反町公園にポツンとある謎の白い倉庫の正体は?
ココがキニナル!
反町公園に、徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫というものが建っています。いったい中には何が入っているのでしょう?(ニャッシャーさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫は、2015(平成27)年に設置された。中身はまだ何も入っていないが、いずれレインコートやマップなどが入れられる予定。
ライター:紀あさ
危機管理課へ
JR関内駅からすぐの横浜市役所本庁舎、5階の危機管理課へ
危機管理センター内の危機管理室に到着
対応してくださったのは同危機管理課事業推進担当係長の日比野徹(ひびの・とおる)さん
日比野さんは「“徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫”は“災害時における徒歩帰宅者支援拠点の設置”という横浜市の施策の一部です」と教えてくださった。
“徒歩帰宅者支援拠点”とは、災害時、どこにどれだけ帰宅困難者が出るのかを予測し、それに基づき市内の幹線道路沿いの公共地に支援拠点を設置したもの。災害時には、地図や情報の提供・道案内などの帰宅支援をするそうだ。
一瞬「拠点」という言葉から、数日間過ごす避難所のようなものをイメージしたが“徒歩帰宅者支援拠点”は、留まる場所ではなく、災害当日の困難な状況下での帰宅を続行するための手助けをする場所。
反町駅にある地図。反町公園は幹線道路に近く、多くの帰宅者が近くを通る予想
そして“徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫”は、この拠点地に設置された備蓄庫なので、中に入れるものは、帰宅するための物や、歩き続けるための物らしい。
反町公園の徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫に入っているもの
さてここで、本題。ドキドキしながら質問をする。ずばり「中には何が入っているのでしょう?」
「実は・・・」
親切にいろいろ解説してくださっている日比野さん
「実は、何も入っていないんです」
何も入っていない!?
聞き間違えかと、おどろく筆者
それはなぜなのか。混乱しつつも続いて話を伺った。
横浜市がこの施策を始めたのはここ数年のことで、きっかけは2011(平成23)年の東日本大震災。横浜でも多くの帰宅困難者が発生。大震災の際に帰宅困難になった人たちに「何が必要だったか」のアンケートによると以下の回答があった。
・何が起きているか分からず災害の情報がほしかった
・道が分からなかったから道案内がほしかった
・電車が動き出しているのか運行状況が知りたかった
以上をふまえ、「支援拠点」と「備蓄倉庫」を作ることになったという。
横浜市内でもかなりの混乱があった
そうして2014(平成26)年度予算で同年、市内10ヶ所に倉庫を作り、平成27年度予算で全拠点分の備蓄品を購入。投稿にあった反町公園の倉庫も2015年3月に設置された。
ちなみに購入された備蓄品は、市の管理している倉庫内にて一括管理されている。
現在はより地域に密着した運用のため委託できる「管理者」を探す段階で、購入した備品は管理者が決まってから各倉庫に入れられる、とのこと。
つまり「『今は』何も入っていない」ということ。
まさかの驚きの結果だが、もう少し話を詳しく伺った。
横浜の帰宅困難者への災害時の3つの対策
日比野さんいわく「備蓄倉庫のみに限らず、帰宅困難者対策の際に大切だとお伝えしていることは“災害時にむやみに移動しないこと”です。規模の大きな会社などには無理に帰ろうとせずに会社に留まってもらうようにと、依頼しています」
震災時、横浜でも多くの帰宅困難者が出た
ただし、家に子どもがいるなど、どうしても帰らなければならない人は必ずいる。そういう人のために大枠で3つの対策を作った。そのひとつめがこの「徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫」を含む「徒歩帰宅者支援拠点」だった。
市の対策はもうひとつある。2つ目は「一時滞在NAVI」というWEBサイト。
外出中に帰宅困難となった場合に備え、市内随所に帰宅困難者一時滞在施設の指定を行っており、市のWEBサイトでその施設の検索ができる。
“一時滞在NAVI”画面、横浜駅周辺には多くの「一時滞在施設」マークが(HPより)
3つ目は「帰宅支援ステーション」という対策。これは横浜市だけでなく、関東の九都県市(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・横浜市・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市)での合同の施策だ。コンビニ・ファミレス・ガソリンスタンドなど随所にあるチェーン店と協定を結びトイレや休憩所の提供をしてもらう。。
帰宅支援ステーションリスト、居酒屋やカラオケスペースの登録もあった(HPより)
これらが「歩き続ける・一時滞在する・休憩する」という3つの動作に対する3種の支援策だが、もしも実際に災害が起こった場合、日比野さんのような市の担当者は、市災害対策本部で市内の帰宅困難者対策全般の対応にあたらなければならない。
市役所内の帰宅困難者対策チームブース、災害が起きたら日比野さんはここで活動する
そのため有事の際に、徒歩支援拠点へは市の担当者が行くことができない。そこで、この“徒歩帰宅者支援拠点”をボランティアで運営できる事業所・団体を、今まさに探しているところなのだという。
徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫の運用はどうなるのか
