横須賀JR田浦駅裏の珍しい十字交差線路!この廃線跡は撤去されるの?
ココがキニナル!
横須賀、田浦駅裏の廃線、十字交差(ダイヤモンドクロス)は必見の価値あり。そろそろ埋められるか撤去になるかもしれませんよ(あこ♂さんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
田浦駅裏の廃線は、今後どうなるか未定。十字交差(ダイヤモンドクロス)は米軍、日本軍が物資輸送に使用していた専用線で、交差した線路は全国的にも珍しかった。
ライター:すがた もえ子
取材を申し込んだ後にわかったことだが、山田先生は1991(平成3)年5月号の鉄道総合情報誌『Rail Magazine』にて、JR田浦駅裏のダブルクロスについて初めて記事を書いた方だという。
「今はもう当時の面影はないでしょう」と言いながら山田先生が見せてくださったのが、1990(平成2)年取材当時の写真と資料だ。山田先生は、貴重な資料をもとに線路の歴史や十字交差について丁寧に説明してくれた。
1991年当時は、本線から分岐した引き込み線はまだ現役で、レール上には本機関車がけん引した貨車の仕分けなどを行う入換用機関車(いれかえようきかんしゃ、スイッチャー)の姿も確認できたとのことだった。
海上自衛隊横須賀補給所ゲート前に留置された入換用のディーゼル機関車(写真提供:武相高校鉄道研究同好会)
現在も残る引き込み線跡・相模運輸倉庫専用線はわずかな距離が歩道脇に残されているだけになったが、現役だったころはトンネルの中にもレールが敷かれ、その横を車が走るという非常に珍しい配線状況になっていたそうだ。
トンネルの中を走る線路(写真提供:武相高校鉄道研究同好会)
この引き込み線ができた経緯には、田浦近郊が戦前から軍関係の重要な地域だったことが関係する。本線の横須賀線も1889(明治22)年に日本軍が軍事目的で敷いた鉄道路線という背景があり、日本軍の軍事施設へ物資を輸送する目的で敷かれたものだった。
そのため、戦前・戦中は一般人の立ち入りができない時期もあったといい、このトンネル内も一般車両が運行していたわけではなかったという。
1990年当時の引き込み線の様子(写真提供:武相高校鉄道研究同好会)
戦後は米軍によって接収され、米軍基地への物資輸送として使われた。田浦港から陸揚げされたジェット燃料は、軍専用のタキ3000形タンク車に積み込まれ厚木基地へと運ばれていたようだ。
田浦駅から分岐する専用線の起点(写真提供:武相高校鉄道研究同好会)
上写真では、ジェット燃料を運ぶボギータンク貨車タキ3000形貨車(上写真右側)の姿も確認できる。
ちなみに山田先生作成の専用線の見取り図はクロスポイント(十字交差)も記され、非常にわかりやすい。図面上が田浦駅というわけだ。
非常にわかりやすい山田先生作の見取り図(図面提供:武相高校鉄道研究同好会)
専用線の総延長は4.1kmほどだった。当時、運搬を担っていたのは相模運輸株式会社。そのほかの運搬は、日本通運が担当していた。
1990年当時の十字交差(写真提供:武相高校鉄道研究同好会)
この路線は1998(平成10)年まで使用されていたが、廃線の理由は相模運輸によるジェット燃料の輸送が終了したのに関係しているのではないか、ということだった。
1990年当時の写真。金網の奥は米軍施設へ続いている(写真提供:武相高校鉄道研究同好会)
現在もトンネルを抜けてすぐの場所に米軍の箱崎キャンプがあり、立ち入り禁止という看板とともに「FUEL TERMINAL HAKOZAKI(※訳:燃料ターミナル箱崎)」という記載があった。今も貯油施設として使われている施設のようだった。
ダブルクロスは珍しい?
廃線の正体はわかったが、今回のテーマである線路の十字交差(ダイヤモンドクロス)は珍しいものなのだろうか?
「ダブルクロスは珍しいです。十字交差(ダイヤモンドクロス)も全国的に見ても数ヶ所しかありません」と山田先生は語る。
田浦駅裏のダブルの十字交差は全国的にも珍しい存在だった
現在でも国内数ヶ所で十字交差を見ることができるが、田浦駅裏のように2つの十字交差があるダブルクロスを見られる場所はほとんどない。全国的に見てもかなり貴重な場所だったようだ。
現在も全国には現役の十字交差が残る場所がいくつかある。山田先生は「先日、松山へ行って伊予鉄道のダイヤモンドクロスを見てきたところです」と、伊予鉄道のダイヤモンドクロスの写真を見せてくれた。
線路がクロスしている(写真提供:山田京一先生)
路面電車と鉄道線が交差しているのは伊予鉄道の大手町駅前で、電車に乗って通過する際にはガタガタという揺れを体で感じるという。今も現役でダブルクロスが残る有名な場所だ。
くっきりと交差していることがわかる(写真提供:山田京一先生)
田浦の引き込み線は、ディーゼル機関車がけん引していたため伊予鉄道のように架線などの電化設備はなかった。
よく見ると頭上の架線の部分も複雑にクロスしているのが分かる(写真提供:山田京一先生)
役目を終え、今では廃線となったJR田浦駅裏の引き込み線。そのダブルの十字交差は全国的にも珍しいもので、軍事施設への輸送のために活躍したものだった。
横須賀市によれば「撤去の必要がないのでそのまま残している」とのことだったが、今後どうなるかはわからないという。
キニナルという方は今のうちに現地を訪問してみるのもいいかもしれない。
取材を終えて
相模運輸倉庫専用線は戦前から軍関係の専用施設として使われていた。古びた倉庫群とともに、その周辺だけ時代にとり残されたような、まるで映画のセットのような雰囲気も。かつては重要な軍事施設として使われた路線も、現在では撤去の必要がないから残されているだけ、という時代の流れを感じさせる場所だった。
-終わり-
取材協力・資料写真提供
学校法人武相学園 武相高等学校鉄道研究同好会
住所/横浜市港北区仲手原2-34-1
http://home.k02.itscom.net/brc/
参考文献
『Rail Magazine』1991年5月号「トワイライトゾーン」
ジョニー竹本さん
2019年09月20日 16時56分
10年ほど前まではトンネル内に「軌道終端」の看板も残っていました。トンネル内の半円窓はかつての弾薬庫跡で、現在ベイスターズ二軍練習場の向かい辺りに封鎖された弾薬庫入り口が確認できます。
ゆーきさん
2019年09月20日 04時00分
ちなみに、そのダブルクロスの道路の反対側の藪の中には当時の信号設備や踏切跡が残ってます。
また、線路も若干草の中に残ってます。
Nipさん
2019年09月19日 23時44分
横須賀市と松山市は『坂の上の雲』つながりで姉妹都市では