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洋食の街、横浜の料理人に密着「横浜コック宝」 老舗「洋食キムラ」編

ココがキニナル!

洋食の街、横浜の料理人に密着「横浜コック宝」 老舗「洋食キムラ」編

はまれぽ調査結果!

横浜の洋食文化をつくった老舗洋食店の料理人に密着取材する「横浜コック宝」。第1回は、野毛の老舗「洋食キムラ」の2代目店主、貴邑悟さん。

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ライター:クドー・シュンサク

コック宝の味とコックスタイル



デミグラスソースの仕込みを見せてもらう。まずは洋食すべてのベースとなるブイヨンから。
 


牛のバラ肉をタマネギ・パセリ・セロリ・ニンジン・ローリエと最短でも6時間は煮込む


灰汁(あく)を丁寧に何度も何度も取り除き、澄んだブイヨンが完成。ここからが驚愕の手間暇をかけたデミグラスソース作りを見ることができた。
 


この白と黒のルー


人肌の温度に冷ましたブイヨンに入れる2種類のルーは、白い「ブールマニエ」と、黒い「ブラックルー」。ブールマニエはバターとブイヨンの浮き油を弱火でじっくりふるった小麦粉と合わせたもの。

ブラックルーはラードと小麦粉を弱火でじっくり1時間以上炒める。火からおろしてトマトペースト・ピューレの順で鍋に入れさらにじっくりと水分をとばすように火にかけ混ぜ合わせる。ブラックになるまで火をかけることつきっきりで、なんと約7時間。
 


ブイヨンと2種のルーを合わせる


相当な時間を要し、やっとソース作りにたどり着くデミグラスソースの仕込みについて2代目は「ここまでやってるところはそうそうないよ」と笑顔で語り、丹精込めてソースを作る。
 


手間に手間を重ね、丹念に丹念に、デミグラスソースを作る


この仕込みも約50年間、2代目が続けている仕事。そしてキムラのデミグラスソースはこれが決め手。
 


仕上げはデミグラスソースにツヤとコクをだす
 

3年物の自家製梅酒


デミグラスソースのためだけに3年間、時を重ねた梅酒。ここまでの手間と時間が本物の味を作るのに必要とされる。2代目は仕込みの手をすすめながら「味はね、素直なんですよ」と笑顔で語りデミグラスソースを仕上げる。仕込みが終わったところで計算されたかのように営業時間がそこまでやってきた。

午前11時ごろ、ここで2代目からお誘いが。
 


「ちょっとお茶しにいってくるけど・・・行きましょうよ」とのお誘い
 

ご一緒させていただく


2代目の1日には2回、店を離れコーヒーで一息入れるのがひとつの決まりにあるという。
「メリと、ハリですね・・・」と行きつけの喫茶店へ向かう。
 


2代目から「美味しいものは好き?」と聞かれる


「人それぞれに味覚はあるけれど、美味しいものってのはあるんですよ。私はそういうもの作るのが仕事で、それをずっと私なりにやってきたんですよ。それはもう、大変だし、いろいろあったけど、私はずっとその仕事だけやってきて生きてきましたよ」と言い「本当に美味しいものって、いいもんですよ。私も好きでね、美味しいもの」と話してくれた。
喫茶店に入りコーヒーを注文。
 


馴染みの喫茶店でいつもの顔ぶれとしばしの談笑
 

「私にはこの時間が必要なんですよ(笑)」


ミルクと砂糖を少し入れたコーヒー1杯でタバコを3本。大好きな競馬の話を中心に20分ほどの休憩をすませ、開店時間の午前11時30分には店に戻る。
 


営業が始まる


にこやかな笑顔で談笑し一息いれた2代目が厨房に戻る。オーダーが入り、静かにそして丁寧に、1品1品、調理にかかる。
 


言葉は出さず
 

丹念に
 

料理を作る


一切の無駄がない動きと手際は、見ていると、ゆっくりと息を吐いて何かを噛みしめたくなる気持ちにさせられる。長きにわたるコックの歴史が語りかける姿が胸に何かを伝えてくる。
本当に、本当に静かな空気で穏やかに展開し続ける、言葉にならない世界。気づけば、あっという間に約3時間のランチ営業は静かに終了した。
 


後片付けをすませ厨房を隅々まで掃除


午後2時30分を過ぎたあたりで「おつかれさまね」と残し厨房をでる2代目。休憩に入るとのことなので、ゆっくりとお話を伺うことに。