JR南武線武蔵溝ノ口から津田山間に見える黄金仏像の正体は?
ココがキニナル!
南武線武蔵溝ノ口~津田山間の車窓から見える、黄金色の大仏?お釈迦様?が気になります。立川方面行き電車の左手に一瞬だけ後ろ姿が見えます(はんぐん丸さん)
はまれぽ調査結果!
川崎市高津区にある「眞宗寺」の大仏様だった。生活困窮者・後継者不在など、お墓に関する悩みに寄り添う住職が「見た人が幸せな気持ちになれるように」建立した
ライター:のなかあき子
ギリシャ神殿風の本殿
溝の口本堂の方の車に乗って数分後、やっと川崎霊園にたどりついた。疲れ切った筆者の目の前に現れたのは、ギリシャ神殿風の眞宗寺本堂だった。高台には大仏様の立ち姿があり、ごく日本的な墓石も並んでいる。異国にいるような、そうでないような、なんとも不思議な光景だ。
ギリシャ神殿風のファサード
三越のものと同じライオンだとか
本殿内の窓はステンドグラス、半円バルコニーもある
ここで、やっとご住職の小原静史(こばら・しずふみ)さんとご対面。武道家を思わせる、精悍(せいかん)で凛とした佇まいの方だった。
住職の小原静史さん
早速、溝の口のお守大仏の建立理由についてお尋ねした。
「理由というかね・・・溝の口の仏像は、3年くらい前になりゆきで造ったんですよ。みんなが幸せを感じてくれればいいなと。いいと思ったことは、とりあえずやってみるんです」
現代のお墓問題に取り組む
「いいと思ったことは、とりあえずやってみる」とはどういうことだろうか。
お話しするうちに、その理念が明らかになっていった。
島根出身のご住職。1965(昭和40)年、20歳の時に浄土真宗の開教師としてブラジルに渡った。マラリアなどの大病を煩い、15年後に日本に帰国。眞宗寺溝の口本堂に布教所を開設した後、1995(平成7)年麻生区に2300区画の墓地「川崎霊園」を開設した。敷地面積は1万坪と広大だ。
「墓地経営が軌道に乗り、負債が亡くなった時点で、利益を抜きにした永代供養の合祀墓(ごうしぼ)を始めました」
高さ15メートルの大仏さまの足元に納骨される
現代社会においてお墓問題に悩む人は少なくない。お墓を建立できない経済状況にあり、遺骨を家に置いたままにしている人、お墓を守る後継者がいない人、お墓どころか葬儀さえままならない人もいる。行方不明だった身内が突然亡くなったと連絡を受け、困惑する人もいるだろう。
そんな人々を救済するために、1994(平成6)年から戒名料や管理費、寄付不要の永代供養の合祀墓を始めた。
「いいと思ったことを、とりあえずやってみた」という思いは正しく、2000柱の遺骨で納骨堂が満杯に。
そこで、2011(平成23)年に2万柱が入る納骨堂を新設した。その納骨堂の上には高さ15メートルの川崎大仏が建つ。永代供養料4万円から引き受け、その後管理費や寄付を要求される事も、檀家になる必要もない。毎夕読経を行い、永代供養してもらえる。
ちなみに溝の口本堂の大仏様は3年ほど前に建立。川崎大仏よりちょっと小さい12.5メートルだそうだ。
東日本大震災の犠牲者の遺骨は、永代供養料なしで受け入れた。また、身元不明の遺骨も引き受けている。
「新宿中央公園でホームレスの男性が亡くなった時には、お仲間から1000円だけ受けとってお骨を引き受けましたよ」
今を生きる人に寄り添う寺
ライフスタイルの変化によるお墓問題にも対応している。親世代は地方にいるが、子や孫世代は首都圏や海外に在住しており、今後の供養のことを考えて地方から墓を移す人も少なくない。
「こちらにお越しになれない方のために、キャリーケースを引いて、地方までお骨を受け取りに行くこともあります」
なんと、宅配便でお骨が届くことも最近は多いそうだ。地方の墓地の改葬、墓じまいの手続きも代行する。
ロッカー式のお墓もある
高額な戒名料や管理料を受け取るような、現代の寺院のあり方に疑問を持つご住職。お盆や新年の法要には、法話を楽しみに大勢の檀家さんが集まり、ジャンケンゲーム大会も催して盛り上がるそうだ。
配偶者のいない檀家さん同士のカップリングをすることもあるというから驚き・・・。
法要に訪れていた檀家さんとフランクに世間話をする様子からも、ご住職が「今生きている人に寄り添う」ことを大切にしていることが伺えた。
ご住職の相棒、モモさん
取材を終えて
少子高齢化、核家族、都市への人口集中、貧困問題。様々な社会問題はお墓問題にもつながっている。お墓問題に寄り添うとは、生きている人の事情に寄り添うということ。南武線から見えた大仏様は「いいと思ったことは、とりあえずやってみる」ご住職がいるお寺の、シンボル的存在だった。
ー終わりー
取材協力
眞宗寺
公式サイト:http://www.shinsyuji.net
はんぐん丸さん
2019年02月24日 13時52分
記事にしていただきありがとうございます。由緒正しき大仏様だったのですね。それに住職さんのこころの広さには感服。清掃工場に迷い込んでしまったレポーターさん、もしかしたらこれは仏様からの試練だったのかもしれませんね。