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秘境を越えて横浜から鎌倉へ、オススメのハイキングスポットを大仏が調査! ゴール編

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行楽シーズン到来! オススメのハイキング、ピクニック スポットを教えて♪(yakisabazushiさんのキニナル)

はまれぽ調査結果!

歴史の足跡を踏み、若き日を思い歩く大仏は、ついに建長寺の半僧坊に至り鎌倉市内へ。大仏ビールと腸詰で乾杯して再び21世紀の大仏となるのだった

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ライター:永田 ミナミ

「かながわの景勝50選」あらわる



ところが道標をあとにして早足で歩くことたった1分で、またもや大仏の後ろ螺髪をむんずとつかんで通り過ぎがたいものが現れた。
 


「かながわ景勝50選 鎌倉十王岩の展望」である


「十王」とは「冥土にいて死者を裁く10人の王。秦広王・初江王・宋帝王・五官王・閻魔王・変成王・泰山王・平等王・都市王・五道転輪王の総称(『大辞林』)」である。

「死者は初七日から七七日までの各七日・百箇日(ひゃっかにち)・一周忌,三回忌にそれぞれの庁をめぐって来世の形態を定められる(『大辞林』)」ともあり、平安中期以降に日本に入ってきた思想だという。

「来世どうなるか決まる裁判は基本、最初の77日で決まるんだけど、それでも結審しない場合に最長3年かかるんだよ。十人の怒れる王、いや優しい王といったところかなあ」と大仏。ちなみに浄土真宗では死後極楽浄土に直行するためこの思想は関係ないそうだ。
 


ところでその十王岩はどこにあるんだろうね、と大仏はあたりを見回した
 

すると石碑の左側に登れそうなルートを発見
 

登ってみた大仏は「おお、これは」と感嘆の声をあげた
 

そこにはたしかに岩の表面に刻まれた磨崖仏が3体


江戸時代の1829(文政12)年に植田孟縉(うえだ・もうしん)によって書かれた鎌倉・金沢・江ノ島の地誌『攬勝考(らんしょうこう)』には、十王のうち中央が血盆地蔵、左が如意輪観音、右が閻魔王の三王が彫られているとある。

鎌倉時代に考えられたとされる十王の本地仏は秦広王(不動明王)・初江王(釈迦如来)・宋帝王(文殊菩薩)・五官王(普賢菩薩)・閻魔王(地蔵菩薩)・変成王(弥勒菩薩)・泰山王(薬師如来)・平等王(観音菩薩)・都市王(勢至菩薩)・五道転輪王(阿弥陀如来)なので、この三像で本来的に該当するのは閻魔王だけということになる。そして血盆経という偽経は存在するが血盆地蔵という菩薩は存在しないようだ。

「まあでも細かいことはいいか。植田君は190年前の地元の人にそう聞いたんだろうから、それもまた真実だよ」とさすが悟りを開いた阿弥陀如来である大仏は寛容だった。
 


そんなことよりこの風雨にまるめられた三像を愛でるほうがよほど有意義だよ


この十王岩は『攬勝考』では「嘯十王窟(わめきじゅうおうやぐら)」とされ、このあたりで夜な夜な不気味な声が聞こえたという伝説もあるようだが、おそらく森を抜ける風の音か、十王岩から建長寺の回春院へと降りる道にある「朱垂木(しゅだるき)やぐら」などの岩穴群に吹き込んだ風が鳴った音が正体のようだ。
 


あとで調べて「朱垂木やぐら」は男性が進んでいった先にあると知った大仏
 

参考資料「朱垂木やぐら」
 

手前の大きなやぐらには木の柱や梁を通したと思われる穴のほかに
 

やぐらの天井に朱で描かれた垂木が800年の時を超え残っているのだ

 
それから十王岩は「窟(やぐら)」ではないので、先ほどの弘法大師像があった「法王窟」が「十王窟」だという話もあるようだ。

しかしそんな不穏だったり不確かだったりする伝説なんかどうでもよくなるくらい、大仏はこの絶景に目を奪われていた。十王岩は、鶴岡八幡宮のほぼ真後ろに位置していたのである。
 


視線の先にすうっと真っ直ぐに伸びる若宮大路の美しさよ
 

十王の三王は鎌倉の街の移り変わりをずっと眺めてきたんだねえ
 

血眼になって史料を探れども不如意なりしか縁まで届かず 五道転輪王
 

四王で記念写真を撮った大仏は「さあ、そろそろ行こう」と十王岩を降りた
 

十王岩を過ぎたすぐ横には見事な方形の空間も。かつては屋根があったのかな
 

いやはや興奮したなあ。見所満載で息つく暇もなかったね




そして鎌倉の街へ



さあいよいよかな、いよいよだろうね、と一歩一歩を大事に踏みしめながら歩くこと5分。
 


森が開けた陽だまりに案内板らしきものが見えてきた
 

ああ、ついにここまでやって来たんだねえ
 

そう、それは紛れもなく建長寺半僧坊につながる入口であった(拝観料300円)
 

