洋食の街、横浜の料理人に密着「横浜コック宝」 老舗「洋食キムラ」編
ココがキニナル!
洋食の街、横浜の料理人に密着「横浜コック宝」 老舗「洋食キムラ」編
はまれぽ調査結果!
横浜の洋食文化をつくった老舗洋食店の料理人に密着取材する「横浜コック宝」。第1回は、野毛の老舗「洋食キムラ」の2代目店主、貴邑悟さん。
ライター:クドー・シュンサク
コック宝の一番の贅沢と大切なもの
店の3階にて休憩をとる2代目にいろいろとお伺いすることに。
現在72歳のコック宝が一番心掛けていることから
何よりも、コンディションの維持。これが傾くと料理にはすべて影響するという。
「経験と感性、そこに技術と知識を合わせるのがコック」という2代目。感性の部分がとても大事で、例えば夏。夏には動物も夏バテをするので自然と肉に水分が多くなる。それを目と感触と感性で判断し、それ相応の手を加えていつものキムラの味に導く。春の野菜の味の変化や、気候による調味料の味の変化も感性の部分で手を施す。
「いつもの料理をしっかり作る大事なことなんですよ、感性の部分ってのはね」
そしてコックに必要なことは「信念が味になるということを分かるのも大事」と続ける2代目。先代の味が「美味しい」と思ったことは一度もないという。キムラの味を自分ならこういう風にアプローチを変えてキムラの味を変えずに作るという心がずっとあり、その信念に揺るがない修業を重ねて今のキムラの味を築き上げた。
努力も勉強も遊びも、すべてキムラの味の信念に昇華させた2代目
26歳からコックになった2代目は、どこかの店で下積みをしたわけでもなく、キムラから外には出ずに、ただキムラの中でそのコックの腕を磨いた。休みの日にはいろいろな街に出かけ、美味しいものを探し独学で味を探求。実のところ、先代にも何も教わらなかったという。
そしてたどり着いた洋食キムラの自分の味
「私の一番の贅沢はそれですよ。自分の味が出せる。それが一番の贅沢です」
奥様について
本当に、感謝しているという奥様の話になった。
「実際は私より1日に長く多くの仕事をしているのが、かあちゃん(和代さん)なんですよ。キムラは私が社長でコックですが、かあちゃんがいないと・・・今のキムラは絶対にないんですよ。今までよく、支えてくれました。ウチの70パーセントは、かあちゃんでもってるようなもんです」
奥様が辞めると自分もいつでも辞めるという2代目
結婚当初は二軒長屋のねずみが這うような家からスタートした2代目。先代の残した借金も、信念の味を作り続けることと支えてくれた奥様と従業員の力で乗り越える。「感謝ですよ、すべてに。それとお客さんにはキムラを好きでいてくれて感謝じゃすまないくらいの気持ちでいっぱいです」と、現在にいたるまでのコック人生を振り返った。
そして引退について
「年齢によるものですよ。60歳を過ぎて腰を壊してから店に立てなくなった時は、やっぱりまだ任せてられないという気持ちと、私がいなければキムラはまだキムラではないという状況だったんで無我夢中に体は顧みずやっていました、最近まではね(笑)。それでも年齢には勝てないですよ・・・息子が3代目としてそろそろかなというところまできたので・・・引退の時期は、一応この夏を目処にしています」
午後5時、夜の営業が始まる
2回目の喫茶店での一息を終え、厨房に戻る2代目。
落ち着いた夜の営業を終え、最後にもう少しお話を。
自分では叶えられなかったこと
実は、銀座にそのルーツを持つ「洋食キムラ」。先代が常盤町に開店した「カウンターキッチン」は1号店が銀座にあり、先代はそこでコックの腕を磨いた。
「ウチのルーツである銀座にキムラを構えることが目標ではあったんですがね・・・もう時間がきたので、その目標はもう難しくなった。それでもいいんです」
「洋食キムラ」3代目
キムラで築き上げた2代目の人生。約50年もの間、そばにはいつも奥様がいて、いつものハンバーグとデミグラスソースを作り続けた。
そしていつも、横浜で洋食が食べられる洋食屋として、コック宝は厨房で信念と感謝の味を静かに作り続けた。
横浜コック宝第1号「洋食キムラ」貴邑悟氏
ここに、認定いたします。
また、おじゃまします
最後に
「職人とは仕事には厳しく、自分自身にはしたたかで、且ついい加減でならなくてはならない」
貴邑悟(1943~)
―終わり―
店舗情報
洋食キムラ 野毛店
住所/横浜市中区野毛町1-3
電話/045-231-8706
営業時間/11:00〜14:30、17:00〜21:30 土・日曜・祝日 11:00〜20:30
定休日/月曜(祝日の場合は翌日)
amariftさん
2017年10月04日 11時25分
他の回のバックナンバーのリンクも入れて欲しい。勿論「第~回」の表示を忘れずに!
素人さん
2015年02月13日 23時06分
長時間の取材で非常に深く静かでそれで居て重厚さを感じた記事で非常に良かったと思います。ここにも一人凄い人がいたんですねぇ。知り合いにもいるんですが、職人の人が引退すると、途端に病気になったり身体を壊す人や希望を持てなくなる人が多いと聞きます。引退などせず長期の休暇でもとってゆっくり旅行にでも行って。又復帰されたらいいと思います。厨房で暮らしてきた人は厨房がやはり一番落ち着くし、一番の居場所だと思います。
コジさん
2015年02月12日 00時07分
流石はキムラのシェフ。武士道ですね。三代目がしっかりされているので伝統の継承は安心。