)」と呼ばれ、後に訛っていき「子母口」に落ち着いたという説が有力。怪談めいた話はない

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ライター:橘 アリー

蓮乗院でも新説との思わぬ出会いが


 


プラザ橘方面から尻手黒川道路を渡って住宅地の中を抜けて行くと
 

蓮乗院がある

 
ちなみに、蓮乗院の隣に橘樹神社がある。
 


手前側のフェンス内部が蓮乗院で、フェンスが終わった先にあるのが橘樹神社
 

蓮乗院敷地内の様子。中央が本堂

 
蓮乗院は、1692(元禄5)年に開創された真言宗のお寺で、ご本尊は、準提観世音菩薩(じゅんていかんぜおんぼさつ)である。
ご住職の代田(しろた)さんに、庚申塔の場所を案内していただいた。
 


庚申塔のある不動堂は、お寺の門を入ってすぐ右側にある
 

不動堂の前を通って行くと
 

裏手に庚申塔が見えてくる
 

これが庚申塔
 

ご住職の田代さん


「元禄四年二月四日武州子母口村」と書かれている庚申塔は左から二番目のもの。
 


この庚申塔である。ご住職が示してくださっている辺りに「子母口村」と書かれている

 
ご住職によると、ご本尊の準提観世音菩薩は、江戸時代には子育てや女性の守り神として信仰されていたとのこと。
また、昔は、このお寺の近辺は、シメジが一面に生えていたので「しめじ河原」と呼ばれていて、お腹を空かせた旅人なども、ここへ来れば空腹を満たすことができたそうである。

そして、子育てや女性の守り神から“子と母”、「しめじ河原」で空腹を満たすことができたことから“口”。
それが「子母口」の由来の一端に関係があるようにも思える、と田代さんは話してくれた。

ここにきて、思わず5つ目の説を発見・・・。

最後に「地名資料室」へ行って、いったいどの説が有力なのか、調べてみることに。



どれが有力な説なのか!?


 


「地名資料室」はテクノ川崎の4階にある
 

はたして有力な説はどれか・・・

 
ここでは、調べたい地名について、どの資料に載っているのかを的確に教えて貰える。

見せていただいた数々の資料と、資料室の係の方の説明によると、現在の「子母口」は、中世の南北朝期には「渋口郷」、近世の江戸期から1889(明治22)年までは「子母口村」、それ以降は「子母口」と呼ばれてきたそうだ。

そして、「渋」の由来は、「金渋が流れてきたから」では無く、丘に挟まれた地形を意味する「しぶ」から「渋口(しぶくち)」と呼ばれ、後に「しぶ」が「しぼ」に転じて行ったという説が有力のようである。

丘の挟まれた地形は、明治時代の地図で確認することができる。
 


1881(明治14)年当時の「子母口」近辺の様子(『東京都市地図3』より)

 
ちなみに、「地名資料室」は資料のコピー不可。この画像は、同じ資料をほかの図書館で探してコピーをとり、作成したもの。

地図中の緑のところが丘で、オレンジの線の上に子母口村と書かれていて、オレンジの破線で囲んだ辺りが子母口村である。

地図で確認すると、確かに、丘の挟まれた地形であることが分かる。
 


現在の子母口近辺の地図

 
最後に、渋口から子母口に転じていった由来について。
これに関しては残念ながら、正確なところは不明であるが、下記のような説がある。

(1)「渋口」の地形が、丘から低地に口を開く舌のような様子だったことから、乳児の愛らしい口元とほほ笑む母親の口、子と母の口を連想してつけられたのではないか説。(『川崎さんの地名判断』より)

(2)「しぶ」は“しぶい”“けち”“不平不満”などの意味があるので、良い意味のある言葉に転じたのではないか説。(『川崎さんの地名判断』より)

これに蓮乗院のご住職が推測された、子育てや女性の守り神から“子と母”、しめじ河原で空腹を満たすことが出来たことから“口”ではないか説を加えてみると・・・。

どの説をとっても、そこには、良い意味にしようという気持ちがあって付けられたのではないだろうか。

今回の調査では、怪談めいた話と出会うことはなかった。



取材を終えて



今回の調査で、残念ながら「子母口」という文字が使われている的確な由来には分からなかった。

子母口は小さな町だが、蓮乗院、橘樹神社のほかにも、富士見台古墳や子母口貝塚など、古い遺跡も残っているので、古い歴史のある「子母口」を散策してみてはいかがだろうか。

―終わり―
 

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  • 「シボ」「「シブ」「シホ」(旧カナ)、などのほとんどは、このレポートにもあるように、「萎んだ」地形で使われる語です。神奈川県では、横浜国大の地理の教授だった松尾俊郎先生による研究があります。渋谷、渋沢などが該当し、東京の渋谷なども、両側が坂になった典型的な「しぼんだ」地形です。江戸期の記録に子母口は「渋口」と書いたものがあるように、千葉の東金市の渋谷(しぶや)は以前は「しぼや」と呼ばれていました。地名研究では広く承認された説であり、ここにあがっている説の多くは、いわゆる民間語源であって、字面にとらわれたものがほとんどです。昔は、地名もいろいろな当て字をしたのです。保土ヶ谷を程ヶ谷(カントリークラブ)と書くように。古い地名はその音を中心に考えないと。また地名の多くは古語なのです。現代語とは意味が違う。

  • まさに蓮乗院、橘樹神社の裏に住んでいます(笑)子母口貝塚が有名ですが、この辺りは何処を掘ってもと言って良い位に至る所から土器のかけらが出てきますし、竪穴住居跡,古墳,寺社仏閣が梶ヶ谷にかけてずっと連なっています。古代からずっと居住地ですから、必ずしも住みづらい土地ではなかったと思います。反面、丘を下り平地になれば子母口の隣は明津(「あくつ」。「悪地」が転じたという説もあり)、期待をして良い意味を連想させる地名というのも頷けます。こういうところが面白いですね。

  • 本文にある川崎市宮前区の神木は、「しぼく」と読むそうで、読み方も似ていますね。場所は少し離れていますが関係あるのでしょうか。

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