武蔵小杉の高層マンションで国際会議!? 「川崎市コンベンションホール」の役割とは
ココがキニナル!
武蔵小杉の高層マンションの中に、川崎市の「コンベンションホール」が開設! 全国的にも珍しい施設は一体何のために作られた?(はまれぽ編集部のキニナル)
はまれぽ調査結果!
市内で唯一のコンベンション施設として、高層マンションの2階部分を使ったホールが誕生。地域産業の活性化や交流の場所として活用を目指している
ライター:はまれぽ編集部
市内唯一のコンベンション施設
「これまで川崎市内にはコンベンション機能を持った場所がなく、関係者からは整備を求める要望があがっていました。マンション側からも地域貢献のために床面積を寄付するという申し出があり、市がコンベンションホールとして整備することが決まりました」。川崎市観光プロモーション推進課の一ノ瀨進(いちのせ・すすむ)担当係長はそう説明する。
実は、川崎市コンベンションホールのちょうど向かい側にあった「ホテル・ザ・エルシィ」にもコンベンション機能があり、地域の医師会や商工会議所が会合などに利用していた。しかし、2007(平成19)年に地域の再開発の影響でホテルは閉鎖。現在は駐車場になっている。
ホテル「エルシィ」の跡地
そのコンベンション機能を受け持つ場所の整備が求められていたのだ。
同時に、川崎市としてはこれまで東京や横浜に流れてしまっていたコンベンション需要を市内に呼び戻したいという狙いもある。
「川崎市内には企業や研究施設も増えており、コンベンションによる新しい出会いや交流によって、さらなる発展ができる可能性があります。しかし、これまでは施設がなかったことから、交通の便のいい近隣都市に流れてしまっていました」と一ノ瀨さん。国際会議も可能な武蔵小杉のコンベンションホールではあるが、主な需要は市内にあると見込んでいる。
建設中の「横浜みなとみらい国際コンベンションセンター」などはMICEを見込んだ施設
利用料金も都内や横浜の「ライバル施設」を参考に、より安価に借りられるようになっているそうだ。
課題となりそうのが宿泊場所などの不足。横浜市などが取り組む「MICE(マイス)」では、国際会議を呼び込むことで消費を促すことが目的の一つであるため、いかに地域に滞在させるかが重要になる。
川崎市のコンベンションホールは規模や周辺環境の違いから、みなとみらいなどの大規模施設とは別物と位置づけているが、「MICEとまではいえないものの、地域に利益を還元できるようにしたい」という思いも抱いている。そのためにはホールの利用者に地域にとどまってもらう必要があるのだ。
地域に還元できるか
宿泊場所が市内でなければ、ホールを使った後の利用者が地域を素通りしてしまう。そこで取り組んでいるのが、近隣大学とも連携した地域商店街などの活性化策だ。
これは、ホールを運営するコンベンションリンケージと専修大学のゼミ学生が連携し、武蔵小杉周辺でおすすめの飲食店などの協力を得てマップにしたもの。実際に学生が食べ歩いた店舗をまとめ、コンベンションホールの利用者などに配布している。
「地域で飲食してもらいたい」という思いで作成された
また、駐車場についても、近隣の商業施設の駐車場との連携などを調整していくという。その上で、コンベンション施設の利用者の多くは公共交通機関を利用しているというデータがあり、交通の便がいい武蔵小杉のホールでも、ほとんどの人が電車を利用するという見込みもあるようだ。
一方で、まだオープンから1ヶ月のコンベンションホールには、大会議の開催に未知のリスクを抱えている面もある。
ホールにつながるデッキは便利だが・・・
観光プロモーション推進課では「これまでホールについて地域住民からの苦情は寄せられていませんが、1000人規模の会議が開かれることになれば、ペデストリアンデッキが混み合うなど影響が出ることも考えられます」との懸念も抱いているようだ。
武蔵小杉は住民が急増していることもあり、駅周辺の朝の混雑がたびたび問題視されている。コンベンションホールの利用者も公共交通機関を使う以上、そうした事情にも十分に気を配る必要がある。
運用の中で課題に対応するために、実績のある運営会社のノウハウも活用していく考えだ。市の担当者は「コンベンションホールが地域に受け入れらるよう、還元イベントの開催なども考えています」と話す。
ホールの周辺は回遊できるようになっており、住民が散歩する姿もある
現時点では、ホールを最大の1000人規模で利用する予約は入っていない。オープンしたての施設なので、今後下見で開催を決めた主催者が、来年以降の利用を決めていく可能性があるという。今後利用が増加する中で、ホールが周辺に与える影響も変わっていくことになりそうだ。
取材を終えて
マンションの中に設けられたコンベンション施設は前例がないために、そこで大規模な会議を開くことの課題や影響についても未知の部分が多いようだ。一方で、高層住宅が林立する武蔵小杉の中で、地域の産業発展や交流のために使うことのできる施設が生まれたことは大きなメリットになる可能性も秘めている。
多くの住民たちの生活の真ん中にあるホールが、どのような役割を果たしていくことになるのか。生まれたての施設の今後に注目していきたい。
ー終わりー
川崎市コンベンションホール
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