危機にあるらしい龍口寺の五重塔は大丈夫?
ココがキニナル!
神奈川県内唯一の五重塔、藤沢市の龍口寺五重塔が老朽化で危機にあるらしいので、取材して欲しいです。(にゃんさんのキニナル)
はまれぽ調査結果!
江ノ島駅近くにある龍口寺の五重塔は、明治時代に造られたもの。老朽化が深刻というよりは、昨秋の台風でダメージを受け、現在も補修中だった。
ライター:吉岡 まちこ
詳細を知る人が。そして後日大工さんと出会えた!
“何を直しているのかさっぱり解からない”と呆然としていると、ほうきを持った男性が後ろを通った。
長くお寺に勤務していそうなオーラを感じたので思い切って声をかけ、塔の修理について聞いてみた。
すると4層目の軒を指さし、「銅板の色が違うでしょう」。指さす先は、緑青(ろくしょう)を吹いていないピカピカの10円玉みたいな色の所。風で剥がれてしまい修復した箇所だという。
屋根の縁の軒に注目! ほかは緑色だが、まだ真新しい銅は張り替えた場所
よく見ると軒下に並ぶ垂木(たるき)の先や、角の隅木(すみぎ)の先の銅板も飛んでいる
ブルーシートは何なのか?と聞いたところ「最上階の扉も台風でどこかに飛んでしまい、新しい扉を付けたのですが、作業したのが雨の日だったから」ということだった。
最上階のは見えないが、各階にあるこの扉が飛んで行ってしまったそうだ
あとは、塔に覆いかぶさっていた木々を伐採したそうだ。葉のしずくが五重塔の5層の通路に落ち、木が腐食するかららしい。木立に埋もれた塔の姿もよかったけれど、そういう問題もあったとは…。
屋根の下の通路や木材に、葉っぱから水がしたたらないように
よく見るとけっこうあちこちの枝が落とされていた
伐採したおかげで、江ノ島を見る新名所スポットになったりして!?
「五重塔が怖いのは地震ではなく、雷、台風なんですよ」とお掃除の職員さん。
7年半前の台風の時だったか、落雷でてっぺんの相輪(そうりん)が曲がってしまったことがあったそうだ。
付け根の木も焦げたらしいが、雨のおかげもあり大事には至らなくてよかった。
屋根の上に立っているのが相輪。てっぺんにお釈迦様の骨が入っている、はず
その修復は竹中工務店がしたそうだが、今回は銅板の張り替えの他に宮大工、建具、造園関係など様々な職人さんが別々に入っているとのことだった。
撮影し忘れた場所があったので後日もう一回行ったところ、五重塔の前で大工さんたちが丸い棒にかんなをかけているところに遭遇。銅に覆われた軒のヒノキが腐っていたので取り換えるそうだ。
足場の上で作業しているのが、その宮大工さんの棟梁だと言うでは!
宮大工というから年配の棟梁かと思っていたら、休憩時間になって降りてきた男性が若いのでびっくり。
仲間の大工さん曰く「清川村で仙人のように暮らす」宮大工の棟梁・川﨑さん(右)
「ここを直すようにと言われた所を、もともと使われていた同じ種類の木材を使って修復しています。五重塔だけじゃなく、本堂も書院も老朽化しているところに台風のせいで一気に傷んだという感じです」と川崎さん。
本堂の屋根の裏なども破損し、新しい木に修復されていた
「五重塔を地元の人が大事にしているのがわかりますね。“残してほしい”と言われます。でも心柱(しんばしら)がしっかりしているので大丈夫ですよ」と、最後に心強い言葉が聞けた。
取材を終えて
神奈川県内唯一の純木造・五重塔が、壊滅的な危機にあるわけではないと聞いて一安心した。
龍口寺は、なんとなく江ノ島が近いので急ぎ足になるせいか、実は門をくぐったことがなかった。でも、仏舎利塔からの海の眺めもすごく良いし、「南無妙法蓮華経」を唱えれば誰でもつける鐘、「凶」ではなく「恐」が出るユニークなおみくじ、「日蓮聖人 御一代記」という絵本のような読み物も興味深くてついつい長居してしまえるお寺だった。
海が近く木造建築には厳しい状況は変わらないが、間近に木造の五重塔を見上げられるのも珍しいので、ぜひ足を運んでみてはどうだろう。
仏舎利塔からの眺め
― 終わり ―