横須賀沖の海上要塞「第二海堡」とは?上陸ツアーに参加した!
ココがキニナル!
横須賀市などが行っている海上要塞「第二海堡」の試験上陸ツアーに参加してレポートをお願いします(nobaxさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
第二次世界大戦から明治・大正の戦時遺構を残す「第二海堡」。これまで立入禁止だった場所に2019年4月からは一般の人もツアーで上陸できる!
ライター:吉田瞳
第二海堡の様子は・・・?
白地で書かれている「FORT NO.2」は、直訳すると「第二の要塞」の意味
120年以上の風雨により、崩壊が進んでいるところも
海堡がつくられた目的は、砲台の設置。砲は全て撤去されてしまい、今では設置跡だけが残る。
例えば、海堡の最も西側には大砲の一種「15cmカノン砲」が置かれていた。今では、弾薬が保管されていた地下部分が露出して残されているだけだが、当時は弾薬が濡れないよう、レンガの構造物の上に、コンクリートとアスファルトを塗って防水をしていたといわれている。
黒くなっている部分がアスファルト
砲の跡地に残されたレンガには、桜の刻印が入っている。現在の東京拘置所にあたる小菅監獄(こすげかんごく)で造られたものであることを示すマークだという。第二海堡建設の時代に置かれた砲は、当時小菅監獄に収容されていた、西南戦争で敗走した薩摩藩の武士たちが造ったものが中心だ。
桜の刻印は、小菅監獄のマーク
砲は撤去されてしまっているが、当時の遺構がきれいに残っている部分もある。こちらは防空指揮所だったといわれている場所。すぐ下には27cmのカノン砲が置かれていたと推定されている。
防空指揮所
こちらは掩蔽壕(えんぺいごう)。イギリス積みのレンガがきれいな状態で残っている。敵の攻撃から身を守るための壕で、レンガへの海水の滲入を防ぐため、通常よりも高い温度で焼いたレンガを使用。
美しく積まれたレンガ。100年以上前のものが、原型を留めて残っていることに驚く
半分埋まってしまっているが、このアーチ型の入り口は地下へとつながっているそうだ。
地下へ続く入り口
ここまでは旧日本軍時代の遺構を見てきたが、実は第二海堡は現在、第三管区海上保安部と関東地方整備局の航路監視に使用されているため、今も大活躍している設備が多々ある。
壮観なのは、ズラリと並んだ192枚の太陽光パネルだ。長年、海堡内で使われる電気は、陸地から運び込んでいたが、「海堡内で電気を自給したい」と2011(平成23)年にソーラーパネルを設置したとのこと。
戦争遺跡と最新のソーラーパネルの共存
太陽光パネルの間に、大砲の設置跡が
第二海堡には自生する植物や動物もいる。アロエとサボテンは人の手により持ち込まれたもの。そしてネズミも住んでいるそうだ。
自生するサボテン
普段は立ち入り禁止のため、ツアーではこの看板が撮影スポット
4月からは旅行会社経由でツアー申込が可能に!
三笠桟橋に戻り、主催者である横須賀市の岡本さんと、船の運航とガイドを担当したトライアングル社広報担当の藤野浩章(ふじの・ひろあき)さんにお話を伺った。
「高齢の方にも参加していただき、驚きました。家族連れも多くいらして、男女問わず幅広い層に訴求力がある観光スポットになると思います」と、岡本さんはうれしそうだ。
藤野さんは「第二海堡の場合、資料が全くないので、一般の人にも分かりやすい解説をするために、まず調べることが大変でした。1年かけ、国土交通省に協力してもらって、資料を集めました」と話す。
現在は海堡の解説ができるようガイドを育成中だそうだ。
ガイドを務めた大友渉(おおとも・しょう)さんの手には貴重な写真が
一般の人向けのツアーは2019年4月からスタートする。旅行会社を通して申し込めるようになるという。
「横須賀海堡丼」とはなんぞや?
そんなツアー開催にあわせ、海岸沿いの飲食店4店舗で「第二海堡」をイメージした「横須賀海堡丼」が提供されているという。えっ?海堡丼!?・・・海軍カレーより凄いネーミング。
「横須賀海堡丼」は江戸時代から食材の宝庫であった東京湾の魚介類を使用したどんぶり。「横須賀グルメ」としてブランド化をするために作られたそうだ。
ちなみに東京湾を挟んで対岸に位置する千葉県富津市は2010(平成22)年から「海堡丼」を販売しているため、富津市商工会の協力を得てこの名前を使用。このことで、東京湾の「海堡」で結ばれたエリアがコラボレーションを図り、相乗効果を生み出し、食を通した地域の活性化を図るという試みだ。
丁度ツアーを終えて空腹!ということもあり、提供店舗のひとつ、横須賀中央駅から徒歩1分の位置にある「セントラルホテル」のティーラウンジ「ボンジュール」にお邪魔し、早速「横須賀海堡丼(1944円/税込)」をいただいてきた。
東京湾で採れたアナゴを1本使い、第二海堡の灯台に見立てているという。
セントラルホテルの「横須賀海堡丼」。彩りも美しい
東京湾でとれたアナゴは、全く臭みがなく、上品な味。口の中でとろけるような食感だ。
「横須賀海堡丼」は完全予約制なので興味のある人は問い合わせを。
取材を終えて
100年以上前の遺構がきれいに残されていること、「海上要塞」というワクワク感・・・。海堡には、観光地としてのポテンシャルが非常に大きいと感じられたツアーだった。同じく横須賀から訪問できる東京湾唯一の無人島「猿島」も「ラピュタのような世界観」「フォトジェニック」などと人気を集め、年間20万人が訪れている。このことを思えば、第二海堡が横須賀の人気観光スポットの一つとなる日も、そう遠い日ではなさそうだ。
―終わり―
取材協力
神奈川県立図書館 企画サービス部 地域情報課
住所/横浜市西区紅葉ケ丘9-2
電話/045-263-5904
横須賀市 文化スポーツ観光部 観光課
住所/神奈川県横須賀市小川町11
電話/046-822-9672
東京湾海堡ツーリズム機構
電話/046-825-5401
営業時間/土日祝日を除く10時~16時
セントラルホテル ティーラウンジ“ボンジュール”
住所/神奈川県横須賀市若松町2-8
電話/046-827-1111
営業時間/11:00~17:00(L.O.16:30)
定休日/不定休
公式サイト/https://www.central-wedding.com/restaurant/bonjour/
参考資料
野口孝俊『東京湾海堡の建設について』神奈川県立図書館
白髪ハウルさん
2019年04月18日 16時58分
cranialgeeさん2005年から正式に立ち入り(上陸)禁止となった為、それまでは金沢近辺の釣り船は、釣り客を乗せて渡航していた様です。
cranialgeeさん
2019年04月18日 11時34分
建設時から今迄、一般人立入禁止だったとありますが、数年前まで野島公園の渡船屋さんから釣り目的で渡していました。何回か釣りしに行きました、通し(夜釣りで一泊)もしました。その渡船屋さんが何故か第二海堡行きナシになってしまったのです。あと横須賀方面からは崩壊してる第三海堡にさえ渡してました、海の上のコンクリート片にちょこっと乗っかって釣りする、恐ろしいところだったそうです。