山道の果てに見えたる建長寺に感無量なれどまだ山のなか 大仏
 

そして大仏は新緑に包まれた旅を振り返りながらたっぷりと建長寺を縦断して
 

ゴール。もうすぐ午後5時だというのにまだ明るい。空の青さに涙がこみあげるよ
 

本当に歩いて来たのね遙かなホームタウン、と鼻歌まじりの巨福呂坂


5時間半ほどかけて横浜から鎌倉まで歩き、祭りのあとのような気分で街を目指す大仏は「舗装された歩道は歩きやすいんだねえ」と何でもない歩道にも感謝しながら歩き、昨年はハンバーガーで満腹だったために泣く泣くパスした店を目指した。
 


その店とは焼きたてのソーセージがとても美味しそうな「腸詰屋」である
 

すっと列にならんだ大仏はしばし戒律をオフモードにしてじっと見つめる
 

視線の先には香ばしいソーセージがごらんの通り。どれにしようかな
 

大仏が注文したのは「湘南ビールセット」でフランクとビールはシュバルツ
 

シュバルツは昨年も飲んだ「大仏ビール」なのでした。これで1000円
 

ああやっぱり美味しいなあ、と楽しんでいるとお店の人が現れ「あ、やっぱり」
 

何と1年前のことを覚えていてくれたのである。そうですあのときの大仏です


あの日、食べられなかったソーセージ(単品350円)はパリッとした歯ごたえの皮のなかはとてもジューシー。パセリが爽やかな風味を添えている。ほかの味もキニナルところだ。

もちろん大仏ビール(単品700円)はあいかわらず香ばしさと苦味が効いたなかにほんのりとした甘味が広がる、とても美味しい黒ビールであった。



旅は終わるが毎日は続いていく


 


にぎやかだねえ。いつもの小町通りが少し違って見えるような気がするよ


豊かな自然と歴史の深さにたっぷり触れて街に戻った大仏は、天園で出会った小檜山さんや「横浜市内最高地点」について教えてくれた男性、山道ですれ違うときに「こんにちは」と挨拶を交わした人たち、そして「腸詰屋」の優しい人たちのことを思った。

そう、人里を離れたようで、実はいくつもの人の優しさに触れていたのだった。



ハイキングを終えて



午前11時ごろに出発した大仏の旅は、何度かの休憩と小町通りの散歩をはさんで鎌倉駅前で午後6時ごろにお開きとなった。
 


横浜から鎌倉まで歩くなんていう道楽に付き合ってくれて今日はありがとう
 

ここまできたら私はもうこのまま歩いて帰るよ。君も気をつけて帰るんだよ


「ああ、本当に楽しかった。鎌倉に来たら連絡してね」そう言うと大仏は、疲れも見せずてくてくと歩いて雑踏のなかに消えていった。

山道はGoogleマップにルートが出ないため正確な距離は計算できなかったが、15~17キロほどの道のりといったところだろうか。

大仏はやけに健脚であれこれ楽しみながら鼻歌まじりにこのルートを歩ききったが、途中いくつも街に降りていく道があるので、横浜の自然公園を散策するのもよし、金沢文庫から天園を目指すのもよし、瑞泉寺や覚園寺をスタートやゴールにするのもよし、楽しみ方は自由自在である。
 


大丸山から天園、大平山、十王岩を経て建長寺に至るルートはこんな感じで
 

大仏の気ままな旅の全行程はこんな感じである。点線はバス移動部分 *クリックして拡大

 
ちなみに大仏が通らなかった覚園寺や瑞泉寺方面には途中に出てきた「朱垂木やぐら」のほかにも「百八やぐら」「平子やぐら」など多くのやぐらや磨崖仏といった見所がまだまだあるようだ。ただしハイキングコースをはずれた人気のない細道は、特に雨上がりにはマムシに遭遇することもあるのでご注意を。
 
それにしてもこうして地図上にルートを示してみると、大船駅から南に5キロほど歩けば1時間ちょっとで着いてしまうことがわかってしまうが、大事なことはそういうことではないのだった。
 


アウトドアに馴れた身なれど今日の旅わくわくしたなあ永遠に忘れじ 大仏



―終わり―
  
参考文献
『大日本地誌大系 第19巻 新編鎌倉志・鎌倉攬勝考』蘆田伊人編/雄山閣/1929
『民間信仰の話』長崎法劔編/法蔵館/1926
『諸仏讃歎高僧鑽仰 仏教各宗和讃集』井上松翠編/法文館/1912
『血盆経』此村庄助著/此村欽英堂/1915
『授戒説教』泰禅著/仏教館/1909
 

 

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  • 港南台駅から本郷車庫まで徒歩で行き、同じコースでチャレンジしました。途中の天園休憩所で看板猫に迎えれ、お刺身たけのこをつまみにビールは最高でしたが、のんびり過ぎて、建長寺の拝観時間16時半には間に合わず残念。でも、また、行きます。

  • 十王岩も主垂木やぐらも、昔、人々が鎌倉の山の奥深くに入ってノミを振るったのかと思うととても興奮しました。朱色がきれいに残っていますね。

  • 建長寺のルートで下山すると、お金が必要なはずです。大切な事なので追記されたほうがよろしいのではないでしょうか。

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