計画では2015(平成27)年度末までに、2014(平成26)年度に作られた10ヶ所の倉庫の管理者候補を探す予定。
有事の対応であるため、個人ではなく地域に根差した団体を探しているとのこと。
市で現在検討中の案によると、支援拠点を開設する規準は下記の2つを満たした場合。
・深夜以外の時間に横浜市内で一か所でも震度5強以上の際
・横浜駅に乗り入れる全線が運休し再開の目途が立たないとき
しかし災害時なので、各拠点の管理者が必ず上記の条件下でボランティア任務にあたれるかは保証しきれない。そのため上記の条件に加え管理団体の構成員のうちの3人以上がそろうことができた場合に、その拠点が開設されるという案だそうだ。
鉄道が6社局も乗り入れる横浜駅
この倉庫内、何も入っていないというまさかの結果だったが、せめてキニナル「何をいれる予定」を教えていただけないでしょうか。
すると、日比野さんは「拠点ごとに、レインコート 5000着、配布マップ1000部、ホワイトボード、テント、椅子、ブルーシートなどの資材を用意する予定です」と答えてくれた。
きっと倉庫に入っていそうだと付近の住民の方も予想していた”水”と”簡易トイレ”はリストにないのが意外だ。支援拠点は主に情報提供を目的としており、滞在する場所ではないので、水やトイレパックは用意しないことにしたという。
水の配布はないが、反町公園には水道とトイレがある
これら資材機材の購入費は市の予算から出ている。年度ごとに必要な分の費用を計上するため予算は一定ではないが、資材機材の購入費の含まれた平成27年度の予算は 帰宅困難者対策全体で760万円だそう。
資材機材の使い方なども書かれた運用マニュアルも現在検討中で、さらに分かりやすく写真などを追加して確定にする予定とのこと。
徒歩帰宅支援拠点運営マニュアル
先ほども記述したが、徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫は反町公園だけではなく、現在市内に10ヶ所設置されている。公園だと、神奈川通東公園(神奈川区)・星川中央公園(保土ケ谷区)・富岡総合公園(金沢区)。ほかに消防出張所内などにもある。
同じ神奈川区にある神奈川通東公園の備蓄庫
災害が起こっても必ず開設されるとは限らないが、帰宅経路上のどこに倉庫があるかは憶えておきたいなぁ、と話を伺いながら思っていたら、それよりももっと大切なことがあると、日比野さんが教えてくれた。
「もっとも大切なのは自助努力です。普段から会社に地図・レインコートを置いておく。歩きやすい靴・ペットボトルの水・ラジオ・充電器もあった方がいいです。スマートフォンの充電がきれたとしても帰りつくことができるような備えが要ります」
自分で会社に備えておきたい地図・レインコート・靴・水・ラジオ・充電器
たしかに備蓄数が「10拠点に各5000人分」と聞くと頼りになりそうな数字だが、横浜の人口370万人の全員分にはほど遠い。移動中に災害が起きた時などの支援拠点として覚えておきたいが、会社にいる時に起きた災害なら、普段から一人ひとりが会社に備えを持っていて、倉庫に寄らずにすむことの方がいいことなのかもしれない。
そして最後に特別に、反町公園の徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫の中を見せていただいた。
シャッターをオープン
まだ新しい徒歩帰宅者支援備用蓄倉庫の中。奥行き約3メートル、幅約4.3メートル
「強風の時など、倉庫自体がテントの代わりになるかもしれないですね」と、倉庫の中に入っていく私を見て日比野さんが呟いた。
取材を終えて
意外にもまだ何も入っていなかった徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫。市の予算で実施しており、有事の際に大切な対策なため、ぜひ内容をよく知らせてほしいと思う。備蓄倉庫については実際に運用を開始したら、市から広報で知らせていくそうだ。
それと同時に、自分の暮らすエリアに関わる情報を普段から調べて、災害時に落ち着いて動くことができるようにしておきたい。
また、各地の徒歩帰宅拠点について、7区(神奈川区・南区・金沢区・港南区・保土ケ谷区・旭区・青葉区)での管理団体を募集中だそうなので、興味のある団体の方は問い合せてみてはいかがだろうか。
―終わり―
反町公園、徒歩帰宅者支援用備蓄倉庫
住所/横浜市神奈川区反町1-12 反町公園内
一時滞在NAVI/http://www.city.yokohama.lg.jp/somu/org/kikikanri/kitaku/#ichijishisetsunavi
帰宅支援ステーション/http://www.9tokenshi-bousai.jp/comehome/station.html
問い合せ先
横浜市中区港町1-1 横浜市役所5階
横浜市危機管理室危機管理課 日比野さん
045-671-4358
おいさんさん
2016年03月23日 00時03分
残念だけどこの手の対策は、神奈川は東京に後れをとっているなあと感じる。東京にも公園や大きな施設(民間含む)にこの手の倉庫はあるけれど、防災用工具やら入っていて、年に1回区役所の人が巡回チェックしている。それにしても、横浜の公園はトイレが少なすぎる。東京だとちょっとした児童公園にも公衆トイレがあるが、横浜だと反町公園クラスでやっとある感じだ。(それも半分は閉鎖されている)管理が大変なのはわかるが頑張ってほしいものだ。
viva平塚さん
2016年01月07日 15時00分
取り敢えず日比野さんの電話番号は判った!
ぼののんさん
2016年01月07日 13時47分
土足で入らせたということは、本文中にあるとおり飲料などの口に入るものは入れないのだろうな。飲料水はレインコートより有用だと思うのだが。